ツァイ・ミンリャン&リー・カンション 「郊遊 ピクニック」までの深い信頼関係
2014年9月5日 18:10
![ツァイ・ミンリャン監督とリー・カンション](https://eiga.k-img.com/images/buzz/45829/1_large.jpg)
[映画.com ニュース] 第70回ベネチア国際映画祭審査員特別大賞を受賞したツァイ・ミンリャン監督の「郊遊 ピクニック」が、9月6日に公開される。長編第10作となる本作をもって引退すると公言しているツァイ監督と、これまでのツァイ監督作品でシャオカン役を演じ続けてきたリー・カンションが来日。最新作とともに、およそ20年にわたるふたりの歩みを振り返った。
台北郊外で水道も電気もない空き家で暮らす父子。父は交通量の激しい道路でマンション販売を広告する“人間立て看板”でわずかな日銭を稼ぐ。残された子どもたちはスーパーマーケットや河原を遊び場にし、貧しい生活を“ピクニック”のように楽しんでいる。そして夜の廃墟には、夢とも現ともつかない母親らしき女が現れる。都会に潜む孤独を、独特の長回しと静ひつな映像で描き出す。
リーがシングルファーザーのシャオカンを演じ、中華圏で最も権威のある映画賞の金馬奨主演男優賞を獲得した。多くの言葉を発することなく、その佇まいから経済発展する台湾社会の裏側で生きる人間の悲しみを表現する。リーが青年シャオカンを演じた長編第1作「青春神話」(1992)から、二人三脚で歩んできたといっても過言ではないが、ツァイ監督にとって、リーは初めて会ったときから自分の世界観を具現化できる俳優だと確信していたのだろうか。
「テレビドラマの主人公の高校生役を探していた時に、たまたまゲームセンターの入り口でバイクにまたがっている彼を遠くから見たんです。彼のすごく静かな佇まいにひきつけられて、その役は彼しかないと思いました」とふたりの最初の出会いを明かす。
そして、「撮影3日目で後悔しました(笑)。彼のゆっくりした歩き方や話し方が、まるでロボットのようでNGばかり出しました。しかし、彼は『いつも僕はこうなんです』と言うのです。それを聞いて私は、それが彼の個性であって、そんな役者がいてもいいのではないかと思い始めたのです。私自身は学校で演技をきちんと勉強しましたが、役者は彼のような個性が大事なのだと、その一言で考えさせられたのです。そして、今作に至っては、彼は役者として成長し、自信に満ちた演技を見せるになりました。ただの役者ではなく、芸術家と呼べるようになったのです。こういうプロセスを共に歩んできました。彼は年月を経て高い境地に到達することができたのです」と最大限の賛辞を贈る。
![画像2](https://eiga.k-img.com/images/buzz/45829/2_large.jpg?1409883527)
監督との出会いによってリーは役者人生の扉が開かれ、近年では自身の監督作も発表している。「ツァイ監督と20数年歩いてきて、監督の自由な創作に心打たれてきました。自分は役者として個性というものを大事にしてくれる監督と出会えてとても良かったと思います。監督は芸術を強く求め、実現しようとしてきた。そういう監督と歩めたことは幸せです」と感謝の言葉を述べる。
リーの言葉を受けてツァイ監督は「ふたりとも野心というものがなかったからね(笑)。私たちはいわば映画界で漂流している人物と同じなんです。いつも多くの観客には恵まれませんが、そういうなかで映画を撮り続けてきました。私たちの映画を支持してくれる人は少ないけれど、その少ない人たちの質はものすごく高いのです。インテリ青年たちが私たちをずっと激励し、20年間支えてきてくれました」とふたりの世界観を共有してきたファンへの思いを口にする。
人間の本質をシリアスに描くと同時に、喜劇的な側面も表現するツァイ監督の作品。今作も同様のテーマが貫かれている。「人間立て看板を見て、自由とはなにかと考えたのです。ホームレスもそうです。彼らのほうが自由があると考えたりもします。登場人物を考えるときに、社会の隅にいる人を捉え、そこから見てどうなのかということを考えます。この主人公のように何も役に立たない人間だと思うようになったとき、人間はやっと自分は何者なのか、自分の本質は何なのかを考えるのです。今作でリー・カンションは、自分の人生をかけて、それを考えて演じたのです」と締めくくった。
「郊遊 ピクニック」は9月6日シアター・イメージフォーラムほか全国で公開。
(C)2013 Homegreen Films & JBA Production
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