蜘蛛のように優美な手の動きを再現「イヴ・サンローラン」主演俳優
2014年9月5日 14:50
[映画.com ニュース] クリスチャン・ディオールで早くから才能を開花させ、独立後も革新的なコレクションで名声を轟かせた、天才ファッションデザイナーの故イヴ・サンローラン。その輝かしいキャリアと、知られざる苦悩の20年間を描いた新作「イヴ・サンローラン」が公開される。この映画に主演した、フランスの若手俳優ピエール・ニネが来日。風貌だけでなく、早熟で知的なところもサンローランそのままといった印象のニネが、インタビューに応じた。(取材・文・写真/本間綾香)
11歳のときに初舞台を踏み、パリの国立劇団コメディ・フランセーズで研鑽を積んできたニネは、現在25歳。俳優としてだけでなく、監督、脚本家としても活躍している。ニネは、ジャリル・レスペール監督からの思いがけない指名を受け、サンローラン役を掴んだ。「舞台の稽古をしているときに、監督から“ビールでも飲みにいかない?”と電話があったのです。そうして、幸運にも監督から直接オファーをいただきました。脚本を読み、イヴ・サンローランというブランド帝国を築く過程とともに、人間としての内面の脆さも描いている点に魅力を感じました」
サンローランの公私にわたるパートナー、ピエール・ベルジュが設立したイヴ・サンローラン財団の初の公認作品。ニネは、サンローランに関する数々のアーカイブ資料に目を通し、本人と親交のあった人々に話を聞き、役作りのために密度の濃い5カ月間を過ごした。「ベルジュは、サンローランがあまり人前では見せなかったユーモアについて、取材に来たジャーナリストの物真似をしたり、変装したりして周囲を笑わせていたという意外な面を教えてくれました。またモデルのベティ・カトルーは、1970年代にサンローランと一緒にアルコールやドラッグに溺れた過去を包み隠さず話してくれました」
机に向かうサンローランが描くデザイン画はなんとも美しく、立ち姿や身振りも酩酊状態のときでさえエレガントに見える。「デッサンのコーチ、姿勢や身体を作るフィジカルコーチに指導を受け、またファッション専門のコーチから業界用語、クチュールメゾンの役割について学びました。サンローランはシルエットや動き、特に手の使い方が独特な人でした。彼を知る人の証言のなかにも、手のエピソードがたくさん出てきたのです。まるで蜘蛛のように、優美でありながら力強い動きをしていたという話がとても興味深く、意識しながら演じました」
劇中には、財団から貸し出された貴重な衣装5000点が登場し、クライマックスは実際にサンローランがショーを開催したホテルで、300人のエキストラを動員した豪華絢爛なコレクションシーンが描かれる。
本作を通じてファッションとはアートであり、クラフトマンシップだと理解を深めたと語るニネ。プライベートでは、ディオール・オムでドレスアップすることもあるが、デニムとスニーカーというカジュアルなスタイルが好みのようだ。自宅にはバスケットシューズのコレクションもあるとのこと。女性の気になるファッションについて聞くと、「最近のディオール・ファムは好きです。クラシックでありながら、現代的な美しさも感じます。あと、レバノン出身のデザイナー、ズハイル・ムラドもすごく実力のあるクリエイターですね。今、パリの女性たちの間で流行しています」と、大役を務め上げたさすがの審美眼を披露した。
「イヴ・サンローラン」は9月6日から日本公開。
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