斎藤工が監督作「半分ノ世界」で見いだした監督と俳優の“信頼関係”
2014年6月5日 10:30

[映画.com ニュース] 俳優の斎藤工がメガホンをとり、大橋トリオの楽曲「HONEY」をモチーフにした短編映画「半分ノ世界」を完成させた。シネフィルとして知られ、ファンだけでなく同業者からの信頼も厚い斎藤が、「完成作品を見たとき、手前みそではなく普通に良い作品だなと思いました」という自信作について語った。
アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2014」とソフトバンクのスマートフォン向けアプリ「UULA」が共同で、浜崎あゆみや「Every Little Thing」ら人気アーティストの楽曲をモチーフに短編映画を製作するプロジェクトに、斎藤のほか宮崎光代、門馬直人、落合賢、渡邊世紀、萩原健太郎の5人の若手クリエーターたちが参加した。
オファーを受けたとき、監督志望でないことからかなり戸惑ったという斎藤だが「今回、このような監督の皆さまと肩を並べるのは今年で最後ではないかと思いました。 ただ、作品が完成した今は、この取り組みに参加したことは必然だったと思っています」と、決断の正しさを確信しているようだ。
柿本ケンサクが手がけたミュージックビデオはウェディングをテーマにしていたが、斎藤は全日制高校に通う女子高生と定時制高校に通う青年が同じ机の上の落書きを通して心を通わせるさまを描いた。違う解釈を求めて歌詞の世界観をひも解き、どのようにドラマを展開させるか考えた結果、斎藤は「全く別の切り口でドラマを発信しないと失礼な作品になってしまう」と思ったという。そこで脚本に重きを置くことを決め、信頼を寄せる金沢知樹に執筆を依頼した。
「そんな風に制作をしていると、なんだか映画監督はサッカーの監督と似ていると思いましたね。ピッチに立って勝負をするのは役者で、監督は委ねるという仕事だと感じました。準備段階ですべてに恵まれたので、非常にリラックスして臨めました」
そして撮影現場での演出については、「それぞれが“役”として現場にたたずんでくださっていたおかげか、ほとんどした記憶がないです。指示したのは動線くらいです(笑)」と謙そんしてみせた斎藤。しかし、女子高生の弥生を演じた田辺桃子は「目線や表情でどう気持ちを伝えられるかを悩んでいた時に、斎藤監督から『この時は、こういう感じで……』と実際に演技をやってみせていただいたことがとても心に残っています」と感謝の言葉を添える。
一方の斎藤も「セリフがないなか、音楽をかけると表情が変わるんですよね。そんな14歳の彼女の表情や存在が、この作品を引っ張っていってくれています」と田辺をねぎらう。そして、監督という立場を経験し現場における信頼関係の重要性を再認識した様子で、「もっと(俳優としての)自分に託されたモノに責任を持とうと思いました」と語り、今回の挑戦で役者としても成長したことをうかがわせた。
同作は6月5日からUULAでの配信がスタート。斎藤は視聴者に向け、「ぜひボリュームを大きくして見てもらいたいです。 というのも、劇場仕様の音作りにこだわりました。 自分が映画を見る時、ビニールをつかむ音とか生活音にこそ映画である意味をもっていると思うので、“音”を意識的に体感してもらいたいと思います」とメッセージを寄せた。
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