サバンナで殺人ゾウの恐怖に息を潜めながら通学 ケニアの少年が学びへの意欲語る
2014年4月11日 15:05
[映画.com ニュース]「学びたい」という思いだけで、数10キロという道のりを毎日何時間もかけて学校に通う子どもたちが世界には存在する。辺境に暮らす4カ国の子どもたちの姿を追ったドキュメンタリー「世界の果ての通学路」が、4月12日に公開される。本国フランスでは大ヒットを記録し、セザール賞を受賞。パスカル・プリッソン監督とケニアのジャクソン&サロメ兄妹が来日し、ケニアの辺境の通学路事情を語った。
プリッソン監督は、12年もの間ケニアのマサイ族の村に通いつめ、部族の伝説をカメラに収めた「マサイ」を2003年に発表。その後、ほかの動物映画のためにケニアをロケハン中、2時間走り続けて登校する若者に出会ったことが本作製作のきっかけとなった。ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インドの4カ国の子どもたちに密着、ジャクソンはケニアで面接した300人の子どもの中のひとりだった。
「ジャクソンのまるで私を求めていたような視線を感じ、すぐにこの子だ! と思ったんです。そして彼は『僕は一番貧しい家族の子どもで、一番遠くに住んでいて、でも一番優秀な生徒で、あなたのような人が私を今の境遇から連れ出してくれることを待ち望んでいました』と言ったのです。私たちの間にすぐ絆が生まれ、家族に会い、彼を撮ることが決まったのです」
ケニアでは、2004年から全国で義務教育が始まった。都会と辺境に住んでいる子どもの教育環境はかなり異なり、都市部の子どもは徒歩、またはバスを使って登校するが、ジャクソンが住むのは電気や水道も普及していない貧しい辺境だ。ジャクソンの自宅から学校までの距離は15キロ、片道2時間のサバンナを越えていく。野生動物や武装誘拐集団との遭遇という危険もあり、学校に行きたいというモチベーションが高くなければ毎日通学できる距離ではない。
ジャクソンは「学校に行かないで家にいたら自分が無責任な人間になってしまいます。仕事もないし、大きくなっても可能性が閉ざされてしまって、両親も大変です。ある程度学校で高いところを目指すためには、早いスタートを切ったほうがよいと思いましたし、学校に行けば、将来を切り開くための様々なスキルや学びが自分のものになりますから」と真剣な表情で語り、学校で“学ぶ”ことに対しての意識の高さが感じられる。
長い道のりの中でとりわけ危険なのが、本作でも映しだされたゾウとの遭遇だ。ジャクソンいわく「あらゆる方法で人間に危害を及ぼす動物」なのだという。「人間を目で追い、感じるだけではなく日中問わず人間を襲う準備をしているのです。茂みの中にいるのを見つけると、僕たちは走るのですが、ゾウは時速50キロくらいのものすごい速さで走るので、すぐに追いつかれてしまいます。頑丈な牙を武器にし、大きな穴にかくれても踏みつけようと容赦ありません。まったく友好的でない動物たちで、ゾウと対峙(たいじ)してしまった場合は、人間の命が助かる可能性は低く、完全に殺されてしまいます」と私たちが動物園で目にする姿とはかけ離れた、恐ろしい野生の習性を説明する。
「まったく知らない国の人がやってきて僕を選んでくれたこと対してとても誇りを持っています。こういう映画を撮ることは、深い洞察があったから実現したのだと思いますし、感謝の気持ちを持っています」と流ちょうな英語で、真剣に勉学への思いを語るジャクソンの姿は、大人も顔負けの頼もしさを感じさせる。将来の夢を尋ねると「僕は学校で一番の政治家だと言われているみたいだけれど、僕は政治家が嫌いなんです。僕の夢はパイロットで、まだまだこれから追い求めなければならない夢です。僕が唯一信じているのは、神様が僕の夢をかなえて、僕の希望を現実にしてくれること。夢を持っていれば、かなえられる可能性はあるということを強く信じています」と目を輝かせた。
「世界の果ての通学路」はシネスイッチ銀座ほか4月12日全国公開。
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