悪魔祓いの悲劇描いた「汚れなき祈り」ルーマニア初のカンヌ女優2人が来日!
2013年3月15日 16:00

[映画.com ニュース]第65回カンヌ映画祭で、女優賞と脚本賞を受賞したルーマニアの俊英クリスティアン・ムンジウ監督の「汚れなき祈り」が3月16日に公開する。05年に同国の修道院で起こった悪魔祓い事件の悲劇を描いた作品だ。ルーマニア初のカンヌ受賞女優となったクリスティナ・フルトゥルとコスミナ・ストラタンが来日し、授賞式当日と作品について語った。
大学でフルトゥルは言語学を、ストラタンはジャーナリズムを学び、その後演劇の道に進んだ才媛だ。ともに本作が映画初出演ながら、その演技力が高く評価された。カンヌ授賞式をこう振り返る。「とりあえず、何か話さないと思ったら、案外すらすらとスピーチができました。まるで、夢を見ているようでした」(フルトゥル)、「まず最初はショックで、クレイジーな瞬間でしたね。幸運でした」(ストラタン)。
ムンジウ監督は、徹底したリアリズムで描く社会派作品を手がけることで知られる。チャウシェスク政権時代に、主人公の友人が受けた違法な中絶手術で発生した問題を描いた「4ヶ月、3週と2日」(2007)では、ルーマニア初のパルムドールを受賞。この作品に続き、今作も2人の女性が物語の中心となる。「彼の素晴らしい点は、人を批判して何かを仕向けることが有効な方法ではないとよく分かっているのです。自分の考えているものと違うものが私たちにあると、直接否定的な言い方はせず、うまくそれと察しがつくように、私たちに気づかせてくれるのです」とフルトゥルは、女優陣の才能を引きだす監督の人となりを語る。
ドイツに出稼ぎに行っていた身寄りのないアリーナは、同じ孤児院で育ったヴォイキツァに会うため故郷のルーマニアに戻る。しかし、修道院で暮らし、信仰に目覚めたヴォイキツァとは、以前のように心が通わなくなり、アリーナは精神のバランスを崩していく。そのアリーナの姿が修道院では悪魔の仕業とみなされ、悪魔祓いの儀式が執り行われることになる……。

アリーナをフルトゥル、ヴォイキツァをストラタンが演じた。ルーマニアの修道院、悪魔祓いなど、日本からは遠い文化の中で起こった出来事を描いているが、孤立したコミュニティの中では世界のどこでも起こりうる悲劇であると、考えさせられる作品だ。
ふたりとも映画の中で描かれるルーマニア正教を信仰するクリスチャンだが、本作主演後に自身と宗教のかかわり方が変化したという。ストラタンは「このような映画に出た後、まったく以前と同じでいるというのは不可能だと思います。以前よりルーマニア正教に寄りかからず、教理への姿勢が変わったと思います」と明かし、フルトゥルは「いまだに自分自身に対して、宗教とは何かと疑問を投げかけています。宗教は形式にとらわれて、意味を失ってしまっていることが一番大きな問題だと思います、世の中には無神論者の方だって、人間的に優れていて愛情深い人はたくさんいますから」と持論を述べる。
初の日本訪問でのつかの間のオフも楽しんだようで「根津美術館に行って庭園で竹を見ました。とても美しかったわ!」と笑顔で話した。2月に行われたベルリン国際映画祭でもルーマニア作品が金熊賞を受賞し、ますます世界の注目が高まるルーマニア映画界、今後の2人の活躍に期待したい。
「汚れなき祈り」は3月16日公開。
(C)2012 Mobra Films - Why Not Productions - Les Films du Fleuve - France 3 Cinema - Mandragora Movies
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