F・ジャルダン&T・シスレー、仏ノワールで描きたかった親子のきずな
2012年9月15日 21:16

[映画.com ニュース] フレンチノワール「スリープレス・ナイト」は、第36回トロント国際映画祭で上映され、米ワーナー・ブラザースがリメイク権を獲得するなど、各国で注目を集めている。メガホンをとったフレデリック・ジャルダン監督は、第4作となる今作で“きずな”を主軸に、マフィアの抗争、警察の腐敗などさまざまな要素を描いた。孤独な戦いを強いられる主人公の刑事バンサンを演じたのは、「ラルゴ・ウィンチ 裏切りと陰謀」で知られる、仏俳優のトメル・シスレーだ。激しいアクションシーンにも挑戦し、緊迫した表情をのぞかせている。フランス映画祭で来日したジャルダン監督とシスレーが、初タッグを組んだ今作について語った。
念願のフィルムノワールに挑んだジャルダン監督は、「ノワール作品はすべてを語りながら、娯楽的要素を一緒に盛り込むことができる」とその魅力を語る。「父と息子の関係性を描きたい」という思いから出発した今作をつくり上げる上でも、「親子の関係を描くには、コメディや心理ドラマなどいろいろなタイプの物語が可能だと思います。でも私は、フィルムノワールが要求するテンポの速さや、緊張感があるなかで描きたかった」と強いこだわりを明かす。

冒頭から、主人公バンサンと息子トマの間には深い溝が出来上がっていた。ふたりの間にできてしまった隔たりが埋まっていくさまを浮き彫りにするため、ジャルダン監督は幾人もの思惑が交錯する「カオティックな世界」を構築する。舞台として人がひしめき合う大型のナイトクラブを用意することで、バンサンが置かれた切迫した状況を、観客に追体験させることに成功した。「バンサンと捕えられた息子を地獄に落とす場所がこのナイトクラブであって、地獄からどうやって生き残り、はい上がる過程でふたりの関係性が見えてくるんです。バンサン親子がマフィアやディーラー、逃亡を妨害する群衆といった障害物をいかに乗り越えていくかを見せることが、この映画では重要だったんです。これによって、ふたりの関係性を凝縮して見せることができ、この作品の娯楽性や乗り越えたときの喜びを、観客と分かち合うことができると思ったのです」
ジャルダン監督が、今作で描きたかったことは“きずな”だ。物語とともに崩れゆくマフィアや警察という組織の信頼関係と、次第に深まってゆく父と息子のきずなを対比させた。最後に、今作が「ドラマツルギー的側面を持つ」と切り出したジャルダン監督は、「バンサンは映画の冒頭からケガをしている。出血がひどくなり、疲労感や焦燥感が増し弱っていくバンサンの姿を見せる一方、死に怯える子どもを映し出すことで、父親が息子と自分の死を意識することによって、もともと希薄だったふたりの関係が次第に深まっていくところを見せていくことが目的でした。どんなに希薄に見えたとしても、血のつながりはものすごく強いきずな、愛情であり、自分たちが意識しなくても強固であるということを示したかったのです」と力強く語った。
「スリープレス・ナイト」は、公開中。
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