自分たちの子育ての体験を演じたフランス人俳優に喝采!
2012年6月24日 11:00
[映画.com ニュース] 20回目を迎えたフランス映画祭で6月23日、アカデミー賞外国語映画部門のフランス代表に選ばれた「わたしたちの宣戦布告」が上映され、監督・主演を務めたバレリー・ドンゼッリともう一人の主演で共同脚本のジェレミー・エルカイムが観客の質問に答えた。
ドンゼッリとエルカイムはかつて実生活でパートナー関係にあり、本作は2人の間に生まれた疾患を抱えた息子の子育てを描いた作品。出会ってすぐに恋に落ちたロメオ(エルカイム)とジュリエット(ドンゼッリ)に生まれた息子・アダムは脳腫瘍を患っていることが発覚するが、2人は互いを励まし合いながら息子の病気と闘っていく。
自分たちの体験を映画の中でもう一度、役として演じることに関しては、脚本を執筆していた頃から考えていたという。ドンゼッリは「脚本を書き、監督を務め、さらには演技もするということが可能かと最初は悩みましたが、彼と一緒にやってみたいという欲求が勝ちました。私たちは互いをよく知っていて、特別な親密さを持っています。それが映画にプラスになると思いました」と説明する。エルカイムも「まるでドアを少しだけ開けて人生をのぞき見するよう」とふり返り「ドキュメンタリーのような側面を持っていて、それがプラスアルファとして生きていると思います」とうなずいた。
役名をロメオとジュリエットとしている点も特徴的だが、ドンゼッリは「冗談で思いついたんですが、名前を決めた瞬間に役と自分たちの間に良い距離が出来て、演じやすくなりました」と明かす。
さらに8歳に成長した息子のアダム役には実際の彼らの息子を起用している。エルカイムは「ハンサムでしょ(笑)」とおどけつつ「脚本を執筆している段階で、息子にこの映画について説明したんだ。決して病気や子どもが中心の映画ではないってね。そうしたら彼は僕らをじっと見て『誰がその子を演じるの?』って聞いてきたんです。『まだ決めてないよ』って答えたら『じゃあ僕がやる』って言いました。結果的にすごくうまくいったと思います」と満足そうな笑みを浮かべてた。
また闘病の日々を描きつつも“泣ける映画”ではなくユーモアを交えて描いていることについて、ドンゼッリは「状況は深刻ですが、2人がそれに埋没、従属することなく、生の欲求を尊重している姿を見せたかった。メロドラマにするつもりはなかった」と強調。エルカイムも「不幸が起きることで、例えば“病気を抱えた子どもの親”といった風に人はアイデンティティを失いがちです。でも私たちはこれまでと変わらずユーモアや欲望を持って生きています。周囲のお仕着せの価値観との闘いでもあるんです」と語りかけ、会場は温かい拍手に包まれた。
フランス映画祭は6月24日まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇にて開催中。「私たちの宣戦布告」は今秋、Bunkamura ル・シネマほか全国にて公開。
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