芦田愛菜ちゃん、新藤監督に最後の別れ 思い出の品々と共に出棺
2012年6月3日 16:00
[映画.com ニュース] 5月29日に死去した新藤兼人監督の告別式が6月3日、東京・芝公園の増上寺・光摂殿で執り行われた。新藤監督作4本に出演した柄本明、長年にわたり助監督を務めた神山征二郎監督、映画評論家の佐藤忠男が弔辞を読んだほか、大杉漣、伊藤歩、六平直政ら新藤作品に出演した俳優陣など多くの映画関係者が参列し、出棺を見送った。2月の第54回ブルーリボン賞の授賞式で顔を合わせ、「一緒に映画を撮ろうね」と声をかけられたという子役の芦田愛菜ちゃんも姿を見せ、巨匠に祈りを捧げた。
柄本は叫ぶような大声で「お疲れさまです。そしていろいろありがとうございました」と語りかける。4本の出演作の中でも、やはり主演した「石内尋常高等小学校 花は散れども」(2008)が強く印象に残っているようで、豊川悦司や大杉ら主要キャストが初めてそろったときに新藤監督が「今日からよろしくお願いします」と深々と頭を下げ、挨拶したという思い出に触れ「『僕たちはいま、映画の中にいるんだな』と感じた忘れられない奇跡の瞬間だった」と振り返った。また遺作となった「一枚のハガキ」の衣装合わせで、新藤監督がオナラを連発したというエピソードを披露。「何とめでたいことか! 素晴らしいものか! 人間、生きていると仕事もするけ、どオナラもするんですね」と楽しそうに在りし日を偲んだ。
神山監督は時折、声を詰まらせながら恩師への感謝と別れの言葉を口にし、佐藤は「個人から世界の命運まで、バランスよく総合的に問題を追及した。他のどこにもない表現だった」とその功績に改めて賛辞をおくった。「一枚のハガキ」を含め、晩年の作品に多く出演し寵愛を受けた大竹しのぶは、ロンドンでの舞台公演のため参列することはかなわなかったが「撮影中の監督の鋭い目を忘れません。『よーい、スタート』の声を忘れません。『はい、いいね』の声を忘れません。お話してくださったことを忘れません。監督の映画を忘れません。(中略)監督の思いを受け継ぎ、私たちはこれからも真面目にコツコツと一生懸命お仕事してゆきます」と弔電を寄せた。
式後に報道陣の取材に応じた大杉は、撮影現場での新藤監督について「すさまじい姿だった」と述懐。「ルールで撮るんじゃなくて、気持ちで映画を作る。同時にそれが人を動かすんだと感じた」としみじみと語った。「ふくろう」に出演した伊藤は、「日活の撮影所で当時93歳だった監督とカレーライスを食べました」と思い出を明かす。オーディションで新藤監督から「脱げますか?」と聞かれ、「はい」と答えた言葉通り大胆なヌードを披露した。現場での演出は「優しく丁寧に、一つ一つを積み上げるように演出してくださいました」と語った。
この日は約400人が参列。山田洋次監督、篠田正浩監督、俳優で舞踏家の麿赤兒、田中要次、根岸季衣ら映画関係者のほか一般のファンも数多く訪れ、監督に花を捧げた。棺は新藤組を支えた制作部と演出部のスタッフ、俳優の原田大二郎、林隆三らに抱えられ霊柩車に運び込まれ、多くの人々に見守られて午後1時過ぎに出棺。なお棺には、生前に監督が愛用していた原稿用紙、妻で女優の故乙羽信子さんが削り、監督が大切に持っていたというB2のエンピツ、100歳の誕生日の際に送られた寄せ書きなどが納められたという。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。