女流講談師・田辺鶴瑛「介護や死別は必ずしも負ではない」
2012年2月10日 22:20
[映画.com ニュース] 台湾全土でロングランヒットを記録した「父の初七日」(ワン・ユーリン、エッセイ・リウ監督)の公開を記念し2月10日、女流講談師の田辺鶴瑛(かくえい)が都内で自らの介護体験を交えた講演を行った。
台湾中部の田舎町を舞台に、突然の父の訃報をきっかけに集まった家族が、古いしきたりに沿った伝統的な葬儀までの騒々しい7日間を通じ、父を失った悲しみを受け入れていく姿をユーモラスに描くヒューマンドラマ。台湾のアカデミー賞にあたる金馬賞で7部門にノミネートされるなど、高い評価を受けた。
田辺は、「なんで自分だけこんなに苦労するのかと往生際が悪かったせいか、実母、義母、義父と三度も介護がやってきた。ただ、義父は認知症だったので何をしても覚えていないし、手抜き介護でも『ありがとう。天使だね』と言ってくれた。介護や死別などは必ずしも負なことばかりではなく、私自身も救われた」と述懐。また、「じいちゃんが死んだとき、介護を頑張ってきたから神様がご褒美をくれるだろうと宝くじをじいちゃんの枕元に置いておいたら、すっかり忘れて一緒に燃やしちゃった! お葬式ってこういう人間のバカらしさや愚かさが浮き彫りになる」と明かし、笑いを誘った。
まもなく東日本大震災から丸1年を迎えるが、「周りは復興、復興と言いますが、突然大切な家族や財産を奪われた当事者はそんな気になれない。私たちは日々の忙しさにかまけ、すっかり忘れそうになるけど忘れてはいけません」と語りかけた。
「父の初七日」は3月3日より公開。