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犯罪心理学の権威が語るFBI初代長官J・エドガーの実像とは?

2012年2月1日 18:00

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臨床心理士の視点から「J・エドガー」を読み解いた越智啓太氏(右)
臨床心理士の視点から「J・エドガー」を読み解いた越智啓太氏(右)

[映画.com ニュース] 「犯罪捜査の心理学」などの著作のほか、ドラマ「CONTROL 犯罪心理捜査」「BOSS」の監修でも知られる法政大学教授の越智啓太氏が、FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーの実像に迫るクリント・イーストウッド監督作「J・エドガー」について語った。

警察庁を中心とする日本の組織と違い、州警察や市警察など独立した複数組織が存在するアメリカでは、FBIはテロや銀行強盗、麻薬取引など、合衆国全体の凶悪事件を担当する連邦警察。それだけに「連邦警察官は一般に特別捜査官(スペシャル・エージェント)と呼ばれ、彼らはその肩書きに誇りを持っています。プライドが高く高学歴なので、アメリカ国民はある種の尊敬を持って捜査官を見ていると言えますね。一方で、その強大な力にねたみや恐れを持っているのも事実です」という。

J・エドガー」では、レオナルド・ディカプリオ演じるフーバーが犯罪の科学捜査化を促進し、FBIを巨大な権力組織へと変貌させていく姿が描かれる。「FBIの科学研究所もフーバーが作りました。近年大きく進歩したのはDNA鑑定。現場に残された血液や体液、皮膚などを用いて容疑者と犯人の同一性を判断していく方法です」と、越智氏はフーバーの功績を語る。しかしその反面、「彼は“盗聴と脅迫”でも有名です。犯罪者だけでなく議員や著名人を盗聴し、その弱みを使って影から政府を操っていたと言われています」という暗部についても明かす。

イーストウッドとディカプリオは、影の実力者としての顔と、強い葛藤を抱えるひとりの男としての顔、2つの側面からフーバーという人物を描き出していく。その力量は、「単純な善悪二元論屈せず、権力や暴力を描いてきたイーストウッドならではの作品」(20代男性)、「ディカプリオの老いた役も素晴らしいと思った。エドガーの強さと弱さが、人間離れでも人間的でもあって面白かった」(30代女性)など、試写会ユーザーの声からも読み取れる。

「フーバーは大統領も恐れる強大な権力を持った人物ですが、その前に我々と同じように、喜び、悩み、おごることもある普通の人間にすぎないんですね。権力を握ったひとりの人間が、大きなギャップの狭間で苦悩する姿がこの作品ではありのままに描き出される。伝説的な人物を描いた伝記映画ではなく、人間それ自身を描いた作品であると思います」

J・エドガー」は、現在公開中。

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