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S・エスティバル監督、“第3者”の視点でパレスチナ問題を見つめる

2011年10月29日 18:31

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「ガザを飛ぶブタ」公式会見に出席した ミリアム・テカイア、シルバン・エスティバル監督
「ガザを飛ぶブタ」公式会見に出席した ミリアム・テカイア、シルバン・エスティバル監督

[映画.com ニュース] 第24回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された「ガザを飛ぶブタ」」が10月29日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで公式上映され、シルバン・エスティバル監督、女優のミリアム・テカイアが公式会見に出席した。

エスティバル監督の長編デビュー作で、イスラム教でタブーとされるブタをめぐるパレスチナ人の猟師やユダヤ人の交流を描く。ジャーナリスト、カメラマンなど幅広く活躍するエスティバル監督ならでは視点で、“紛争”という重いテーマをコメディ仕立てで表現。エンディングをファンタジックにすることで、「このような平和をつくることもできる、問題はあってもよい最後を迎えることができるということを表現したかった」。

これまでにもエスティバル監督は、イスラエル・パレスチナをめぐる“パレスチナ問題”に向き合ってきた。「“敵”を見る視点を変える試み」として、「ユダヤ人とパレスチナ人の家庭にビデオを設置して、1年間生活する様子を記録。その後テープを交換し合う」というプロジェクトを過去に行っている。

長年にわたって確執を生んでいる“パレスチナ問題”を描いた狙いは、「映像を通じて両者をひとつにすることなんだ」。そして「新鮮でおかしな視点を提供したかった。私が見た真実、つまりどちらもこの紛争の犠牲者であるという視点を盛り込みたかった。政治的視点よりも、毎日生活している一般市民の視点で描こうと思ったんだ」と明かした。

一方のテカイアは、今作を「怒りがさく裂しているコミック」と独自の表現で説明。チュニジア出身という立場で“ユダヤ人”を演じ、「世界市民としてこのような役を演じることができて興奮しました。自分の中で葛藤(かっとう)はあったけれど、女優として引き受けたからには肉体化しないといけないと思った」と述懐した。

しかしウルグアイ出身のエスティバル監督が紛争を扱う上で、当事者でないことが障害になったそうで、製作費の工面に難航したという。「イスラエルの問題をヨーロッパで議論するのは難しい。『脚本は素晴らしいけれど、なぜパレスチナ人でもイスラエル人でもない君が書くんだ?』と言われた」と苦渋の面持ち。それでも、「芸術が国籍の面で拒絶されるのはおかしいし、芸術的表現が遮られてしまうのはおかしい。第3者だからこそ描けるものがあるはず」と真しな眼差(まなざ)しで語った。

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