高畑勲、新作の完成は「まだまだ」
2011年9月2日 17:17

[映画.com ニュース] アニメーション映画監督の高畑勲が9月2日、東京・江東区の東京都現代美術館で「フレデリック・バック展」の開催記念トークショーに、女優の竹下景子、工芸家の稲本正とともに出席した。バック氏は人間と自然とのかかわりや環境問題などのメッセージを込めた物語を描き続けるカナダのアニメーション作家。高畑監督は同展の開催に「大震災や原発の問題を抱える今こそ、時宜にかなっている」。現在は、「竹取物語」を題材にした新作を製作中だが「完成はまだまだ……。あと2年くらい先になりそう」と明かした。
バック氏の展覧会としては世界最大規模となる同展。1920年代から現在までに描かれた原画、スケッチ、コンセプトアートなど約1000点を通して、バック氏の波乱万丈の人生をたどる。高畑監督は、約30年前に出合ったバック氏の作風を参考に「ホーホケキョ・となりの山田くん」を製作し、バック氏を師と仰ぐほどだ。
高畑監督は「これまで“自然との共生”といっても雰囲気に過ぎなかった。しかし、大震災でキレイ事は吹き飛んだ。それだけ自然は強かったということ。その自然の中で生きるしかない人間にとって、バックさんの作品は役に立つはず」と力説。メガホンをとった「平成狸合戦ぽんぽこ」について、「もともと日本人は自然との付き合い方が上手だったが、戦後、そういった資質を失ったせいで、今はまずいことになっている。タヌキは“狸”という文字からもわかるように、里の近くにいた身近な動物。彼らとの付き合いを通して、問題提起したかった」とバック氏との共通点を語った。
「フレデリック・バック展」は東京都現代美術館で10月2日まで開催(月曜休館、9月19日、26日は開館)。
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