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スコリモフスキ監督、V・ギャロ主演の最新作に「これまでで1番」と自信

2011年7月29日 14:09

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5月に来日したイエジー・スコリモフスキ監督
5月に来日したイエジー・スコリモフスキ監督

[映画.com ニュース] 第67回ベネチア映画祭2部門受賞で世界的な注目を集めた、ポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督の「エッセンシャル・キリング」が、7月30日に公開される。怪優ビンセント・ギャロが、凍てつく雪山を83分間せりふなしで逃げまわるという前代未聞の構成と作品のテーマを語った。

物語は、豊かなひげを蓄え中近東風の民族衣装を着た男を、米軍が追跡するシーンから始まる。彼をテロリストと見る観客も少なくないだろう。ギャロが演じる男の設定について、「確かに始まりは米軍のヘリコプターが出てきますが、それはあくまで映画を始めるための設定であって、彼がテロリストだということを設定することではないんです。なぜかというと、服装は真っ白、一般人の服装です。タリバンならば黒い格好をしているはずですから」といい、物語の展開を説明する。

「生き延びるために、彼は人を殺していかなければならないという展開のために、すべてをあいまいにしたかったのです。それが、セリフがないということとつながります。しゃべってしまうとアクセントで分かってしまう。男はアラブ人か、アメリカ人か。もしかしたらアメリカ人だけれども、イスラムに共感して自分の人生を変えた人間かもしれない。あいまいな脚本を書いて、そういう情報を見ている側にできる限り渡さない、見せない形で展開したかったのです」

人を殺すことの善悪ではなく、生きることへの執着がギャロの迫真の演技でダイナミックに描かれている。一面真っ白な雪に閉ざされた深い森と、洋服を血に染めひたすら逃げていく男、その対比を映し出す映像は圧巻だ。「人間というのは1人であろうが、大勢であろうが、追われる立場になると、だんだん動物のように野生化してしまうのです。人や動物を殺していかないと生きていけない、野生の動物のように人間が変わっていく姿が伝わっていく映画なのです」とその狙いを語る。

「雪山のシーンのほとんどは、ノルウェーで撮影されています。ビンセント(・ギャロ)は、マイナス35度という過酷な状況下で演じなければならなかったので、大変厳しかったと思います。ビンセントはテイクまでトレーラーにいられましたが、我々はずっと外で撮影をしていたので、ビンセントだけでなくスタッフ全員が運命共同体のように、この仕事をやり遂げようという決意のもと進んでいった映画です」

今作は第67回ベネチア映画祭で、審査員特別賞、最優秀男優賞を獲得した。また、わずかなシーンではあるが、ロマン・ポランスキー監督の妻であるエマニュエル・セニエも出演し、物語に深みを与えている。

映画製作のほか、画家、役者としても活動するスコリモフスキ監督は、「この映画のために、2年間画家としては何もできなかったので、一刻も早く画家として創作したい」と話す。そして、本作については「これまで自分の作った作品の中で1番だと思っています。映画として普遍性があり、自分が今まで作品をつくってきた体験が、おそらくすべてこの作品に集約されていると思っています」と力強く話した。

エッセンシャル・キリング」は7月30日より、渋谷シアター・イメージフォーラム他、全国順次公開。

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