前田健、初監督作を語る「情熱だけで最後まで撮れた」
2011年5月6日 12:03
[映画.com ニュース] ものまね芸人で俳優としても活躍する前田健が、2009年に書き下ろした処女小説を自らメガホンをとって映画化した「それでも花は咲いていく」が、5月7日に公開する。初の映画監督を務めた前田に話を聞いた。
小説では9人のセクシャルマイノリティの姿を短編で描き、そのうち3編をオムニバスとして映画化した。「他の作品で監督だけやれって言われたら、監督の手腕を問われる気がして恐縮しちゃうんですが、これは自分の作品なので作品の世界観に関しては誰よりもわかっていて、誰よりも大事にしている自信があったのでつくれました。その情熱だけで最後まで撮れたような気がします」と振り返る。
教え子との禁じられた恋で罪を背負った進学塾の元講師の男、醜い容姿にコンプレックスを抱き他人の部屋に侵入することに生きがいを感じる男、最愛の母親を突然亡くしぼう然と日々を送る男。問題を抱えた3人の男たちの内面を繊細に描き出す。「小説の内容を大事にしたかったので、あまり奇をてらった撮り方をせずに、アナログなアプローチで丁寧に撮っていきました。単に変態の人を紹介するエログロなものにならないように、これも自然な恋の形のひとつなんですっていうことを意識して、光や自然の木立、風を感じさせるようなものを、多めに取り入れた」と表現にも気を遣った。
キャスティングについては「仕事でご一緒したことがある人で、素敵な芝居をするなあ、いつか一緒に仕事をしたいなと思っていた人たちです」といい、直接オファーした。仁科貴、滝藤賢一、平山浩行は初の主演、南野陽子、小木茂光、ダンカン、麻生祐未らベテラン俳優陣が脇を固める。
「主役の3人よりも、脇役が顔と名前が有名な方なんです。僕は主役と脇役のバランスはこうであるべきだと思うんです。脇の人は、インパクトが強く存在感を出して、ここでこの人だっていうのがあっていいと思うし、主役はずっとこの役柄の人として生きるんじゃないかって観客が思うような自然な方を選びました。キャスティングで成功できたことで撮影から編集まですべての作業がモチベーションを下げることなくやれました」
好きな映画監督を問うと、ロベルト・ベニーニ監督の名を挙げ「人生は素晴らしい、生きることは素晴らしいという人生を肯定し、賛美した映画が好き」だという。本作も、生きづらい現代社会で、それでも健気に生きていく人間の姿を描いている。初監督作は、「何にも似ていないって言ってもらうのがうれしい」と語った。
映画「それでも花は咲いていく」は5月7日からテアトル新宿・キネカ大森ほかで全国順次公開。
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