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トランスセクシャルの現代美術作家の素顔に寄り添う 「ピュ~ぴる」

2011年3月25日 14:47

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友人同士のふたりがつくり上げた、美しく、感動的なドキュメンタリー
友人同士のふたりがつくり上げた、美しく、感動的なドキュメンタリー

[映画.com ニュース] 国際的に活躍する現代美術アーティスト・ピュ~ぴるが、自身のアイデンティティを深く見つめ、芸術家として模索していく8年間を追ったドキュメンタリー「ピュ~ぴる」(松永大司監督)が、3月26日に公開される。公開を前に、松永監督とピュ~ぴるに話を聞いた。

すらりとした体躯に穏やかな口調、どこか似た雰囲気をも感じさせるふたりは長年の友人同士だという。かつて男性として生を受けたものの、その体に違和感を覚えていたというピュ~ぴるは、それを解消するかのように、独創的なコスチュームを身につけてパフォーマンスを行っていた。

松永監督は「ピュ~ぴるが『自分の生きざまを撮って残したい』って言ったんです。ちょうどそのころ自分も映画を撮ってみたいと思っていて。言葉にするとドラマチックに聞こえるんですが、全然そうじゃなくて、友だち同士遊びの感覚でなんとなく撮り始めたんです」と01年に開始した製作の経緯を話す。

ピュ~ぴるが“妄想の具体化”と呼ぶ作品への想いのほか、かなわぬ恋への苦悩、友情や家族愛、全身全霊を掛けて創作に打ち込む姿など、ひとりの人間としての生きざまが、カメラ越しの松永監督との率直なやりとりを通してリアルに映し出される。そしてピュ~ぴるは創作活動と平行して、手術やホルモン投与により、肉体を己の理想とする形に変えてゆく。

松永監督は友人としてピュ~ぴるの去勢手術に立ち会い、映画監督として手術前後の表情をカメラに収めた。「相談されたのか結論だけを聞かされたのか覚えていないのですが、ピュ~ぴるは最終的にはひとりで決めた気がするんです。その決断に対しては僕は何かを言うことはできないと思いました」と振り返る。

2005年横浜トリエンナーレで、変容を重ねた肉体をアートに昇華したパフォーマンスで観客を圧倒する。その様子を収めた本作は完成後13カ国の海外映画祭に招待され、今年1月のロッテルダム国際映画祭では、700本以上の上映作品から観客投票でベスト10入りという快挙を成し遂げた。

「オランダはジェンダーフリーな国。日本だと“性同一性障害”っていう言葉が流通していますが私は好きじゃないんです。もちろん私の中では正直なことで私の一部なんだけど、向こうの観客は全体像を見てくれて、そこにものをつくることや人を愛すること、自分が何であるのかというアイデンティティの旅路だったりを、包括的に見てくれているとすごく感じました」と、ピュ~ぴるは語る。

一方日本では、セクシャルマイノリティという側面だけがクローズアップされる可能性も否定できない。「覚悟もあるのでいいんです。何かを押しつけるのではなく、こういう人間はテレビの世界や、ショーパブだけじゃないのよって、存在を知ってもらうことから始まると思うんです。言葉ではいろんなとらえ方があるかもしれないけれど、老若男女一人でも多くの方に、先入観なしで劇場に来て見てほしいです」。

続編の撮影が進行中だと話す松永監督は「普通に恋をするとか、手をつなぐとか、子どもを持つとか、みんなが当たり前だと思っていることが当たり前ではないことがたくさんある。身近な所に幸せがあるってことに気づいたり、人生大変なことはたくさんあるけど、明日もまた頑張ってみようと感じてもらえたら」と作品への思いを語った。

ピュ~ぴる」は3月26日、渋谷ユーロスペースほか順次公開。

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