カンヌ映画祭パルムドール受賞作「4ヶ月、3週と2日」監督に聞く
2008年2月29日 12:00

[映画.com ニュース] 07年のカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)受賞をはじめ、世界各国の映画祭で絶賛された「4ヶ月、3週と2日」が、間もなく公開される。本作の監督・脚本を務めたクリスティアン・ムンジウ監督に話を聞いた。
映画の舞台は、チャウシェスク独裁政権下にあった87年のルーマニア。出産の奨励と中絶禁止が法律で定められていたこの共産主義国家時代に、望まぬ妊娠をした友人の中絶を手助けする女子大生の緊張感に満ちた1日を描く。自身もルーマニア人である監督は、映画に真実味を持たせるために、“長回し”と呼ばれるカット割りしない撮影手法を用いている。「初めからワンシーンワンカットのスタイルで撮影すると決めていたから、オーディションの時点で俳優に『10ページ覚えてきてくれ』と注文したんだ。それで本当に覚えてきた人がこの映画に出ているのさ」
余計な音楽も一切使わず、1つの視点から登場人物をとらえ続けることによって、まるで当時のルーマニア庶民の生活を覗き見ているような錯覚に陥る。しかし、それゆえに監督と俳優は長回し特有の苦労を強いられたのだそうだ。「ヒロインがボーイフレンドの家族のディナーに招かれ、大人たちの雑談に付き合うという11分間のシーンは、これだけで17テイクも撮り直したよ。300メートルのフィルムで撮るんだけど、5分過ぎたところでNGを出すと300メートル全部が無駄になるし、最後の20秒でフィルムが終わってしまったり本当に大変だった」と撮影時の苦労を語った監督は、「あんな撮影は2度とゴメンだね」と苦笑した。
中絶を扱っている本作だが、自分の中絶手術の手配をヒロインに任せきりにする女友達や、妊娠について無責任な発言をするボーイフレンドなど、劇中のキャラクターは妊娠・中絶についての意識が低いようにも見受けられる。ヒロインたちと同世代でもある監督は、「確かに彼らは浅はかだけど、僕の記憶では当時の若者はみんな似たような考え方だったよ。なぜなら人々は“共産主義”という檻の中に閉じ込められた動物のような環境で生きていたからだ。常識や倫理観は平穏な暮らしの中でしか生まれてこない。とにかく生き延びなければいけないというプレッシャーの中では、人間はとても自分勝手になるんだよ」と、当時を知る人間として重みのあるメッセージを送った。
「4ヶ月、3週と2日」は3月1日公開。
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