「やっぱり怖いのは人間」Threads of Blue R41さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱり怖いのは人間
この作品はサイコスリラーに端然としたSF要素が組み込まれていると思う。
中盤までホラーのように描かれているので、残念だが途中で見るのを止める人も一定数いると思われる。
しかしこの作品はSFサイコスリラーの要素を十分に備えているし、ホラーの要素もある。
中盤まで我慢できればこの作品の面白さを知ることができる。
さて、
このSF設定も面白い。
非常にクローズとされた場所 マンション 政府の自殺対策と脳科学による自殺の食い止め研究
背景が現代で、この実際の社会問題である自殺を何とかしようと思惑する政府と、脳科学者の岩波博士が開発した記憶の消去と記憶の移植
そしてありがちの天才による偏向思考
つまり博士による人体実験という研究へののめり込み
これが内部告発によってバレたことで研究は中止
しかし、
自殺ほう助サイトで人を集め、記憶を消して新しい記憶を移植、あるマンションだけで研究は続けられた。
博士も身分を隠すために別人に自分の記憶を移植していた。
このあたりの設定が面白かった。
主人公エン
彼女は同じような悪夢を見ることで、未来を予知しているのではないかと思うようになる。
となりに住むユリコ
被験者の監視役を司るが、被験者が元の記憶を幻想として見ることに混乱するのを知り、この研究は危険すぎると結論付ける。
何とかしたかった人物が脱走したことで自分自身の立場も危うくなっていた。
そして非常放送を流した元研究員の内部告発者
彼らによって岩波博士らの研究は終焉するかに思える。
しかしながら、最後に日本人特有の「情け」が仇となる。
天才岩波博士のした大逆転
すでに薬を服用させていたエンに、記憶の書き換えを行う。
フラッシュ装置のスイッチオン
この青い光の筋と脳のシナプスのモチーフが、このタイトルが示す「青い糸」なのかもしれない。
そして次のシーンは冒頭に出てくる老婆
すでに認知症が進んでしまっている。
この老婆にエンの記憶を、つまり彼女そのものにしてしまう。
肉体のエンには、アスカというまったく別人物の記憶が移植される。
こうして再び再利用された記憶と肉体によって、また新たな家族が構成されたのだ。
岩波博士はどこへ行ったのだろう?
このようにして恐ろしい研究は続けられるのだ。
マンションを変えてしまえば、自分の記憶も他人へ書き換えてしまえば、彼らの研究は誰にも気づかれないまま進行できる。
この恐ろしさ。
中々満足させてくれる作品だった。