劇場公開日 2024年7月12日

「ゾッとした」大いなる不在 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ゾッとした

2024年7月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ラブストーリーであり、サスペンスであり、ミステリーであり、ホラーだった。
怖い。
ゾッとした。
3年前に『ファーザー』を観た時は、アンソニー・ホプキンスの演じる父親のような人間に接しなければならない娘のアンや、周りの人の視点として怖かった。
歳を重ね、今や「自分が『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスや、本作の藤竜也にならないかが心配」で怖くなった。

人間の芯や土台を作るのは、記憶と感情と、鍛えた理性のはずだが、それらが一切なくなってしまって、封じたはずの獣性だけが残ってしまったら?
介護老人ホームなどで、老人からの職員に対する暴言や暴力加害のニュースなどを思い出し、この状態になった老人が「果たしてまともな人間であろうか?」と疑問を抱き、一種の優性思想・選民思想的な考えを抱く自分そのものも怖くなった。

おまけに役者の息子は、舞台での役を演じる上で、その父の生きざまを理解するために来たのであって、じつは父のことはどうでもいいと思っている節すらあるという表現だった。
これは観てる側が相当に考えさせられる。
自分ごととして考えると、怖さが強く残るのだった。

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コージィ日本犬