星つなぎのエリオ : 特集
【またピクサーが大傑作つくったんですか】両親を失っ
た主人公の再生の物語。「そのままの君が好きだよ」。
この広い世界のどこかに、きっと本当の居場所がある…
大人がボロボロ泣く感動超大作。私のための物語でした

8月1日公開のディズニー&ピクサー最新作「星つなぎのエリオ」を観終えた瞬間、筆者はそう思いました。
主人公は、両親をいっぺんに亡くした少年。日常が色あせていく。ここは自分の居場所じゃない。だから、この世界のどこかにある“本当の居場所”にいきたい。そんな時、投げかけられる「そのままの君が好きだよ」という言葉が、どんなに傷を癒やしてくれることか――。

もちろん人によって感じ方は違うと思いますが、「星つなぎのエリオ」は「誰にも届く普遍性と、あなただけに語りかける個別性を同時に持った一作」であり、「大人こそ泣ける感動超大作」だと思っています。
もとから興味があった人も、いまいち興味がわかなかった人もひっくるめて、強烈に「観たほうがいい」とオススメしたいほど、私たち映画.comは本作に深くハマっているわけで……では、どこがどう良いのでしょうか?
映画.comスタッフ3人(ディズニー&ピクサーファン、若手女性、そして二児の父である男性)によるレビューをご紹介しますので、ぜひ、この夏の作品選びのご参考に!
【緊急レビュー①】「ディズニーファン」が超期待して
観たら…絶対観て!早く“みんな”と分かち合いたい!

まずは、映画.comのディズニー&ピクサーファンの感想!
ディズニーランドのホーンテッドマンションに100回以上乗り、ディズニーやピクサーの新作は全信頼で追いかけ公開初日に劇場直行、という“強火寄りのファン”は、「星つなぎのエリオ」を観るとどうなるのか? 思う存分、語ってもらいましょう!
●【この最新作、観逃してほしくない】
私の心をやさしく包んでくれた…すべてのディズニー&ピクサーファン、みんなに絶対に出合ってほしい映画!

私がディズニー&ピクサーが好きな理由は、笑って泣いてハラハラして、最後に心の一番やわらかい部分に、そっとあたたかいものを残してくれるから。

「星つなぎのエリオ」もまさしく魅力がギュッと詰まった最新作でした。観終わったあと、心をまるごと包んでくれて、やさしく背中をなでられたような気持ちになって……。
近年は「リメンバー・ミー」「インサイド・ヘッド2」などなど、これまでの作品と同じように、期待以上のワクワクと感動が膨らみ続ける、“すべてのディズニー&ピクサーファンと分かち合いたい映画体験”だったんです!
●【ファンとして、オススメしたくなるポイントは?】
観れば観るほど発見がある、何度でも行きたくなる世界観! そして新しい推しを発見…とにかくグロードンに会ってほしい!

なんといっても、今回も“入り込みたくなる世界”がファンの心を掴んで離しません! 宇宙評議会“コミュニバース”は、ピクサーらしいイマジネーションであふれており、「ここに住めたら最高なのに!」と何度も思うほど壮大で美しいんです……!
また、細部のディテールも本当に良くて、特に印象深かったのは意外にも「エリオの部屋」でした! ポスターや小物がぜ~んぶ丁寧に作り込まれているので、ピクサー映画恒例の“イースターエッグ”探しもやめられません、止まりません!
そしてそして、キャラクターの中でとにかく忘れられないのが、グロードンでした!

最初は「なにこの子!?」と驚きましたが、彼のまっすぐな優しさと偏見のなさが尊すぎて……観れば観るほど、どんどん愛おしさが増し、気づけば「グロードン最高!」と全力推しになっていました!
みんなグロードンのことが好きになると思いますし、これはファンあるあるですが、観れば「星つなぎのエリオ」のさまざまなグッズがほしくなるはず!!(グロードンのぬいぐるみが特にほしいです、お願いです、早く買わせてください!)
●【あなたに寄り添ってくれる物語】
「自分らしくいても、ちゃんと愛される場所がある」…あたたかい気持ちがまっすぐ届く。そしてエリオの隠された気持ちに気づいたとき、彼を応援せずにいられなくなる。

もちろん、物語もとっっっっても良かったです!
「今いる場所じゃないどこかへ行けたら、なにか変われるかもしれない」――そんなふうに思ったこと、誰にでもありますよね。私も、いまだにふと、そう思うことがあります。
だからこそ、同じように「ここではないどこか」を求めるエリオの姿に、自分自身をとても重ね合わせてしまいます。彼の言葉や、見ているだけで胸が締め付けられるような思い、明らかになる“隠された感情”……エリオがどんな道を見つけていくのか、応援せずにはいられませんでした。
そしてこの映画は、とても優しく、まっすぐに、「自分らしくいても、ちゃんと愛される場所がある」ということを教えてくれます。誰かをまるごと受け入れること、自分を隠さずにいること、その大切さ、難しさ。「星つなぎのエリオ」は私たちの心をゆるゆるとほぐしながら、あたたかい何かを残してゆく――。
ディズニー&ピクサーファンはもちろん、1人の人間として、気持ちがしっかり届く。「自分に寄り添ってくれる物語」が、映画館であなたを待っています!
【緊急レビュー②】「自分の映画じゃない」な人が観た
ら…「本当に観て良かったと声を大にして言いたい!」

レビュー2人目は、若手女性の感想をご紹介。果たして、何を感じたのでしょうか?
●鑑賞前の印象を覆された、「生きづらさ」を抱える人々へ贈られる物語

正直に告白します。すみません、「星つなぎのエリオ」を観る前は、なんとなく「これは私の映画じゃないな」と思っていました……!
でも、映画.comの同僚から「とても良かった」とオススメされたことで、観に行ってみることに。
そして、観終わったときに私は……「海外の、全然違う人たちが作った映画なのに、なんでこんなに、私の悩みをわかってくれるんだろう?」とがく然としていました……。最初から最後まで、「生きづらさ」を感じたことがあるすべての人に、ぐさぐさと刺さる物語だったんです!
もうちょっと具体的に、感じたことをお話していきますね。
●“そのままの君でいい”、そんなメッセージに救われた。観てよかった、と幸福感があふれる映画体験。

本作の主人公エリオは、ありままでいることだけでは「“ここ”に馴染めない」と感じている男の子。でも同じ悩みを抱えるグロードンと出会い、「きみがいるから、自分は孤独じゃない」と、少しずつ気づいていくんです。
そうしたエリオとグロードンの冒険は、観客席の私にも「同じように感じている人は世界に確かにいる。だからきみは孤独じゃない」と優しく、それでいてはっきりと言ってくれたように思います。
「社会人としてしっかり頑張ろう」。意気込んではみるけれど、自分自身が「ありのまま」でいることに不安がつきまとって、毎日ちょっとだけ息苦しい。そんな悩みに、本作のやわらかなメッセージが染み込み、涙腺をたくさん、たくさん刺激してきては、特に強い興味がなかった本作やエリオに、いつしか心から「うんうん、同じこと思ったことあるよ」と共感している自分に気づいて、ハッとさせられて。
こんなにも肯定された気持ちになる映画、本当に久しぶり――! 感動の結末にたどり着き、そしてBUMP OF CHICKENによるエンドソング「リボン」が流れたときには、「本当に……観てよかった……」と、幸福感で胸がいっぱいになっていました。
●さらなる魅力は“最高にかわいい”! 素晴らしいアート作品を、音楽と一緒に体験できる贅沢な時間!
ほかには、「最高にかわいい映画だった」ことをお伝えさせてください!!
キャラクターや惑星のデザインがどれも大好きですし、極彩色のネオン感溢れる色づかいの世界も圧巻! 夏休みに“動く美術館”で、音楽とともに芸術鑑賞をするような、楽しい気持ちもとことんあって、「なんだか最近、疲れてるなあ」って人も、とことんリフレッシュできると思います!

そのままの自分を愛したくなるメッセージをはじめ、さまざまな魅力が組み合わさった、まさに圧倒的に贅沢な1時間半――鑑賞前の自分に「安心して楽しむといいよ」と教えてあげたいくらいです!
「何かをあきらめかけている」「自分に自信が持てない」、そして「自分の映画じゃない」と思っている人にこそ観てほしい、「出合えたことが嬉しくなる映画」でした!
【緊急レビュー③】映画.comがガチ目線で観たら…
「本当に素晴らしい!“1本の映画として”大傑作です」

最後のレビューは、映画批評も執筆する男性スタッフ(二児の父)。
「クオリティの高い映画を可能な限り多く観たい」「自分の人生を揺り動かす物語を浴びたい」という同スタッフの、「星つなぎのエリオ」への感想は!?
●【演出がとても巧い…!】
観客の気持ちを最高潮に持っていくテクニックが凝縮! エリオの目のケガの“なぜ”など、描写を読み解けば“さらに深い体験”に!

まずは演出の巧さが印象深い。例えば「ほしくてたまらないけれど、現実に起こる可能性が極端に低いこと」(エリオの場合は宇宙人との接触)が起きた瞬間の高揚感が、非常にスリリングに表現されていたこと。
エリオが宇宙からメッセージを受け取ったときの、信じられない気持ち、究極の喜び。周囲の機械類が異常な音を立てて狂っていく様子や、グングン盛り上がっていく音響効果により、観客もエリオと同期して宇宙に突き抜けるほどの幸福を感じるのだ。この感覚は、本作を観てほしい大きな理由のひとつである。

また、メタフォリカルな語り口の巧さもバツグンだった。エリオは物語序盤で左目にケガを負い、治療のためアイパッチをつけるわけだが、もちろんこれには意味がある。
右目は過去、左目は未来を表す、といわれている。つまり左目をケガしたエリオは、未来への希望を失っている、と読み解くことができる。そんな人物が変わるために、どんなことが必要か? そうした観点で観れば、物語がより一層、あなたの胸を打つだろう。

さらに言えば、エリオは宇宙へのエネルギッシュな情熱を燃やす一方、その小さな身体には諦めにも似た悲しみが染み付いている。情熱と悲哀、相反する感情を抱える彼は、見た目以上に重層的なキャラクター造形をしており、存在自体が作品に立体的な奥行きを与えているのだ。
●【こんな映画に出合えるのは本当に幸運】
自分自身の境遇や人生と深刻にリンクし、かけがえのない作品に。問答無用に「私のための大傑作」だった。

と、なんだか冷静に分析みたいなことを書いているが、ぶっちゃけ、観ているときは心をかき乱されっぱなしで、とても冷静に観られたものではなかった。
全編通じてダバダバ泣いたし、ほっこりしたし、手に汗握りまくったし、ときに悲しさに引き裂かれ、ときに喜びに有頂天になったりもした。鑑賞後も頭はぐちゃぐちゃ、「大傑作でした」と絞り出すのが精一杯で、今はなんとか整理をつけて文を書いている。
なかでも、開始10秒ほどで心を一気につかまれたことが、自分でも非常に意外だった。
エリオは「シンプルに趣味が周囲と合わないから孤独な少年」だと思っていたが、「両親を失ったから孤独である」ことが、冒頭で開示される。瞬時に、筆者自身の、もうすぐ6歳になる長男、4歳になったばかりの次男のことを思った。

エリオの両親は、幼いわが子を残して逝くことが悔しくてたまらなかっただろう。エリオも、両親ともう会えないことが悲しくてたまらないだろう。そんな少年が「僕は1人じゃない」と心の底から思えて、再生する物語なのだと思ったら、理屈ではない没入体験が筆者に襲いかかってきた。
だから「またピクサーさん、僕のための映画をつくってきてくれたんですか」と思ったものだ(また、というのは、兄弟と父親の絆を描いた「2分の1の魔法」/2020年公開でもそう思ったから)。
語りだすと止まらないので、感銘を受けた場面に言及して記事を締めくくりたい。エリオが、無謀な行動ながらも宇宙人との交信に成功し、自宅に帰ってきたシーン。保護者である“おば”が怒ることなど一切気にせず、家中をひっくり返して「宇宙人に会うための旅行セット」を準備している様子を観て、筆者自身の長男を重ね合わせていた。

筆者の長男は“男の子まっさかり”で、普段はまったく問題ないのだが、一度「やりたい」スイッチが入ると親の言うことを一切聞かず、エリオのようにエネルギッシュに突き進む。
そんな長男とどう接するのが正解なのか、最近はとても悩んでいた。叱りつけるべきか、これはこれで容認すべきか。子の将来にどんな影響を及ぼすか測りかね、最善手がわからないままだった。

ところが。本作の、脇目もふらずに宇宙に憧れ続け、それゆえに宇宙空間で輝きを増し、成長していくエリオを観て、「親が言うことよりも、はるかに優先したい『好きなこと』がある。これはとても素敵なことじゃないか」と考えるようになっていた。
悩んでいた心がスッと、軽くなったような気がした。本当にダメなことは叱らないといけないが、好きなことを好きなようにする、それくらいは、微笑ましく見守っていてもいいのかもしれない。
「星つなぎのエリオ」は、自分自身の境遇や人生と深刻にリンクし、かけがえのない作品になった。他の人がどう言うかはわからない。しかし筆者は、問答無用の「私のための大傑作」だと断言したい。そんな映画に出合えることは本当に幸運なのだ。

以上、本記事の三者三様のレビューを読んで、少しでも“響く”ものがあったのならば、ぜひ観に行ってみることをオススメします。
映画はときに、自分の過去や未来に向き合うための鏡になる。1人でも多くの人の人生が、「星つなぎのエリオ」によってあたためられることを、この広い宇宙の片隅から切に願っています。