「孤独じゃないって気づけるのはほんのちょっとのきっかけ」星つなぎのエリオ スクラさんの映画レビュー(感想・評価)
孤独じゃないって気づけるのはほんのちょっとのきっかけ
インターネットの発達、科学の発展に伴って、私たちは世界の広大さを知る反面、自分の存在を矮小に感じてしまうことがある。そんな感情誰しも一度は思ったことがないだろうか。
私はある。
SNSで誰かと誰かが楽しそうにしている。そんな様子を目にしたとき孤独感を覚えることがある。妊娠中で体調が芳しくなく、思うように動けなかった時期、ことさらにそう感じた。
この映画の主人公、エリオが孤独を感じる原因は少し違う。彼の孤独は両親の喪失から始まっている。その痛みから逃れるように、彼は「ここではないどこか」、つまり宇宙にユートピアを探しにいく。
ちょっとした勘違いでエリオは今の自分とは違う、「別の自分」になれる機会を得る。でも、彼が宇宙で出会ったのは、理想の自分ではなかった。
グロードンという存在との出会いを通して、彼は少しずつ気づいていく。
“本当の自分”は、遠く離れた宇宙の彼方にいるんじゃない。
すぐそばにいる誰かとの関係のなかにこそ、自分らしさがあるのだと。
クライマックスにかけての盛り上がりでは、私たちは決して一人ではなく、手の届く範囲に容易く得られる絆があることに気付かされる。その絆はあまりにも近すぎて、気付いていないだけなのだ。エリオの変化は、私自身にも変化をもたらした。
私たちはみんな、どこかで“今の自分じゃダメだ”と思いがちだ。
もっと強くなれたら。もっと楽しく生きられたら。もっと人とつながれたら。
でも、そうやって遠くを見ていると、すぐそばにある優しさや絆を見落としてしまう。
この映画を観終えたとき、私はふと息をついて思った。
「今のままの自分でいいんだよ」と。
そして何より、「あなたはひとりじゃないよ」と、優しく背中を押されたような気がした。