「ロリータへの矜恃に涙する」ハピネス momoさんの映画レビュー(感想・評価)
ロリータへの矜恃に涙する
余命1週間に泣く映画だと誤解してもらっては困る。
ロリータファッションへの矜恃に涙する映画だ。
冒頭からどんどん魅せてくれるロリータファッションは嶽本野ばらや青木美沙子監修で素晴らしさにうるうる来てしまう。
イノセントワールド大阪本店のメゾンの店員に青木美沙子さんを配する粋な計らいにグッとくる。
そして、資生堂パーラーのスベシャルカレーのシーンは伊勢海老とアワビのレミーマルタンのフランベで炎が上がるところが人性の喜びの炎を燃やし尽くしている。私は小説を読んでこのカレーを銀座の資生堂パーラーまで食べに行ったんだけど本当に美味で筆舌に尽くし難い。
蒔田彩珠ちゃんは小説の想像より地味顔だったけど、より普通の女の子感が出てロリータ服の装飾も映えた。
髪が縦ロールじゃなくてボブだったけど、より普通の女の子感が出て映像的には良かったかもしれない。
また、今回両親の配役が素晴らしかった。
母親役の吉田羊の演技力が映画のレベルを確実に上げている。
そして父親役の山崎まさよしの葬儀社の人が白を勧める祭壇の花に、赤とピンクを持ってこい!と声を荒らげるところからは涙腺が崩壊して涙が止まらなくなる。
死後、お気に入りの服を着せるシーンではボロ泣きでした。
窪塚愛流が本当に素晴らしかった。あの雰囲気はなかなか出せない。嶽本野ばらの世界観を忠実に表現出来る俳優だ。
大阪旅行の時の服装が、原作とはあまりに違うのはご愛嬌。原作通りの服やバッグはもう手に入らないだろう。
また、橋本愛がパーフェクトなロリータを体現してくれている。美しすぎる!
それを言うなら吉田のロリータと山崎まさよしの、フリルシャツにクスッと笑った上で何故それを着ているのかに涙するのだけど。
原作が古いし、嶽本野ばらも1度大麻で逮捕されているので躊躇する人もいるかもしれないけれど、騙されたと思って若い人も観てほしい。
野ばらちゃんはそんな人もいるということを受け止めた上で絶対「反省なんかしないで」今後も全世界のロリータのためにリーダーとして傑作を描き続けなければいけない。あなたの使命です。野ばらちゃん絶対コレ読んでね!(切望)
こんな素晴らしいお耽美な世界観があるのだよとたくさんの人にわかってほしい。
子どもが闘病中だったり子どもを亡くした方にもぜひ観て欲しいんだけど、ロリータの方々にもっとたくさん観てほしい
というのが一番の感想だ。大阪の夕方初日はロリータ魂を持つ方がファッション的には他に1人もいなかった。
惜しむらくはヴォルビックが出てこなかったこと。由茉ちゃんには原作通りロリータとしてのこだわりのヴォルビックを飲んでほしかった。そこは大人の事情としては目をつぶれる
スマホ時代になり何かと設定は変わるのだろうけど時代が進んでも色褪せないピュアでお耽美な映画、おいしゅうございました。