「「良い人になりたい」って言うけれど、」ギルバート・グレイプ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
「良い人になりたい」って言うけれど、
”良い人”ってどんな人なんだろう?って、この映画を観て思う。
家族からの囚われ、家族への囚われ、自分から・への囚われ…。
そんなに簡単に断捨離・整理できるものではない。
鬱屈、気付かないふりをしているイライラ、閉塞感。愛憎。
断ち切って自分の人生をつかもうとした長男。それと同じことを、ギルバート・エイミー・エレンができないのは、たんに勇気や才能がないからだけではないことは、ラストをみればわかる。
けれどの選択。選択させられたようで、自分で選択しているパラドックス。
とはいえ、誰もがアメリカンドリームを夢見ることができるわけでもない…。
自分たちを支えてくれるソーシャルネットワークが、時にはしがらみともなる。
何を一番大切にしたいのか≒優先事項ともまた違う。
何のため?誰のため?に、それが大切?
簡単に、自分の意志だけで決められるようでいて、決められない…。
前半のそんな思いが、後半、”広い”なんて形容では足りない空へ駆け上がっていき、心が満たされる。そんなイメージの映画です。
☆ ☆ ☆
≪もう少し詳しく映画について≫
特筆すべきは、他の方も絶賛されていますが、ディカプリオ様の神がかり演技!
いやもう、ただのイケメン俳優かと誤解しておりましたが、申し訳ありません。
きれいごとなしに描かれていると思います。
もう、放り出したくなるような無邪気さ、それでもの愛おしさ。
とはいえ、この家族が抱える問題はそれだけじゃないんだよな。
状況を考えると、息詰まる。
ディップ氏がいい。
色ものでなくても、色ものじゃないからこそ、すごく味があります。スパロウ船長よりこっちが好きだな。あれはあれで際立ったキャラクターですが。
他の登場人物も、一人でも欠けていたら違う味わいになったんじゃないだろうかと思う位、その役柄なりの存在感がある。
兄弟・ベッキーの影に隠れがちだが、姉妹もいい味出している。ギルバートに巻けじ劣らじのエイミーの諦観、黙々と家事をこなす。エレンはまだ幼いだけに、いろいろな気持ちを抑えない。兄・姉の本音の一部の代弁者?
母の悲しみ・虚しさ・激情と決意。ラストの母の行動。母なりのけじめがあんなことに…。ラストの表情を見ると、母なりの予想・覚悟はあったのかななんて思ってしまう…。
ラストの展開はアメリカならでは?日本なら罪になっちゃうけど、終わりと始まりの象徴。すっきりします。
小さな幸せ、でも大きな一歩。彼らならきっといいことあるよと見送りたくなるラスト。
Tengan suerute!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
意外に観る人を選ぶ映画かもしれません。
でも私にとっては、大切に箱に仕舞って時折開けてみる秘密の宝物にしたいような、誰かと共有したいような、そんな映画です。
私もずっとしんどい思いをして、ずっと人生このままかなと思っていましたが、まさかの海外移住を現実にし、人生は本当にどうなるかわからないなと実感しています。若い時は諦めるしかなかったことも希望はあるんだなと、年を重ねたから思えることもたくさんあります。
そういう解釈もされてしまいますね。世の中には不条理な思いをしながら生きてる方がたくさんいますし、その場から逃れられない人もいますが、それらを乗り越えた先に見える光や希望を探していこうと願いを込めました。
世の中、仕方ないと諦めがちなこともありますが、何かの拍子に人生が動くことはよくありますからね。若い人たちにも希望を与えるといいなと思いました。もっと評価されるべき作品ですね。
共感ありがとうございました。
お姉ちゃんたちもいいお芝居してましたね。黙々と家事をしながらも、やっぱり我慢できずにキレるところ…。わかるよ、わかるよ…とハグをしたくなりました😭…