「犬顔なのに」クオリア uzさんの映画レビュー(感想・評価)
犬顔なのに
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もっとドロドロかと思いきや、序盤はかなりコミカル。
そこから終盤に向かうにつれ、作品の空気もキャラへの印象も変わっていく。
最も印象的だったのは優子で、いびられても怒鳴られてもニコニコした姿に最初は異常性すら感じる。
不倫に何も言わないのも、彼女の方が良介への興味や執着がないという皮肉かと思っていたのだが…
裏設定として、嫉妬の感情が極端に薄い(重婚主義に近い)とのこと。
必要とされることが何より大事なのに、少しずつ咲に居場所を奪われ、良介も自らの意思で出頭してしまう。
この時、自分の必要性が失われたと感じたのだろうか。
足の悪い姉と妊婦の咲だけを残せず、良介の出所を以て役目を終えたように家を出る。
それは決して愛想を尽かしたからではないだろう。
優子に偉そうに振る舞う良介を見て、咲が自分への態度を薄っぺらく感じるところが面白かった。
そうされたら嫌なのに。家族になったらそうされるかもしれないのに。
あんなThe無責任男、幻滅しそうなものなのに、子種をもらってまで続けますか。
太一の人間臭さは好きだし、スナックのあれは養鶏に携わってなくてもブチギレる。
ただ、道の駅の売店にもその客にもトラウマ級の被害を出したテロ行為は、擁護できないなぁ。
登場人物みんなどこかしら狂ってた。
咲の父親が何をしていたのかなど、余白もある。
しかし感情の動きやメタファー、タイトルの意味など、探りながら見返す面白さもある作品だと思う。
何より、舞台挨拶後にお話しさせていただいた際に楽しそうに語ってくれた牛丸監督が魅力的だった。
いい演技をする役者を知ってほしいという気持ちも含め、応援したい。
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