劇場公開日 2023年12月8日

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「失踪か…逃亡か…市子の思いはどこに」市子 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5失踪か…逃亡か…市子の思いはどこに

2023年12月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

ミステリアスな予告に興味を惹かれていた本作。お目当ての作品の前に時間があり、たまたま上映時間の都合がよかったので鑑賞してきました。杉咲花さんの演技に圧倒される作品でした。

ストーリーは、プロポーズした翌日に恋人・川辺市子が失踪し、呆然とする長谷川義則のもとに、市子を探しているという刑事・後藤が現れたことをきっかけに、彼女がかつて別の名前で生きていたことやある事件への関わりが疑われることなど、謎に包まれていた市子の過去が徐々に明らかになっていくというもの。

市子が別の人間になり変わって生きてきたであろうことは、予告からわかっています。なぜそんなことをしているのか、誰になりすましているのか、観客の興味はそこに集まります。冒頭のテレビで流される身元不明遺体発見のニュースが関係していることが予想され、ミステリーを思わせる展開にぐいぐい引き込まれます。

そこから、市子と関係のあった人物を幼少期から一人ずつ取り上げては、彼女の人生を浮き彫りにしていきます。意図的に説明を省き、月子と名乗る少女を描くことで物語をわかりにくくしていますが、これが市子の複雑な生い立ちと彼女の心に降り積もる負の感情を描き出すことに奏功しています。

後半は、市子の行方を探す長谷川の動きに合わせて、市子のかつての知り合いが再び登場します。少しずつ市子に近づいて行く中で、やがて市子に関わる重大な事実が語られ、冒頭の遺体発見ニュースとのつながりも明らかになります。そこに長谷川自身の思いも絡み、人間ドラマとしての見応えを感じます。

ただ、ここでも時系列がいじられているのですが、前半とは異なり、わかりにくさとテンポの悪さが気になります。また、最後まで市子本人の口から心情が語られることがないので、失踪の理由も曖昧なままです。初めは、無戸籍の上に罪まで犯した自分と結婚しても長谷川は幸せになれないとの思いから、身を引いたと思っていました。しかし、終盤で流れる若い男女の遺体発見ニュースからは、市子の計画的な関与が疑われ、自分の正体を知る人間の始末と新たな戸籍の入手が目的なのかとも思えてきます。だとすると、失踪ではなく逃亡です。果たして市子の思いはどこにあったのでしょう。

月子の名を捨て、再び市子を名乗ったのは、月子を名実ともに葬るとともに、自分自身を取り戻すためだったのかもしれません。やがて夢もでき、過去をリセットしたくなったのかもしれません。罪と向き合い、長谷川とともに生きる道もあったのではないかと思うと、彼女の選択が正しかったとは思えません。しかし、不遇で壮絶な人生を歩んできた市子にしてみれば、そんな選択肢は初めから存在していなかったのかもしれません。望んで無戸籍となったわけではない市子の憤りや悲しみを思うと、不憫でなりません。2024年から施行される改正民法により嫡出推定の規定は見直されるらしいですが、このような苦しみにを味わう子が一人でも減ることを願います。

主演は杉咲花さんで、抜群の演技で市子の複雑な心情を見事に表現しています。共演の若葉竜也さんも、一途に市子を思う長谷川を好演しています。脇を固めるのは、宇野祥平さん、中村ゆりさん、渡辺大知さん、森永悠希さんら。

おじゃる
りかさんのコメント
2024年9月26日

コメントありがとうございます😊
生まれるところを選べない辛さですね。

りか
りかさんのコメント
2024年9月24日

こんばんは♪共感ありがとうございます😊市子の思い、
やはり戸籍があれば月子も施設に入れて生きれたと思います。そこから連鎖していく殺人。親切な北も邪魔になるというのは、やはり自分本位となるでしょうね。
結局母親がしっかりしてれば。
と感じました。

りか
活動写真愛好家さんのコメント
2024年1月1日

あけましておめでとうございます🌅
今年もお互い素晴らしい映画に出逢えますように😁

活動写真愛好家
humさんのコメント
2023年12月24日

返信ありがとうございます。
本当にそうですね😌

hum
humさんのコメント
2023年12月23日

おじゃるさんのレビューが物語の流れをよく思い出させてくれ、市子の思いを考えています。
同じように生きている人がいるのか
もしれないと思うと胸が痛みます。

hum