市子のレビュー・感想・評価
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人生で一番幸せな味は…。
観たかったけれど、近くの映画館でやっていなかったので見逃してしまった作品が、Amazonプライムに登場していたので、さっそく鑑賞。劇団チーズtheaterの旗揚げ公演作品、舞台「川辺市子のために」を映画化したという変わり種の映画作品。 2度見返しての感想を書きます。 この映画を見終わって、真っ先に思い出したのが、渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」という本。 『置かれたところこそが、今のあなたの居場所なのです。咲けない時は、根を下へ下へと降ろしましょう。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために。現実が変わらないなら、悩みに対する心の持ちようを変えてみる。いい出会いにするためには、自分が苦労をして出会いを育てなければならない。 心にポッカリ開いた穴からこれまで見えなかったものが見えてくる。希望には叶わないものもあるが、大切なのは希望を持ち続けること。「ていねいに生きる」とは、自分に与えられた試練を感謝すること。』だとこの本は教えてくれます。 プロポーズをされても、戸籍がないから書く名前がなくて心から喜べない人を実際に私は知らない。けれど、世の中にはそんな不遇な境遇に苦しんでいる人ももちろんいるのだとは思う。この映画が伝えたいのは、そういう不遇な境遇の人たちのどうにもならない生き方だけなのだろうか? 市子の母の「幸せな時もあったんよ」という言葉が耳に残る。終始不遇な境遇の中にあっても、市子にも幸せな瞬間はいくつかあった。友達の家でケーキをお腹いっぱい食べたあの日。将来一緒にケーキ屋さんになろうといってくれた友だちがいたこと。そしてその夢を実現しようとした日々があったこと。そして一番の幸せは、やはり彼氏となる長谷川との出会いではないだろうか。一緒に暮らし始めた時より、浴衣をプレゼントされた時より、プロポーズされた時より、一番の幸せだった瞬間は、彼と一緒に焼きそばを食べたあの瞬間ではなかったかと思う。永遠に続かないことを知っているからこそ、始まる瞬間がマックスである市子の幸せ。あとはいつか失うことを恐れながら暮らす日々であるから。 願わくば、ラスト歩き出した市子のその先に彼との再会があり、彼女が逃げることをやめて、己の不遇をまっすぐ受け入れた時、その痛みの先には、きっと彼とのささやかな幸せが待っていると信じたい。
私を「私」と証明する方法は
私はいかにして「私」となれるのか、と問われているような鑑賞体験だった。付き合っている男性から結婚を切り出され、結婚届けの書類を差し出されるカットがある。その書類には当然、名前を記入する欄がある。そのカットが写った瞬間は何も気にならないが、主人公の女性が実は偽名であり、戸籍のない存在であることがわかってくると、あのカットの重みが後半、変わってくる。公的な書類の名前記入欄に書ける名前がないということの苦しさが後半、どんどん立ち上ってくる。 自分という存在はいかに保証されるのか。社会のシステムとしての戸籍になければ存在しないことになるのか。しかし、戸籍こそが自分だなんと言う人はいないはずだ。もっと何か、実存の深い部分にある何かが「自分」じゃないのか。あるいは、関係する他者との距離や差異が「自分」を規定するのだろうか。私はいかにして「私」であることを証明できるのか。観客自身も存在を揺さぶられる作品だ。
市子、今どこにいる?
絶対に知られたくない過去を持つ市子。放置子、ヤングケアラー、母の恋人からの性的虐待、そして誰もが当たり前のように持っている戸籍が彼女にはない。
常識でははかれない歪んだ世界ゆえに起きた2件の殺人事件。
必死に過去を隠して手にした幸せ。
しかしそれすらも手放さなければならなかった。
彼女の母親から過去の話を聞いて義則が泣いたこと、母親が船上の義則に頭を下げ、彼がそれに応えたこと。市子がそれを知っていたなら最後の悲劇は起きなかったかもしれない。
市子のヒーローでありたかった北は市子の最後の望み、戸籍を彼女にプレゼントするために自殺希望者とともに海に沈んだのだろうか。戸籍を手にした市子はどこに向かっているのだろう。
市子を追い続けている刑事がなんとか市子にたどり着き、そして再び義則と市子が対面できることを望んでやまない。
義則と暮らした頃の市子の笑顔がもう一度見たい。
きっと明日はいい天気、そうあって欲しい。
市子
長谷川君というそれだけ大切な存在に出会えたのなら、罪を償って戸籍を取得して生きるべきだが、なぜ市子が失踪したかは、普通に生きてる私には分からない。 最初はグーいんじゃんほいって東大阪らへんの方言だったのか。昔友達がじゃんけんするときに言っていたのを思い出した。
杉咲花ってやっぱ凄いな
戸籍を持たない子供。実際にある問題のようだが酷い話だよな。確かに生まれた時にどうにもならない理由があるのかもしれないが、その子にとったら一生の問題。そのままにしていいわけない。この母親は障害を持った娘もいて、いろいろ苦労も多くて大変だっただろうが、だからと言って許されることではない。 一緒に暮らしている彼からプロポーズされて嬉しくても、戸籍がないから婚姻届出せないし、打ち明けるにも、月子の事を話せないし、辛いけど姿を消すしかないよな、可哀想。 北くんはあの女性と一緒に海に落ちる計画だったのか?あの場でそうなったのか?どちらにしても高校生の時から市子に捧げた人生だったのか、彼も気の毒。 新たな人生を歩む市子もみてみたい。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られる
市子(杉咲花)のビジュアルと喋り方が好きで魅入ってしまった。おかっぱのような特徴的な髪型も似合って可愛いし、ふだんは無表情で淡々としたトーンで喋るのに時折見せる笑顔でギャップにノックアウト。関西弁も萌えポイント。
長谷川と北が惚れた理由が分かるなー。すげー美獣って訳でもなく、特にわたしのタイプではないのに何故か惹かれてしまった。この役は杉咲花にしか出来ないと思う。
市子には癒されたけど、ストーリーは家庭環境が辛すぎて精神を抉られっぱなし。とくに市子が月子を殺すシーンは印象的だ。
「市子ありがとな」月子を殺した市子に放った母の台詞が重くて突き刺さる。その後何事もなかったようにお茶を出して鼻歌歌うのが異常。月子の目をじっと見つめながら呼吸器を外す市子も怖い。このシーンで尋常ではない親子関係なのだと確信した。
もはや面影のない市子一家の幸せそうな家族写真を見るとギャップで切なくなる。何が家庭を崩壊させたんだろう...。
悲しいドラマ
市子は最後に素敵な彼に出会えて良かった。幸せだったよね? ただ、なんで自殺してしまったのか?理解できなかった。 車に乗っていた彼女は誰なんだろ。 これは映画館で観るべきだった。 何でみなかったんだろ。 不思議。
杉咲花の存在感がすごい。 関西弁も自然に感じる。 長谷川からプロポ...
杉咲花の存在感がすごい。 関西弁も自然に感じる。 長谷川からプロポーズされて心から嬉しそうだったのに、翌日失踪したのは正体がばれることを恐れたからか。 あと、終盤に車の中から男女2人の遺体が発見された事件が謎。 男性は同級生の北であろう。 そして、もう一人は自殺志願の女性だと思われ、市子は彼女に成りすます計画だったと思う。 ただ、北は自殺しそうには見えなかったので、市子によって殺害されたのか? 考えると恐ろしい。
無戸籍
法律の改正かな。
やっと今年令和6年4月1日から施行。
離婚後10ヶ月以内に出生した子でも
再婚相手の子と見なされるようになった。
しかし、市子が生まれた時は、前夫の子となり
前夫が拒否したら戸籍が無いことになるのか。
あとにできた月子が難病になり障害児と認定され、
就学できない身体を利用して市子がなりすました。
福祉課の小泉を利用して上手くごまかして来た。
小泉は母なつみの男だった。
月子の世話は大変だったのだろう。
ある日、市子が呼吸器を外した。生駒山に埋めた。
なつみは母親なのにありがとう、と言い鼻歌歌ってた。
埋めるのに小泉も加担したのか、
罪の意識で自堕落になり
市子にまで手を出すようになった。
怒りのあまり市子が小泉を刺し殺した。
一部始終見ていた北に手伝ってもらい
線路に寝かし電車に轢かせた。
長谷川と出会い3年暮らしたが、
婚姻届を出すとなり姿を消した。
北の元に身を寄せていたが、
警察と長谷川が来たので逃げた。
サイトで自殺願望者を募り北の家に来させる。
市子のいるところに北と自殺願望の女を来させた。
市子何人殺した?
妹、小泉、北、自殺願望者。
『火車』を思い出した。
自殺願望者の戸籍を手に入れ生きていくのだ。
再鑑賞して、
月子をkillした頃ぐらいから月子と名乗らなくなったのか⁉️最悪遺体が見つかるまで月子でいけたのに市子に戻ったのは、良心の呵責からか❓
また疑問なのは、見つかった遺体を警察は月子と断定したというニュースが流れたが、月子と照合できるデータなんてあるのか⁉️
見落としていたが、月子の病名は、筋ジストロフィーだった。シンママのなつみが仕事に行くので、市子が世話をする。観たシーン、オムツ替えていた。14,5 の少女があまり年の変わらない妹の下の世話、キツいと思う。
この病気で呼吸器を使い身動きできないのは、だいぶ末期に来ていたのだろう。
最初から気づいていたが、森永クン、目がパッチリして少し痩せていた。若々しくなっていた。
ひとつだけ疑問
皆さん、杉咲花さんを褒めると思います。確かに良かったと思います。が、若葉くんもとっても良かったと思います。前半(時系列での)の嬉しそうな顔、後半の厳しい顔、これまで今泉作品でしか記憶ないですが、もっと活躍を期待してます。 伏線もバッチリですし、重たい話にズドーンとしました。監督の作品は「名前」を観たことありました。 わたしの意見としては、杉咲さんは自首して、戸籍の件もしっかり説明して、懲役を終えて、若葉くんと結婚するべきです。彼は受け入れてくれます。 ひとつだけ疑問なのは、面白い展開なのに、映画としてとても映画長く感じました。何故ですかね? テンポが悪い?、内容が盛りだくさんすぎる?ラストが最初にあるから? よくわかりませんが、ともかく長く感じました。
ふたりに幸あれ
市子を近くで見てきた人たちの多角的視点から、市子という人物について解き明かされていくかんじが面白かった。人間の多面性がよくわかるおはなし。
長谷川演じる若葉さんは、「長谷川は市子の過去を無理に知ろうとしない優しい人物ではなく、ずるくて弱い人間」と言っていた。市子がなにかを抱えているのはわかっていたけどそれを知って自分に受け止めきれるのか怖いから逃げてた。やさしさという鎧で自分を守って。人と一緒にいることって相手のいいところも悪いところも全部知って丸ごと受け止めてあげることじゃないか。みたいな、とっても深いことを言っていた...
伏線がたくさん貼ってあってミステリー要素も満載で面白い。そして人間物語としても深く重くのしかかってくる。ふつうの人間なら戸籍を持っているのは当たり前。でも彼女には生まれてから戸籍がなく、自分は何者なのかわからず後ろめたさを感じながらずっともがいていたんだと思う。長谷川と出会ってからやっと自分という輪郭がはっきりしてきたというか、生きる意味を見つけたんだと。長谷川と一緒に過ごす市子は生き生きしていた。
そんな中で婚約届を突き出されてうれしいことなのに悲しくて、市子のすべてを知ったあとにそのシーンを見ると胸が打たれる。出会ったときに「浴衣可愛い」といった市子のために浴衣を拵えてくれた長谷川。もう通すことのないとわかっていてお礼をいう市子。嬉しそうにその姿を優しいまなざしでみつめる長谷川。なにもかもせつなすぎる.....
杉咲花と若葉竜也の素晴らしいお芝居でふたりだけにしか出せない世界観がそこに生身の人間として存在していた。本当に素晴らしい
一番好きなシーンは、市子と長谷川の出会いからふたりで過ごしてきた何気ない日々の回想。あたたかい長谷川と笑ったり、時には喧嘩をし、寝顔を眺めるだけで幸せを感じ、同棲もはじめた、幸せな時間。が、いままでの重いテーマを吹き飛ばしてくれるくらいには輝いて見えた。
あんな長谷川みたいな人と、市子の立場で出会ったら間違いなく惚れるし、(そうじゃなくても惚れる)優しく、温厚で、プライドも高くなさそうで、好きにならないわけがない。この映画をみてからしばらくは長谷川ロスになっていた()
最後、冬子の戸籍に上乗りし、希望が見えてきたことをうたう「虹」をうたいながら、長谷川のもとに帰っていく市子であってほしいと願ってならない。
見逃し厳禁、杉咲花が誘う人間関係の痛みと危うさ
見逃し厳禁の良作。人間模様と距離感を描きながら忠実に浮かばせる戸田監督の手腕が光る。 生きていること、生きていたこと、生きていくこと…それらがいかに複雑で壮絶か。 進む度に訪れる衝撃を静かに受け止める。 余白を埋めるのは、在る問題か、魂か。そんなことを考える。
無戸籍児の壮絶な人生
プロポーズをした翌日、失踪した市子を探すために恋人の長谷川が市子の過去を追っていく。
市子に関わった人々から徐々に明かされていく市子の過去。
その最中警察も市子を探していることを知る。
失踪届を提出した際に担当した警察官にも協力を仰ぎ、市子の過去を深掘りしていく。
離婚後300日問題(詳しい知識を得た方がこの映画をより理解しやすいと思う)の為、無戸籍で出生した市子。
常人では想像もできないほど壮絶な人生を歩んでいた。
市子は自分の人生を得るために様々な罪を犯していく。
客観的に見れば悪でしかないことが、市子の立場を考えると「なんでこの行動を選んでしまったのかわかる気がする…」と思えてしまう。
色々と考えさせられる映画だった。
川辺市子の幸せの為に
同棲中の恋人・長谷川からプロポーズされた市子。涙を流して喜ぶ。
が、その翌日、市子は突然姿を消し…。
プロポーズした翌日にあっさりフラれた残念な青年…と一見思うが、そうでない事はすぐ察しが付く。
TVからのニュース。生駒山で発見された白骨体…。
それと市子に何の関係が…?
この時の長谷川はまだ知る由もなかった…。
長谷川を訪ねてきた市子を探しているという刑事・後藤。
市子を探したいという一心で、知っている事や情報を聞き出す。後藤に協力と同行。
市子の小学や中学時代の友人。高校時代の恋人、同級生。そして母。
証言から浮かび上がってきたのは、壮絶な半生と衝撃の事実であった…。
小学時代の友人の証言では…
同級生からからかわれていた発育のいいその友人を庇うなど、強気で優しかった。ケーキが好き。
奇妙な事に、市子ではなく“月子”と名乗っていた。
別の証言では…
小学時代と中学時代では雰囲気が変わっていた。急に成長したような…。
高校時代の恋人の証言。
交際する中で、キスやセックスなど男女の間…殊に身体の関係に於いて時折嫌悪感を示す事も。
高校時代の同級生の証言。
何処かミステリアス。それが好意を抱いていた自分を含め人を惹き付け魅せると共に、儚さも…。
長谷川も気付いた事を思い出す。
どんなに高熱を出しても、嫌いだからと病院に行く事を拒んだ。
得た証言や情報、調べて分かった事を繋ぎ合わせて徐々に判明した事は…
戸籍が無い市子。
母親のふしだらさ故、戸籍上存在していない。
“月子”と名乗って小学や中学に通っていたのは、妹の名と戸籍で。
その妹は難病で寝たきり。寝たきりになる前の妹・月子を知る同級生が月子と名乗っている市子に違和感を感じたのも無理ない。
戸籍無し。生活は困窮。妹の看病。スナックで働く母は男に依存で子育て放棄。母の恋人はしょっちゅう入り浸り。
高校時代の同級生はある場面を見てしまう。知ってしまう。
母の恋人から身体を強要されていた事を…。
あまりにも悲惨で過酷な過去…。
それを知られたくなくて姿を消したのか…?
いや、それらを知っている関係者もいるので、それは考えられない。
それに、姿を消した要因となったあのニュースとどういう…?
さらに事情を知る同級生と居所を突き止めた母親の証言は、追い打ちをかけるものであった…。
肉体関係を迫られた時、母の恋人を殺してしまう…。
呼吸器必須の妹の呼吸器を外し、死に至らしめ…。
二人の遺体を生駒山に…。
戸籍無し、壮絶な過去、そして殺人…。
人が生きていく中での負の全てを抱えたような市子。
無論、どんな理由あろうとも罪は許されない。ましてや殺人、しかも肉親。
市子一人だけが全て悪いのか…?
嫌悪すべき母の恋人は勿論、元凶である母親。看病と困窮で、娘は私たちの為に…なんて言ってたが、アンタにそれを言う資格あるのか。
市子を取り囲む全ての悪循環、劣悪環境、不幸な生い立ち…それらが市子を追い詰めた。苦しめた。
実際に罪を犯してしまった者、追い詰めた者、気付き手を差し伸べられなかった者…。皆、罪深い。
母親は言う。平凡で幸せな時もあった。家族中睦まじく。そこからの転落。
同級生が見たある時の市子。突然の雷雨。その豪雨の中、「全て流れてしまえ!」と嬉々として叫ぶその姿…。
この世や自分の人生を無くしてしまいたい…。
そんな心の声…。人を惹き付け魅せつつ、今にも壊れてしまいそうな儚さや脆さはそれ故か…。
安藤サクラや有村架純など時々映画の女神様に微笑まれたかのように快進撃続く女優いるが、今みた微笑まれたのは杉咲花だろう。
一躍脚光浴びた『湯を沸かすほどの熱い愛』の時から存在感や演技力は同世代屈指で、作品選びも安定。去年から今年にかけて『法廷遊戯』『52ヘルツのクジラたち』『朽ちないサクラ』と良質作続く。
中でも本作は指折り。『湯を沸かすほどの熱い愛』と並ぶ自身の代表作と言ってもいいほど。
不幸な役柄は多いが、決して二番煎じにはならない。さらに研きがかかった演技力は唯一無二。
ミステリアスでアンニュイな雰囲気、儚さ、悲しみ、苦しみ、そんな中で一時見せる“陽”の感情と表情。
佇まいも魅力も存在感も演技も、今杉咲花が魅せる事が出来る全て。頼もしく、圧巻の一言。
昨年度の国内主演女優賞は各映画賞によってバラつきあったが、独占すべきだった。
杉咲花の熱演も周りの助力あって。
俊英・戸田彬弘の演出力と脚本。『ある男』を彷彿させる題材だが、本作は本作ならではのオリジナリティーあり、ヒューマン・ミステリーとしても非常に面白い。
うだるような夏の暑さが作品雰囲気に一役買っている。
市子に好意を寄せ“手助け”した森永悠希が滲ませる哀れさ、宇野祥平の好助演、中村ゆりの毒親っぷり…。
そんな中、恋人役・若葉竜也の一途さに救われる。物語上の存在に於いても。
壮絶な過去。誰が彼女をこんな目に…?
罪を犯した。過酷な運命に翻弄されて。
それは許されない。
だからこんな私が幸せになっちゃいけない。
願っちゃいけないのか…?
幸せになっちゃいけないのか…?
長谷川との出会い。一緒に過ごした日々。そしてプロポーズ。
こんな私でも権利はある。
幸せになりたい。
幸せになったっていい。
流した涙はその表れ。
罪を償い、全ての苦しみから解放されたその日には、幸せになっていいんだよ。
市子は今何処に…?
再びTVからのニュース。そうでない事を。
川辺市子の幸せの為に。
見たあと疲れが。思ったこと、感想。
市子を見ていて不遇で環境の悪さとかをなんか可哀想やつらいって思ってみていたけど、鼻歌を聞いていると全然彼女の気持ちがわからないなと思った。
最初と最後の鼻歌では印象が違った。同じ場面だが最初は悲しい感じだと思った。最後は気分がよくて鼻歌歌ってると思った。
もちろん複雑で陽気とは違うけど、リラックスして歩いてるような感じ。
しては行けないことを躾けられるほど大人にみられてない市子は生きるためにしたことと割り切ってると思った。
成長とともに自然と常識は身についていってる。
高校のとき線路に死体を一緒に運んだ男子は気が滅入っていたが市子は切り替えてた。
妹の介助疲れで妹を殺すときも生存本能で仕方なかったと。
高校のときの恋人や今の恋人には悪い面を全く見せてなくて、大切な人には見られたくない。
高校のときの市子のストーカー男子のことはどうでもよくて扱いが全然違う。自分は好きじゃないけど相手は好いてくれててただ利用する。市子はちゃんと突き放してて、それでも来る彼を結局は利用するかたち。
自殺願望のある女性は市子に少し似ていて、自殺願望のある人ならいいかとなるのか利用する。
市子は殺人鬼とか快楽でやるわけではなくて、生きていくために仕方がなくなれば殺すことができる。
人殺しは絶対ダメがない。食べ物に困ってるから万引きするのを皆んな理解できると思うけど、その感じで殺人があると思った。
市子の母の内縁の夫?や高校のときのストーカー男子が嫌味で「悪魔」って言うけど、性欲に支配されて、下心で行動してたやつが偉そうに言えることは何もないとむかついた。
市子と違ってそこから離れることができる他人の男たちは関係をやめればいいだけ、見捨てるのがつらいかもしれないがこの不幸を耐えられない奴が依存になってる。
市子の周りの女性は嫌いだと思ったら離れてそれきりだし、ケーキ屋のキキちゃんはいい子で気になってるけど執着はしてこない。
女性の不幸には性がつきまとう。うんざり。
助けてくれるのは下心のあるやつばかり。
キキちゃんといたときはいい方に向かいそうだった。
戸籍や身分証明書などの社会のルールのために、人を殺すというルールに反してることをする。皮肉。不完全な世の中を感じた。生きるために人を殺すって究極で仕方ないこともあるかもしれない。
でも、社会のルールから外れてて書類のために殺さないといけなくなるのはつらいと思った。
途中で戸籍取るのを助けてくれる団体が出てきてよかった。そこに行き着くまでに後ろ暗いところができてる人も多くいるんだろう。
どうしたらいいかわからないけど、未成年はもっと早い段階でそんなに難しくなく手続きできたらいいと思った。一緒に暮らしてない親や親戚には未成年とはいえ情報を明かさないのを必須にして。
障害のある妹の介助・介護もヤングケアラーになってて、戸籍がもしあっても市子が疲れて殺すのは変わらないから、支援が必要だった。そういう助けが不十分なことの積み重ねが彼女の立場をなくした。
男性陣の配役、俳優がよかった。
市子はこういう人だって知った気になれなくて、杉咲さんもよかった。
ケーキが好きで屋台の焼きそばが好きでよその家のみそ汁の匂いが羨ましくて普通に暮らしたいだけで、無戸籍が生まれてからずっと付きまとってくるせいで幸せになるのが難しいつらさを思う。でもいくつかは戸籍ではなく貧しさのせい。
いろんな問題が入ってる話し。
ただ生きようとしてるのが伝わってくる。
月子が死んでなりすますことになったけど、やっぱり市子として行きたいと思ったのに、また身分を手に入れるために自殺幇助をして誰かになる。
また市子じゃなくなるの悲しい。
それまでを捨てたんだな。仕方なく。
あの鼻歌、月子を殺した日に台所で母親が鼻歌してたもので最後の場面と状況が被る。
哀しい
精一杯生きているのに DVや無戸籍などに ひとたびはまると 幸せに生きるのが こんなに 難しいことなのだろうかと 胸がしめつけられました。 「にじ」はもともと大好きな曲だけれど 市子の歌う「にじ」を聞いていると こんなに 哀しい歌だったかなと 思いました。 哀しすぎる過去は 忘れ去って 明日だけを見て 何とか 生きようとしているように 思えました。
過去の影と未来の光 - 『市子』が問いかける人生の真実
「市子」は、観る者の心に深く刻まれる印象的な作品です。 杉咲花演じる川辺市子の姿を通して、人生の複雑さと、過去から逃れようとする人間の葛藤が鮮やかに描かれています。 物語は、市子が恋人・長谷川義則(若葉竜也)からのプロポーズを受けた翌日、突如姿を消すところから始まります。 この展開は観客を一気に物語の中へ引き込み、市子の謎めいた過去への興味を掻き立てます。 長谷川の必死の捜索を通じて、市子の複雑な人生が徐々に明らかになっていきます。 彼女が違う名前を使っていたという事実は、彼女の人生が決して平坦ではなかったことを示唆し、観る者の心に不安と好奇心を同時に植え付けます。 杉咲花の演技は圧巻です。 過酷な境遇に翻弄されながらも、前を向いて生きようとする市子の姿を、繊細かつ力強く演じきっています。 彼女の表情や仕草の一つ一つが、市子の内面の葛藤を雄弁に物語ります。 若葉竜也演じる長谷川も、恋人の突然の失踪に戸惑いながらも、真実を追い求める姿が印象的です。 彼の演技を通して、愛する人の過去を受け入れることの難しさと大切さが伝わってきます。 この映画は、単なるミステリーを超えて、人間の成長と再生の物語として深みを持っています。 市子の過去を紐解いていく過程で、私たちは環境が人間の形成にいかに大きな影響を与えるかを考えさせられます。 同時に、この作品は負の連鎖を断ち切ることの可能性と重要性を示唆しています。 市子の生き方を通して、どんな環境に置かれても前を向いて生きることの大切さが伝わってきます。 しかし、その一方で、子供たちを正しい方向に導くべき大人の責任の重さも問いかけています。 誤った方向に進んでしまった大人たちが、子供たちにどのような影響を与えるのか、私たちに深い省察を促します。 「市子」は、観る者に多くの問いを投げかける作品です。 人生の複雑さ、過去との向き合い方、そして未来への希望。 これらのテーマを通じて、私たちに自身の人生と社会の在り方を考えさせてくれます。
全355件中、1~20件目を表示