人間の境界のレビュー・感想・評価
全49件中、41~49件目を表示
酷い、としか云いようがない。映画としてはドキュメンタリーと見紛う程の迫真性が凄いが、“2022年という今”の世界の一面をフィルムに残したという価値がある。
①本作を鑑賞した後、海外からの観光客も含め笑いさざめく人々で賑わう大阪ミナミを通って帰ったけれども、それもまた“今”の世界の一面であることも紛れの無い事実である。
②こんなことがいつまで続くのか、というより人類文明(明るくないけど)が有る限り。いつまでも続くと思うのだけれども、この現実を目の当たりにして自分だけは心を麻痺させたくはないと思う。
世界の今を知る
シリア人家族が亡命を求めベルラーシ経由でポーランド国境を渡る為に自国を脱出。そこで待ち受けていたのは国の確執と非人道的な国境警備隊。ふたつの国の間では遺体の押し付けと難民の戻し合いが。そしてその影にいるロシアの存在。行く手を阻まれた難民たちに手を差し伸べる支援活動家の行動には胸を打たれました。
この作品を通して世界の今を知る。
行き場のない難民を「人間兵器」扱いし、これでもかとばかりに容赦ない暴力。だがその中で心身共に疲弊していく警備隊もいる。上の命令にうんざりしながらも従うしかない現実。
難民、国境警備隊、支援活動家による三者からの視点が最終的にはシームレスに繋がっていて優しさという人間味ある終わり方がとても良かった。
【今作は、2021年シリア、アフガニスタン難民等に行われたベラルーシ政府による赦しがたい非人道的な政策に依り、ポーランドとベラルーシの国境で起きた出来事を描いた作品である。】
- フライヤーにある通り、2021年、ベラルーシ政府がEUを混乱されるために、多数の難民を受け入れる振りをして、ポーランド国境へ移送する。だが、ポーランド政府は受け入れを拒否し、彼らを強制的に送り返す。結果、国境で立ち往生する事になった難民の苦難をポーランドのアグニエシェカ監督が、迫真のタッチで描き出した作品。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・何の罪もないのに、ベラルーシの企みの犠牲になったシリア人の六人家族の姿が観ていてキツイ。
- ベラルーシの空港に着いた彼らは手配された車で親族のいる北欧を目指す。しかし、ベラルーシでは兵士に、ポーランドでは国境警備隊に捕まり、両国を強制的に言ったり来たりするうちに、バラバラになって行くのである。-
- 1番可哀想なのは、男の子が底なし沼で溺死するシーンである。-
・一方、彼らを支援するために立ち上がった活動家たちの姿も交えて描かれる所も、見所である。活動家たちも一枚岩ではない所にリアリティーを感じるのである。が、命掛けである事には違いない。特に精神科医でもある女性の行為には、敬服する。-
・ポーランド国境警備隊員への、洗脳的な教育シーンも恐ろしい。
・ポーランド国境警備隊員が、死体をベラルーシ側に放り投げるシーン等は"難民の人間性をどう考えているのだ!"と脳内に怒りがわくが、一方では人間性のある男が懊悩する姿も描かれる。彼は難民の入国を見て見ぬ振りをして、難民をポーランドに入れるシーン等。-
<半年後、ポーランドに来たウクライナ難民をポーランド国境警備隊(懊悩していた男に対し、女性隊員が言う言葉が印象的である。)が温かく迎えるラストシーンに、アグニエシュカ監督の意図が垣間見得る作品である。
それにしても、ベラルーシ政府が行った"人間兵器"としての意図的な難民受け入れは、赦しがたい所業である。>
人間の境界 観ていて非常に疲れる作品。(褒め言葉) まずは国境を越...
人間の境界
観ていて非常に疲れる作品。(褒め言葉)
まずは国境を越える難民をまるで弄ぶかの様なこの様な扱いをしている現実を知るきっかけとなる作品であり、人間のもつ冷酷さを前半はこれでもかというくらい伝えさせられる。
後半にはそれでも人間が持つ優しさをしっかり描かれ少なからず光や救いがきちんと描かれていて見終わった後の後味は良い。
難民を何でもかんでも受け入れてしまえばその問題ももちろんあるが、一つの社会問題に触れる事のできる、学び考えを与えてくれる作品であった。
個人的な2024年洋画新作鑑賞ランキング
1 ネクスト・ゴール・ウィンズ 4.8
2 Firebird ファイアバード 4.8
3 コット、はじまりの夏 4.7
4 アイアンクロー 4.7
5 オッペンハイマー 4.7
6 クレオの夏休み(横浜フランス映画祭2024) 4.7
7 コンセント 同意(横浜フランス映画祭2024) 4.7
8 ARGYLLE/アーガイル 4.7
9 アリバイ・ドット・コム2 ウェディング・ミッション4.5
10 バティモン5 望まれざる者(横浜フランス映画祭2024) 4.5
11 システム・クラッシャー 4.5
12 デューン 砂の惑星 PART2 4.5
13 愛する時(横浜フランス映画祭2024) 4.5
14 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ 4.5
15 アクアマン/失われた王国 4.5
16 ニューヨーク・オールド・アパートメント4.3
17 マリア 怒りの娘 4.0
18 異人たち 3.7
19 ミツバチと私 3.6
20 ブリックレイヤー 3.5
21 ネネスーパースター(原題) Neneh Superstar (横浜フランス映画祭2024) 3.4
22 オーメン:ザ・ファースト 3.4
23 RHEINGOLD ラインゴールド 3.3
24 12日の殺人 3.3
25 インフィニティ・プール 3.3
26 ゴーストバスターズ フローズン・サマー 3.2
27 プリシラ 3.2
28 コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話- 3.2
29 コヴェナント/約束の救出 3.0
30 僕らの世界が交わるまで3.0
31 ゴジラ×コング 新たなる帝国 3.0
32 ブルックリンでオペラを 3.0
33 ストリートダンサー 3.0
34 カラーパープル 2.9
35 弟は僕のヒーロー 2.8
36 RED SHOES レッド・シューズ 2.8
37 画家ボナール ピエールとマルト(横浜フランス映画祭2024) 2.7
38 Vermines(横浜フランス映画祭2024) 2.6
39 関心領域 2.6
40 タイガー 裏切りのスパイ 2.5
41 ジャンプ、ダーリン 2.5
42 人間の境界 2.4
43 エクスペンダブルズ ニューブラッド 2.3
44 けもの(仮題)La Bête(横浜フランス映画祭2024) 2.3
45 マダム・ウェブ 2.3
46 落下の解剖学 2.3
47 ダム・マネー ウォール街を狙え! 2.3
48 哀れなるものたち 2.3
49 殺人鬼の存在証明 2.3
50 エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 2.3
51 ザ・エクスチェンジ 2.2
52 DOGMAN ドッグマン 2.2
53 パスト ライブス/再会 2.2
54 リトル・エッラ 2.2
55 パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ 2.2
56 ボーはおそれている 2.2
57 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 2.2
58 瞳をとじて 2.2
59 ゴースト・トロピック 2.2
60 葬送のカーネーション 2.2
61 Here ヒア 2.1
62 美しき仕事 4Kレストア版(横浜フランス映画祭2024) 2.0
63 ハンテッド 狩られる夜 2.0
64 サウンド・オブ・サイレンス 2.0
65 ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ
66 ゴッドランド GODLAND 2.0
67 キラー・ナマケモノ 1.9
68 ザ・タワー 1.9
69 ポーカー・フェイス/裏切りのカード 1.9
70 マンティコア 怪物 1.9
71 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断(イタリア映画祭2024) 1.9
72 アバウト・ライフ 幸せの選択肢 1.8
73 サン・セバスチャンへ、ようこそ 1.8
74 デストラップ 狼狩り 1.6
75 No.10 1.5
76 VESPER/ヴェスパー 1.5
77 フィスト・オブ・ザ・コンドル 0.5
番外
ソウルフル・ワールド 5.0
QUEEN ROCK MONTREAL 5.0
あの夏のルカ 5.0
私ときどきレッサーパンダ 5.0
FLY! フライ! 5.0
犯罪都市 NO WAY OUT 4.5
DUNE デューン 砂の惑星 リバイバル 4.0
バジュランギおじさんと、小さな迷子 リバイバル 2.0
メメント リバイバル 2.0
π〈パイ〉 デジタルリマスター 2.0
貴公子 1.5
ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター版 1.5
「不確かな情報」に一縷の望みを託す
のほほんとGWを過ごしていることがどれだけ幸せなのか。誰かに命令なぞされず、自分の考えで行動できることがどれだけ幸せなのか。
束縛のない自由を掴むことは難しい。
モノクロのスクリーン越し受ける、国境警備隊の追手から逃げる鬼気迫る緊張感が半端なかった。
人権とは何か?
非常に見応えがあり、お勧め作品です。
我々島国で育った人間が普段感じることのできない国境。そして人権について描かれています。
今こうしている間にも、様々な人たちが暴力に直面している現実を身直に感じることができました。
固いことばかり書いてしまいましたが、映像作品として非常に良質で、ストーリーも説得力があります。
わずかに0.5点マイナスなのは、もう一度観たいか?と問われると、そこまでは思わない。というだけです。
骨太な作品をぜひご堪能ください。
なぜダメなのか。なぜ?
幸せになれる土地を求めて移民になったはずなのに、それとは程遠い深い森に囲われて動けない。
当事者は勿論、観客もなぜそうなっているのか全くわからないまま、暴力的に二国間をピンポンさせられる大混乱から逃れられない苦しみが続く。
危険から逃れるために移民になったのに更に危険で不安定な場所に居続けなければならない、そして何故そうしなければならないのかが全くわからない。
なぜ?なぜ!?なぜ先に進めないの??
救いの手も届く範囲が決まっているので、助ける方も助けられる方もその範囲にいる時でないと行動すらおこせないので、運にかけるしかない。
敵のように見える国境警備隊の人たちも全員が任務に納得をしているようではなかった。どんなものでも見慣れるのかもしれないけど、どんな事でも必死に救いを求めている人を冷たくあしらうのは、人によってはやはり胸が痛むだろう。
倫理観も人によって違うのは、よかった事なのか、もうそれすら疑問に思ってしまう出来事が続く。
アフタートークでは、このピンポンにはどんな意図があるのかについて、それをみる側によって見え方が違うと教わった。
ポーランド側にしたら、彼らを兵器として使うハイブリッド攻撃であり、移民を送り込むことによって国を不安定化させているので送り返しているということらしい。
(ベラルーシ側はきちんと覚えてないので割愛)
難民は国際法的に不法に入っても送り返したら行けない国際ルールがあるので、ピンポン状態は非人道的、酷いことしてるという考えはあるから、国境付近は立ち入り禁止にしたとのことでした。
ラストの一幕がこの監督が一番言いたかったことが詰まっている、との話でしたが、なるほどウクライナは全面的に積極的にヘルプの手を回し、生活の補助までしているのに、ベラルーシからの移民との違いにただ疑問と胸の痛みを感じました。
今まだ世の中で起こっている事らしいので、ぜひ知って欲しいと思います。
人間兵器
2024年4月21日
映画 #人間の境界 (2023年)鑑賞
「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じてやってきた難民家族の運命は
ドキュメンタリーのようなリアル感に溢れる作品でした
@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございました
(オンライン試写会は関係なくネタバレ扱い/関連知識含)この映画の背景となる知識には鑑賞前に目を通したほうが良い
今年159本目(合計1,251本目/今月(2024年4月度)33本目)。
(前の作品 「ヘレディタリー 継承」→この作品「人間の境界」→次の作品「マリウポリの20日間」)
初夏を思わせるこの時期にオンライン試写会に招いてくださったfansvoiceさまに感謝を。ありがとうございます。
さて、この映画は分野的には「映画」であるし、toho系での放映の予定のようですが、その中でも「あえてどれにいれるか」なら、実際にはドキュメンタリー形式ではないものの「ドキュメンタリー映画」ということになろうと思います。
日本では、ロシアのウクライナ侵攻にかくれてこの「ポーランドとベラルーシの国境問題」が報道されることがきわめて少なく、このことを理解するにはかなりの知識量が必要です。幸いにも「クルド人」という語からある程度「ひもといて」見ることができるのは、ひごろから外国人問題に興味関心をよせる一人の行政書士の資格持ちという「地の利」なのだろういうところです。
ドキュメンタリー映画なので「映画という映画」のストーリーがあまり存在せず、「各自で考えてね」という作りになっています。また、当該国ほかでは日本の戦中戦前のように「検閲」が残る国もあり、さすがに「これじゃ放映できない」ということでやり直しを命じられ、この映画で放映されるほどソフトに「作り変えて」放映できているというのが、この問題の根深さといったところです。
かなりの知識を要する問題ですので、説明も入れました。
-------------------------------------------------
(減点0.2/見るためにかなりの知識を要する)
おそらく、高校世界史あたりでは無理で、日本で外国人問題といえば行政書士の取次がありますが、実際にポーランド・ベラルーシのこの問題を扱うわけではなく(そんな場所に事務所を構えるわけではなく)、かなりの知識を要する映画です。換言すれば「NHKなりニュースなりにいくらアンテナをはっているか」の勝負になっている部分がどうしてもあります。
-------------------------------------------------
(減点なし/参考/この映画の背景)
▼ ベラルーシについて
ベラルーシは外国人(移民)受け入れが一時期盛んでした。この中には、いわゆるクルド人も含まれます。一方で、ベラルーシは「欧州最後の独裁国家」と称されるように大統領がいて、その大統領の考え方一つで次々に政策が変わっていき、「移民を利用して事実上の領土を広げよう」という考え方をもっていました。また移民(特にクルド人)も「真の自由が欲しかった」(ベラルーシは受け入れだけは盛んだったものの、国として成立するのか怪しいくらいに経済力が貧しい)事情があり、ポーランドを目指すことになります。これがこの映画の「ポーランド」の意味ですが、ポーランドを経てドイツ(ドイツは移民に対してはきわめて寛容な国として知られる)を経るという構想が一般的でした(ドイツはポーランドを国境で接しているため、ポーランド経由でないといけない)
▼ ロシアとベラルーシの関係
ロシアを西洋の国扱いとするかは難しいですが、地理上、北側に存在するロシアにとっては、ヨーロッパに近い国にロシアの「親ロ(=ロシア)国」を作っておくことはロシアにとっても好ましいことで、また独裁で知られるベラルーシはヨーロッパから経済制裁を受けてもロシアという大国から多かれ少なかれ援助が得られるという事情もあり、この2国は基本的に「仲良し」です。これが、この問題で起きた事情にロシアなどの大国が介入していない「もう一つの」理由です(もちろん、ロシア・ウクライナ戦争が勃発していた中では、ロシアはそれどころではなかった、というのも理由)。
▼ ポーランドの考え方とベラルーシの考え方
ポーランドも、真に困っている難民までも排除するという立場に立っていません。実際、ポーランドも第二次世界大戦以降、いろいろな紆余曲折を経た国だからです。しかし、ベラルーシが難民を「募って」(ここでは、クルド人等を指す)一気にポーランドに「攻め入る」(=国境を超えるような行為をする)のは、もはや領土侵犯でもあり、それには強く対抗したという事情もあります。これが映画で描かれている事情です。
一方、それなら最初に招いたベラルーシが責任を取ればよいのではということになりましょうが、決して豊かな国でもないベラルーシで、そもそも「不純な目的をもって」募って「ポーランドの国境を破ってやろう」などと考えていたわけですから、失敗したら救助しますよということにならず、映画のように「どちらの国からも見放される」という悲劇が起きてしまったのです。
日本ではクルド人問題といえは一部の地域に多く住まれており、中には過激な行為を取る方もいらっしゃいますが、それは「クルド人全体が危ない存在だ」ということを意味「しません」(このことは「クルド人」を「何人(じん)」に置き換えても成り立つ)。日本から見たときには2つの国の領土問題争いとして描かれているこの映画ですが、日本にも適法に在住している方も少なくないクルド人問題を描いた作品ということで、この点にアンテナを張っている方にはおすすめです。
全49件中、41~49件目を表示