「人為的に引かれた線も、自然的に引かれた線も線も、越えるのは命懸けになっている」人間の境界 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
人為的に引かれた線も、自然的に引かれた線も線も、越えるのは命懸けになっている
2025.5.21 字幕 京都シネマ
2023年のポーランド&フランス&チェコ&ベルギー合作の映画(152分、G)
実在する国境「Green Border」で起きていることを再現した社会問題提起映画
監督はアグニエシュカ・ホランド
脚本はマチェイ・ビスク&ガブリエラ・ワザルキェヴチ&アグニエシュカ・ホランド
原題は『Zielona Granica』、英題は『Green Border』で「ポーランド・ベラルーシ間にある森林地帯」にある国境線のこと
物語は4章+エピローグによって構成されている
第1章は「THE FAMILY(家族)」として、シリア人の難民一家がミンスク空港に降り立ち、アフガニスタン女性のレイラ(ベヒ・ジャナティ)と行動を共にする様子が描かれる
第2章は「THE BORDER GUARD(国境警備隊)」として、ベラルーシとポーランドの国境警備隊を描き、配属になったばかりのヤネク(トマシュ・ブウォソク)の日常が描かれる
第3章は「THE ACTIVISTS(活動家たち)」として、非政府活動家のマルタ(モニカ・フラジェツク)たちの活動が描かれていく
第4章は「JULIA(ユリア)」として、精神科医のユリア(マヤ・オスタシェフスカ)が患者ボグダン(Maciej Stuhr)との診察の様子と、その裏で森を抜けた人を助け、マルタの活動に感化されていく様子が紡がれる
そして、エピローグとして、2022年時点の「ポーランド・ウクライナ間の国境線の現状」を描いていく流れになっていた
前半で登場するバシール(ジャラル・アルタウィル)たちは、ベラルーシからポーランドに入ったものの追い返されてしまい、最終的には目的地に近づくところで終わりを告げ、その渦中にて、マルタ、ヤネク、ユリアたちと出会っていく流れになっている
そこまでに犠牲はたくさんあって、バシールの父(アル・ラッシ・モハメッド)は抵抗して殺され、息子ヌール(Taim Ajjan)が泥沼にハマって死んでしまう
これらの過酷すぎる過程が赤裸々に紡がれていく
人権活動家のリアル、その運動に参加しようとする一般人、任務に嫌気を差して不法入国を見逃す警備隊も登場する
ラスト付近でバシールを見逃したヤネクが、最後の国境にて「あの時もこれぐらい優しければ」と言われるのも皮肉が効いているように思えた
映画はかなり疲れる内容で、人物も多く、再登場の時に把握するのが難しい
主要人物は数人なのだが、視点が切り替わりまくるので、色で識別できないのは辛いところかもしれません
いずれにせよ、公開後に色々と問題になった作品で、ほぼドキュメンタリーに見えるフィクションなので誤解を招く部分もあるのかもしれない
それでも、もっと過激なことも行われていても、映像にするのは無理というラインはあると思うので、どちらかと言えばソフトに描かれていたのではないだろうか
国境を超えてくる人間を兵器とまで言ってしまうのは無茶だと思うが、この仕事に従事し、国を守るという自身の任務を肯定するためのバランスのように思える
それでも適性のない人間は徹することができず、この言葉に感化され、自身の行動を正当化できた時に、人間としてのボーダーラインを超えてしまうのかな、と感じた