「【今作は、2021年シリア、アフガニスタン難民等に行われたベラルーシ政府による赦しがたい非人道的な政策に依り、ポーランドとベラルーシの国境で起きた出来事を描いた作品である。】」人間の境界 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、2021年シリア、アフガニスタン難民等に行われたベラルーシ政府による赦しがたい非人道的な政策に依り、ポーランドとベラルーシの国境で起きた出来事を描いた作品である。】
- フライヤーにある通り、2021年、ベラルーシ政府がEUを混乱されるために、多数の難民を受け入れる振りをして、ポーランド国境へ移送する。だが、ポーランド政府は受け入れを拒否し、彼らを強制的に送り返す。結果、国境で立ち往生する事になった難民の苦難をポーランドのアグニエシェカ監督が、迫真のタッチで描き出した作品。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・何の罪もないのに、ベラルーシの企みの犠牲になったシリア人の六人家族の姿が観ていてキツイ。
- ベラルーシの空港に着いた彼らは手配された車で親族のいる北欧を目指す。しかし、ベラルーシでは兵士に、ポーランドでは国境警備隊に捕まり、両国を強制的に言ったり来たりするうちに、バラバラになって行くのである。-
- 1番可哀想なのは、男の子が底なし沼で溺死するシーンである。-
・一方、彼らを支援するために立ち上がった活動家たちの姿も交えて描かれる所も、見所である。活動家たちも一枚岩ではない所にリアリティーを感じるのである。が、命掛けである事には違いない。特に精神科医でもある女性の行為には、敬服する。-
・ポーランド国境警備隊員への、洗脳的な教育シーンも恐ろしい。
・ポーランド国境警備隊員が、死体をベラルーシ側に放り投げるシーン等は"難民の人間性をどう考えているのだ!"と脳内に怒りがわくが、一方では人間性のある男が懊悩する姿も描かれる。彼は難民の入国を見て見ぬ振りをして、難民をポーランドに入れるシーン等。-
<半年後、ポーランドに来たウクライナ難民をポーランド国境警備隊(懊悩していた男に対し、女性隊員が言う言葉が印象的である。)が温かく迎えるラストシーンに、アグニエシュカ監督の意図が垣間見得る作品である。
それにしても、ベラルーシ政府が行った"人間兵器"としての意図的な難民受け入れは、赦しがたい所業である。>