「凍った心が溶けていく」あの歌を憶えている chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)
凍った心が溶けていく
予期しない出会いが、閉ざされた心に変化をもたらす シングルマザーで辛い記憶に苦しんでいたシルヴィアが、不審な行動をするソールを見捨てなかったのは、彼女がソーシャルワーカーだったからであろうか 支援を要する人たちを援助するソーシャルワーカーだって、決して強い心を持っているわけではない 苦しい記憶や日々の生活と闘っている彼女にはソールを見捨てられない物を感じたのであろう 若年性認知症を患うソールにしても、庇護される身内が存在することは結構なことであるが、若いからこそ一方的に庇護される側の存在に追いやられることに苦しさを感じていたに違いない 映画の話だけではなく、こういった一方的に庇護される関係にある障がい者・未成年者・高齢者も、守られていることに感謝をしながらも、自分自身の人生を取り戻したい、という思いは日常のことだろう 認知症だから「カードを取り上げる」「部屋に閉じ込める」「おかしなことをしないか見張る」、家族の苦労を理解しつつも、ソールの思いもよく伝わってきた
シルヴィアの忘れたい過去に、ソールの不器用なまっすぐな思いが伝わっていく過程が、人生後半の時期にあっても瑞々しかった それでも忘れたい過去と、直前の記憶が損なわれている病気と、2人はこれからも向き合っていかなくてはならない それが一人で闘うのと、相手を支えながら自らも闘うのは大きな違いがある、という希望の結末でした
「青い影」もとてもよかった(3月6日 イオンシネマ和歌山 にて鑑賞)
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