「忘れてしまいたい記憶・忘れたくない記憶」あの歌を憶えている jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れてしまいたい記憶・忘れたくない記憶
原題は「Memory(記憶)」である。男は記憶を失っていく。女は思い出したくない・忘れたい記憶を抱えている。
この対比がお互いを引き寄せ癒して行くのだが、男(ソール)の背景を掘り下げていないために物語の厚みにやや欠ける。例えばコーヒーショップで店員がソールに「いつものですね?」と問うのだが、結局何を注文したのかはわからない。たとえばカフェオレが出てきたとしたら、ソールの人柄が少しでも想像できそうなものだ。ただ「思い出せない」という描写だけが独り歩きする物足りなさも感じた。
海外では子どもに聞かせたくない話題は極力避け、また反対に惜しげもなく共有する文化があるが、子どもであっても信頼し一人の人間として対等に対峙する姿勢は好ましい。
主演はもちろん、脇を固めた俳優たちもよく、窓辺からの光や陰影のある公園、そしてストーリーが進むにつれて明るい色調に変化していくカメラも良かった。
サースガードは「ボーイズ・ドント・クライ」ではチンピラ野郎を、「ブルー・ジャスミン」ではハイソな議員を、またつい先日は「セプテンバー5」で敏腕テレビマンを演じたりとその演技の幅は広く、もっと日本でも評価されるべきだろう。
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