「海の男」潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
海の男
"夫と子が旅行中に映画見まくるゾ"
第三弾は
「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」
あんずちゃんからインターバル15分で本作に臨んだ!
気持ちと頭を切り替えて一生懸命に観ました。
レイトショー。
大きなハコでしたが私と男性2人だけ。
こちらも海の底にいるかのよう。
没入出来る最高の環境で鑑賞出来ました。
(お客さん少ないのが残念だし心配ですが。。夏休みでうるさい時が多かったから助かったのが本音(°▽°))
戦争って。。愛する家族を守るため、友達を守るため、コミュニティを守るため、そして国を守るため。
宗教の違い、民族・文化の違い。
領土・資源の奪い合いや政権への不満など、様々な背景があるにせよ、
戦地に赴く人達も"個人"として見ると、私と同じ"人間"なのだ。
"敵"となる人間を殺したいわけではない。
戦闘員だから、敵の命を奪う事はやむなし。そして自己犠牲の精神。。
うん。そうなんだろう。でも、でも、、
イタリア海軍の潜水艦「コマンダンテ」は敵対するイギリス軍への物資供給を断つために大西洋へ向かっていた。
その途中で謎の貨物船と遭遇する。
先制攻撃をされた為、急遽戦闘態勢に入り、貨物船を撃沈させるが、その際に仲間を失った。
しかし海上にはその貨物船の乗組員の姿が。。
コマンダンテのサルヴァトーレ艦長は生き残った彼らを安全な港へ運ぶために
イギリス軍の支配海域を通る決断を下す。
しかしその選択は自らも部下達をも危険に晒す決断だった。
撃沈した貨物船は中立国ベルギーの貨物船カバロだった。
そして、その積荷とそれが意味する事!!
全てを承知で、民間人の命を守りたいと行動に移すサルヴァトーレ艦長。
「イタリア人だから」
人間の善性を保てていたサルヴァトーレ艦長と乗組員。
軍人の前に、誇り高き決断を下せる人間であり、海の男でした。
ラストのクレジットで実話ベースだとわかる。
その後を知ると胸が痛みます。
美談なんでしょう。感動的なエピソードです。
しかし、戦争という圧倒的な悲劇の中では、どうしても辛くて悲しいものになってしまう。
戦下の美談はもう聞きたくないんだよ。
泣けてくる。泣くしかないじゃん。
映画や本。
どんな角度で切り取って伝えてくれても戦争がなくならない現実。
アフガニスタン紛争、クルド・トルコ紛争、ロシア・ウクライナ戦争。。
挙げればキリがない。
自分の無力さに落ち込むしかないのだが、この様な作品を観て、考える事、子に伝える事は続けて行かなければと思うのです。
潜水中の艦内の圧迫感、閉塞感。
こちらも息苦しくなるほどでした。
タバコや汗の匂いが充満しているであろうその空間もすぐにイメージ出来ました。
そして「絶対的に逃げられない」恐怖がひしひしと伝わり、自分の心臓の音が聞こえてくるようでした。
そんな過酷な状況下での唯一の楽しみがジジーノの作る食事だったのだろう。
コマンダンテ、カバロ乗組員。
互いに葛藤があるにせよ、ポテトフライで繋がるシーンは心に沁みたな。。
「ファシスト!」なんてよく言えたな。
しかし、父親のように頬を張ったサルヴァトーレ艦長の想い。。「海の男だ」 彼らに伝わっていると信じたい。
巨大な潜水艦でさえも小舟に見えてしまう海上シーン。
壮大な海の美しさと恐ろしさも見応えがありました。
私は本作は"潜水艦もの"というよりもヒューマンドラマだと感じました。
攻撃を一旦中止したイギリス軍の艦長も、壮大な海の上では、軍人の前に1人の海の男であり、彼も又誇り高き決断が出来る人間でした。
だからこそ、サルヴァトーレ艦長や乗組員を殺してしまった戦争が本当に憎い!
戦争は絶対に反対です!!
それにしても邦題に「誇り高き決断」を付けてしまった事。
本作の重要なテーマなのに何故に!と、残念な気持ちです。