「俺を見てくれ、世界!」マエストロ その音楽と愛と サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
俺を見てくれ、世界!
レナード・バーンスタインの伝記映画というよりも、ブラッドリー・クーパーの自慢映画にしか見えなかった。「アリー スター誕生」で世間に高く評価されたからと、天狗になっているのかな。演出力は高いし、映像も素晴らしかったけど、脚本がお粗末過ぎる。監督としての才能はあるかもしれないけど、執筆は向いてないんじゃないかな。
この映画はレナードの何を伝えたかったのか。
最後まで見て彼に抱いた感想は、男とタバコを手放すことが出来ない、音楽センスは一流でも人としては二流の人間。実際は違うんだろうけど、本作からはそんな風にしか見えなかった。そもそも、ブラッドリーは彼に愛があったのか?レナードの何が凄かったのか、この映画をわざわざ作ったのにはどんな意味があったのか。脚本からはその答えが見い出せなかった。
中身は酷いけど、映像や音楽は最高品質。
モノクロ映像からカラーになる瞬間はグッと引き込まれる。とにかく見せ方が上手い。ビジュアルに全振りしているだけあって、映像に関しては大きな拍手を送りたい。Netflixで配信されるのに、映画館で観た甲斐がありました。音楽だって、これ以上ないほどカッコイイ。肝心なところのカメラワークがイマイチだから、もっと心揺さぶられるものを作れたと思う。でも、すごい。
今年の映画で例えるなら、「TAR」×「ナポレオン」。
指揮者として頂点に立ちながら、それ以外のことはとても不器用。その世界の前線を走る人間にしか分からない、孤独が描かれているという部分でTARと共通している。しかしながら、TARほど人物描写が細かくないし、主人公の才能を感じなかった。また、ナポレオンとは歴史に名を残す人物の恋模様を描く作品として、酷似している。だが、こちらも色々と浅はか。ナポレオンほど追求されている作品でもない。同じテーマを扱っているのに、どれも下位互換。求めすぎちゃったかな。
映画のテイストはめちゃくちゃ好みなだけに、すごく残念。同じキャストでスコセッシかスピルバーグが撮ったらどうなったか気になる。ストーリーとは別の要素でクオリティが高いので、ハマる人にはハマるかと。そんなことより、ブラッドリー・クーパーが年々ハリソン・フォードに近付いているように見えるのは自分だけ?