けものがいるのレビュー・感想・評価
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A292 レア・セドゥ三段変化
2025年公開
AIがどうのこうの言うのでそちらの方向で構えたが
あまり関係なく思想的な考えが漂う。
しかーしパンフ読むまでぜんぜーんわからんかった。
途中までレア・セドゥ全開だったので
退屈はしなかったが。
髪型含めて衣装デザインも素敵
ハトポッポも存在感が迫ってくるわけでもなく中途半端。
人形の存在意義もワタシには届かない。
「ゆきがふる♪あなたはこない♪」なんでやねん!
1980 1972 1963 イマイチついていけない。
にしても耳に注入はやめてくれー
クライムオブザヒューチャーと感じが似てない?
本作のレア・セドゥはわが愛しの門脇麦ちゃんと
雰囲気が似てました(独断)
60点
鑑賞 2025年4月28日 アップリンク京都
パンフ購入
配給 セテラ・インターナショナル
追伸
あと10分やからそろそろエンディングクレジットやな
と思うと上映時間ギリギリまで映画は進む。
ワッツ?と思っていたら写メ撮ってました。
◇心理主義の狭苦しい閉塞感
19世紀後半から20世紀初頭の英米文学者ヘンリー・ジェイムズの中編小説「密林の獣」を翻案した物語です。
ヘンリー・ジェイムズといえば『#ねじの回転』。私の印象は、学生時代に教材で取り上げられた時の「わけわからん」という居心地悪い後味が長く尾を引いてます。(作品のせいなのか、授業のせいなのか不明ですが、、)
ヘンリー・ジェイムズという作家は、心理主義に分類されるようです。心理主義?普遍的な価値は存在せず、価値は同一人物においてすら不断に変化し続ける、という考え方のようです。
この映画、近未来SFを出発点に時代を行き来する世界を舞台にして、人間の「感情」とか「気持ち」のあり方を映像化しようと試みてます。
前衛的な世界観や実験的な映像作品には引き込まれるような楽しみを感じる私ですが、この作品の閉塞感というか、広がりを感じないというか、、微妙でした。
「人間の感情を削除する」という設定そのものが取り止めもない曖昧性の渦中に引き立てられるのでしょうか。そもそも感情そのものの形が不規則に変化するものであるはず。
変化といえば、一つの作品で女優レア・セドゥの謎めいた多面的な表情変化を楽しめます。美しさ、素朴さ、視線の魅力、妖艶にうっとりとする感覚、その感覚機能の神秘性を自らの意識の中に感じるところに「けものがいる」のかもしれません。
陳腐だわ
Dの継承?ワンピースか?
2044年重要な仕事を得るためには感情が不要とのことで、クローネンバーグ風特殊装置に入り浄化。
1910年と2014年に意識が飛び、1910年で惹かれあった同じ男が2014年ではキモヲタ殺人鬼となり殺そうとしてくるという、時代が交錯し、同じ役者や登場人物が別の者として現れるというわかりにくさ満載のリンチ感。
まさかと思うが2人のデビッド(監督)へのオマージュとか?
監督のベルトラン・ボネロの事は全く知らなかったが、あの怪作にしてお気に入りの映画「チタン」に出演してたそう。
画像調べたら少し若い頃のポランスキー似(個人の見解です)。
時空を超えた壮大なSF作品を大作にせず、人間の感情を蔑ろにする管理社会への警鐘?をテーマに役者の演技と監督の演出で魅せる大人向けのフランス映画らしい作品だが、いかんせん抑揚がなくわかりにくいし長過ぎる。
これが許される監督になるにはまだまだ数年掛かるかな。
レア・セドゥの独特な雰囲気とジョージ・マッケイ演じる童貞野郎が堪らなく愛おしく感じた。
構造が複雑で難しかったです。
ごめんなさい。ラストでスマホを出してしまった。
SFという謳い文句だが、S(サイエンス)Fって言うより輪廻転生っぽいお話しですなあ。
レア・セドゥって美人でも可愛くもないが独特の存在感があって(邦画だと安藤サクラかな)こう言う役にはハマっていた。
エンドクレジットで慌ててスマホ出しちゃいました。マナー違反ギリかなと思ったがあれは出すでしょう。
美女と(野獣ならぬ)けもの
独創的な宇宙にすっかりハマってしまいました。
3つの時代(1910、2014、2044)にわたるリインカーネーション。
前半はベルエポックと近未来のパリを中心にゆったりと時空が交差します。そして2014年のロスの地震の日に雰囲気が一変し、リンチワールドの装いをまとい始めます。
「けもの」の解釈は難解で、災害、科学の暴走、人間の感情など様々に捉えられそうですが、ガブリエルの表情を見ていると、「見えているのに掴めないもどかしさみたいな何か」という気がしました(すみません、うまく説明できません)。
本作は何と言ってもレア・セドウを鑑賞する映画でもあります。
AIやアンドロイド女子、隣家のおっさんまで魅了してしまう一方で、二度も「クソ女!」と罵倒されてしまいます。さらにミッション:インポッシブルばりの水中アクションまで見せてくれます。レア・セドゥの魅力にこちらの「感情」が骨抜きにされてしまいました。
霊媒師役でエリナ・レーヴェンソンが出ていました。ハル・ハートリー監督のミューズが健在で嬉しかったです。
ノーモア映画泥棒対策に徹していたので、QRコードを拾い損ねました。果たしてここに「けもの」が潜んでいたのでしょうか?
雪は降るあなたは来ない
”けもの”とは
予告を目にすることはなかったのですが、作品紹介サイトのおもしろそうなあらすじに惹かれて公開初日に鑑賞してきました。同日公開の「#真相をお話しします」に続けてのハシゴ鑑賞だったため、集中力がやや落ちた状態での鑑賞となってしまいました。
ストーリーは、AIの管理が進み、社会の重要な仕事を全うするために人間の感情は不要となった近未来、仕事を求める女性ガブリエルは、ためらいながらも感情を消去するための”浄化”と呼ばれるプログラムを受け、自身の前世やさらにその先へとさかのぼり、当時から何度も出会いを繰り返していた男性ルイとの関係を紐解いていくというもの。
…と概要をまとめてみたものの、よく理解できていません。はっきり言ってこれは難しいです。誰か解説してください。集中力が落ちていたせいもありますが、事前にあらすじを読んでいなかったら、設定さえもわからず、序盤から迷子になっていた自信があります。
”人間に感情は不要”という考えが一般的になった社会において、ガブリエルが「浄化」をためらったのは、心の中にルイの存在があったからでしょうか。転生を繰り返してもなお忘れることのできないルイ、消すことのできない感情。それを失いたくなかったのではないでしょうか。
それなのに、そのルイ自身が浄化を受け入れ、あまつさえガブリエルにも浄化を勧めるという衝撃。ガブリエルの最後の絶叫は、彼女の感じた絶望でしょうか。その心情を思うといたたまれない思いがします。
タイトルにある「けもの」とは、どうしても手放すことのできない、人としての本能的な感情を指しているのでしょうか。それは、ガブリエルのように愛しい人を思う愛情や、ルイの内で燻りつづける性衝動や愛への渇望でしょうか。どちらも無にすることも抑えこむことも難しく、飼い慣らすことのできない「けもの」のような存在であると言えるかもしれません。
一方で、人間の対比として人形が描かれていたように感じます。人形は、人の姿形はしていても、作り手の意のままに生み出される、心をもたない作り物です。AIが加速進化する現代社会における人間のメタファーとして描かれているような気がします。そして、画一的なそれらが一斉に火に包まれる様子は、人類への警鐘のようにも見えてきます。
いろいろ難しくて、とても理解できたとは言えませんが、ひとつだけはっきりしています。それは、レア・セドゥが美しいということ!それだけも見る価値があるというものです。
主演はレア・セドゥで、さまざまな姿の彼女を堪能できます。脇を固めるのは、ジョージ・マッケイ、ガスラジー・マランダ、ダーシャ・ネクラソワ、マルタン・スカリ、エリナ・レーベンソンら。
アステロイド・シティ以来の玉砕
中々理解が進まない作品はたまにありますが、本作は2023年に観た「アステロイド・シティ」以来、1年半ぶりに完全に白旗を上げざるをえないほどに分からない作品でした。
内容は、今から約20年後、2044年の近未来を描いたもの。AI技術が進化して世の中の仕事の殆どをAIがカバーしているため、人間の仕事が極端に少なくなった社会の”矛盾”を突いているもののようでした。そのディストピア社会では、人間が職を得るには”感情”を消去する必要があり、主人公ガブリエル(レア・セドゥ)がその処置を受ける過程を描いていた訳ですが、ここからが難解もいいところ。ガブリエルは、その処置の過程で100年くらい前の世界をはじめ、過去に転生する夢(?)を見ます。この中でルイ(ジョージ・マッケイ)との出会いを繰り返していましたが、一体これらの出来事が何を意味するのか、全くピンと来ませんでした。
また、題名にも登場する「けもの」ですが、さぞかし恐ろしい「けもの」が登場すると思っていたものの、実際は鳩ポッポ。確かに鳩が登場すると怖いことが起き、どうやらガブリエルの深層心理にある不安感の象徴のようなのですが、それが何なのかも分からず仕舞いでした。結局感情消去処置に失敗して物語は終わりましたが、謎多き2時間半体験でした・・・
因みに原作はヘンリー・ジェームズの「The Beast in the Jungle(密林の獣)」という小説だそうで、これがどんな本なのか調べてみると、なんとそもそも100年以上前の作品でした。従ってAIなんてものは原作には登場しておらず、相当に翻案して制作されたもののようです。また、日本で公開されてはいないようですが、2023年に「The Beast in the Jungle」と題するフランス、ベルギー、オーストリアの共同制作の映画が創られるなど、原作そのものは相当ごっついお話であることは想像出来ました。
ただ本作の内容は、何ともはや全く分からない状態でした・・・
AIという近頃話題の技術と、昔から変わらない人間心理を混ぜ合わせて創ろうとしたんだろうとは思うのですが、どうにも私にはレベルが高過ぎました。
そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。
レア・セドゥの演技が圧巻❗️
難解で複雑なストーリーだが、未来の恋愛、感情の消去の怖さは怖いし色々考えさせられる。ストーリーは素晴らしかった。難解で複雑なストーリーもレア・セドゥが吹き飛ばす。それだけ、レア・セドゥの演技が圧巻で最高の演技を見せてくれた。喜怒哀楽、衣装も◎。レア・セドゥにほとんど見惚れてしまった作品。見事❗️
70点ぐらい。レア・セドゥ
遠い未来でもない社会の薄ら寒さを味わう
ヘンリー・ジェームズの『密林の獣』を大胆に翻案し、2044年のディストピア世界を起点としつつ、コスチュームプレイが美しい1910年、そして2014年の時代を行き来することで、ガブリエルとルイの謎めいた関係が描かれる。
ガブリエルが怯えている正体はなんなのかが謎のまま、ストーリーはすすむ。曖昧さ、ほのめかしに翻弄され、また、2044年の設定もなかなかに尖ったものなので、話についていけているかこちらも不安になる。個人的には2014年のストーリーの陳腐さがあまり好みではなくて、1910年の優美さ、曖昧さとのバランスがよくないように思った。
2044年という設定、それはそれほど遠い未来でもない。
「感情の揺れは幸福を妨げる」ことが定説とされる社会が、いずれ来るかもしれないし、それが定説となったとき、私たちはそれをちゃんと否定し拒むことができるだろうか。
そういう薄ら寒さとともに混乱したガブリエルの心情と状況に身を委ねて観たことで、彼女の恐怖や混乱を堪能できたように感じた。レア・セドゥは素晴らしかったと思う。
輪廻旅行
耳から謎の液体を注入されたら最後、レア・セドゥ様と一緒に夢見ごごちのまま、輪廻旅行へと旅立ちます。前半は、テンポも音楽もゆったりとしていて、眠ってくださいと言わんばかり。
レア・セドゥのファンでもきつい時間が続くが、いろんなレア・セドゥを見れる楽しみだけを頼りに何とか物語についていく。
パリが大洪水にあったなんて、初めて知った。1910年編の最後に眠気を覚ます美しいシーンがあり、ようやく目も冴えてくる。
ハリウッド編は、起伏があり、それなりの物語になっているが、これもレア・セドゥだからこそ。
結局のところ、レア・セドゥのファンであっても146分は長すぎる。両隣から気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。そんな作品でございます。
結論からといいつつ結論は…
人々が感情の消去を余儀なくされた近未来で、時を超えて転生を繰り返す女と男の話…らしい。
グリーンバックのスタジオで撮影に臨む女…かと思ったらパーティーで話す以前あったことのある男女…今度は2024年に面接だかカウンセリングを受ける女???
あらすじ紹介には書かれているけれど、ほんへでは何が軸で何の話しか示されないまま、場所も時間もあっちへこっちへ行ったり来たり。
これで転生なんてわかりますか?
良いところ浄化計画で見ている夢か劇中劇とかぐらいにしか感じられないんじゃ?
正直自分も直前にあらすじ見返してなかったから途中まで戸惑ったし。
あらすじ紹介を読んでいないとちんぷんかんぷんなこと必至。
いや、読んでいてもどうなんでしょ。
という感じだし、長い尺を使ってこのオチですか…(*_*)
そしてスクリーンにはQR…みてみたけれど、それだけかよっ!
感情を失った先に、人は何を見るのだろうか
【イントロダクション】
AI(人工知能)によって管理された2044年のパリを舞台に、ひとりの女性がトラウマと向き合う為、前世(1910年、2014年)へと向かい、愛する男性と出会う姿を描く。100年の時を越えて惹かれ合う男女を『007/スペクター』(2015)でボンド・ガールを務めたレア・セドゥと、『1917 命をかけた伝令』(2019)のジョージ・マッケイが演じる。
監督・脚本・音楽は、フランスの鬼才ベルトラン・ボネロ。その他脚本に、ギョーム・ブロー、ベンジャミン・チャービット。
原作は、ヘンリー・ジェイムズの短編小説『密林の獣』。
【ストーリー】
2044年、AIは人間社会を管理し、人間の仕事の殆どを引き継いでいた。それにより、失業率は67%を越えていた。AIは人間の感情を不要なものと判断しており、人間が重要な職務に就くには、“浄化”と呼ばれる感情消去プログラムを受けなければならない。
ガブリエル(レア・セドゥ)は、自らの能力の高さを誇りに思っており、AIに現在就いている単純作業ではなく、もっと重要な職務に就かせてほしいと懇願する。しかし、ガブリエルもまた“浄化”なくしては重要な職務に就く事は出来ない。
面接室を後にするガブリエルは、同じく面接にやって来たルイ(ジョージ・マッケイ)という青年と知り合う。
最初の浄化セッションで、ガブリエルは1910年の前世へと向かう。その前世では、ガブリエルは高名なピアニストであり、人形製造工場を経営する夫・ジョルジュと裕福な生活を送っていた。
ある夜、パーティーの席でガブリエルは6年前にナポリで出会ったルイと再会する。ガブリエルは6年前に、ルイに「何か恐ろしい事が起きる気がする」という生涯抱え続けてきた不安を打ち明けていた。ルイは彼女を連れて、霊媒師の元を訪れる。
次のセッションで、ガブリエルは2014年の前世へと向かう。彼女は女優志望のモデルであり、成功を夢見てロサンゼルスにやって来ていた。しかし、現実は簡単には行かず、彼女はハウスシッターの仕事をして生計を立てていた。
対するルイは、“インセル”として「自分を相手にしない女性達への憎悪」を募らせ、その様子を動画撮影してネットに投稿していた。ルイは、ガブリエルと同じく生涯抱え続けている恐怖心があった。
やがて、ガブリエルは現実の2044年でルイと再び出会う事を願う。
【感想】
大枠は壮大なスケールのSFスリラーだが、フランス映画とあって、ハリウッド映画とは違う美しさと不穏な空気による「雰囲気」を前面に押し出した印象を受ける作品。作中の殆どが静かな台詞のやり取りによる会話劇と、現在と過去を行き来する難解なストーリーテリングで構成されている為、中々に睡魔を誘う作風となっている。
しかし、そうした雰囲気や提示されているテーマ、ラストの非情さ含め、決して嫌いな作品ではないし、寧ろ好ましくすらある。
だが、流石にこの内容で約2時間半という上映時間は長過ぎる。せめて、2時間の枠に収めてくれていれば、もっと賞賛も出来たのだが。
スリラーとしても、そもそものAIに支配された2044年世界の描写力・説得力の乏しさからディストピア感が薄く、それがラストの衝撃を響きにくくさせてしまっている。
この辺りは、スリリングに展開するハリウッド映画的な作劇ならば盛り上がったのではないかと思い、残念である。
原作は短編小説であり、過去には原作に比較的忠実な映像化もされているそう。しかし、本作はキャッチコピーにもある通り、《ヘンリー・ジェイムズ「密林の獣」を自由に翻案》した様子で、最大の変更点は、SF要素を加えた点だろう。それ故に話が複雑化し、作品の本質を捉えにくくしていると思われる。但し、原作にしろ本作にしろ、“けもの”の正体が「人間の感情や欲望」という点は共通している様子だが。
ジョージ・マッケイの演技が素晴らしい。1910年では育ちの良い貴族風の立ち振る舞いが、2014年のインセル*の青年では破滅的な危険性、社会への、女性への憎悪を滲ませた立ち振る舞いに変わる演技の幅広さに唸らされる。「女性に愛されようと、努力はした」と語りながらも、絶妙な生理的嫌悪感を抱かせるのだ。
※インセルとは、ネットカルチャーの1つで、“Involuntary Celibate(不本意な禁欲主義者)”の略。女性との交際経験、性交渉経験の無い=非モテの男性が、女性やモテる男性への憎悪を強め、女性蔑視に陥っている人々のコミュニティ。本作のルイは、2014年にカリフォルニア州で実際に起きた、エリオット・ロジャーによる銃乱射事件を基にしていると思われる。
個人的には、ルイをはじめとしたインセルの非モテ思考は、同じく非モテで童貞の身としては涙を禁じ得ないし、共感出来る部分はあるのだが…。とはいえ、無関係の女性に対して悪感情を抱いて凶行に走るほど狂ってもおらず、世の非モテ男子は殆どがそうだろう。
【ガブリエルが恐れていた「そのこと」とは】
ガブリエルが絶えず恐れ続けていた事。それは、洪水や地震といった天災でもなく、理不尽な復讐心による暴力でもなく、感情を失った先で人を「愛せなくなること」であり、同時に「愛されないこと」だったのだろう。
彼女自身が語るように「ひとりでいたくない」、彼女は“孤独”をこそ生涯恐れ続けていたのだ。だから、彼女はひたすらに“愛”を求める。
その様子は、彼女がRoy Orbisonの『Evergreen』を耳にして涙する様子に現れている。
[愛がエバーグリーン(常緑樹)なら]
[世界に示そう、私達の愛は永遠なのだと]
しかし、AIにとっては、「愛」を含めたそうした人間の感情や欲望こそが、排除すべき“けもの”であり、その為に“浄化”と称して感情消去プログラムを行う。
面白いのは、「AI」という科学技術の果てとも言うべき存在が世界を支配していながら、感情消去プログラムに“前世”というスピリチュアルで非科学的な要素を持ち出す点だ。それを用いる以上は、AIも前世というものを肯定しているという事になる(単に、人間に理解させやすいように、仮装空間を前世と表現している可能性はあるが)。また、感情消去を“浄化”と称するのは、宗教的な要素も感じさせる。
ラスト、目の前に居るルイが“浄化”によって最早現実世界では人を愛せなくなっている=占い師の言う「彼は夢の中でしか交われない」事を知ったガブリエルの悲痛な叫びが切ない。ルイの台詞は、要は「夢で逢いましょう」という事。
ガブリエルは前世への旅を経て、ようやく自分の中にある愛を自覚し、愛すべき人を見つけ出せたのに、愛する彼は目の前に居ながら、2度と現実で心を交わす事は出来ないのだ。
【斬新?QRコード表示のエンドクレジット】
エンドクレジットをQRコード表示にするというアイデアは斬新というか、時代と言うべきだろうか。一説によると、海外ではエンドクレジットが始まると席を立つ観客も少なくない事から、それに対する配慮ではないか?と言われている。
しかし、このエンドクレジットは是非とも鑑賞しなければならないと思う。なぜなら、途中に2014年の前世で出会った占い師による“警告”のシーンが挟まれるからだ。
彼女は「ガブリエル?何処にいるの?聞いて。241番という小さな部屋に行ってはダメよ」と告げる。しかし、突如銃声が響き、やり取りはシャットアウトされる。
占い師が本編中に言っていた「(あなたの)後ろにいる人に聞かれたくない」とは、ガブリエルの感情を“浄化”しようとするAIプログラムの事を指していたのかもしれない。
また、この映像自体が「どのような世界になろうとも、人は感情を失くしてはいけない」という、我々観客へ向けたメッセージだったのだろう。
【総評】
短編小説である原作に大体なアレンジを加え、SFスリラーに仕立て上げた監督の思い切りの良さ、フランス映画らしいお洒落な雰囲気に包まれた独特な鑑賞体験は印象に残る。
しかし、アレンジによる物語の複雑化、内容に対して些か不必要にも感じられる長尺化には疑問を抱く。テンポ良くスタイリッシュに語るハリウッド映画的作りでは決して体験出来ない映画体験なのだろうが、やはりもう少しコンパクトに、テンポ良くはしてほしかった。
ところで、本作の鑑賞後にRADWIMPS『前前前世』が頭を過ったのは私だけではないはず。
「君の前前前世から僕は 君を探し始めたよ」
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