「未来の前世療法物語」けものがいる ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
未来の前世療法物語
前世療法とは、現在抱えている心理的な問題を、前世を想起させることで解決しようとする心理療法です。
催眠を使うこともあるようだ。
前世療法に於いては、想起された「前世」が現実に起こったことかどうかには関心がない。(そもそも検証不可能)
要は、今抱えている心理的問題が解決すれば良いのだ。
そう思ってこの映画をとらえ直すと構造が見えてくる。
ディスコシーン(1910年のパリでは舞踏会)、占い師、ナイフ、得体のしれない獣、鳩、は全体を通して「鍵」として通底する。
ようは、ガブリエルはルイが好きで苦しい→未来のシステムはその苦しみを前世療法で解除しようとして失敗する。
という話として矮小化できなくはない。
恋の苦しみを解除してもらわなくて結構、余計なお世話というわけだ。
2044年は英語で会話がなされるが、1910年のパリではフランス語。
ガブリエルとルイが隠された前世療法の目的に触れる時は英語での会話になる。
2014年のロサンゼルスでは英語が通常で、ところどころフランス語が挟まる。
過去世がフランス語、現在が英語という対応が最後になるにつれ混乱してくる。
過去世を通じて今を解決しようという試みのセッションの中では納得的な展開である。
過去世の中で結局、ガブリエルとルイは結ばれない。
どちらでもガブリエルは死ぬ。
パリの人形工場が何の説明もなく水没するが、あれは前世療法におけるガブリエルの心象風景なのだ。
ルイが溺れ、ガブリエルはかんぬきを開けられずに死ぬ。
ロサンゼルスではガブリエルはルイに抱かれたかと思うと彼は見知らぬおじさんに変貌し、最後にガブリエルはルイに銃でうち殺される。(いかにもフロイトっぽい)
心象風景のイメージ化であるから筋立てが混乱するのだ。(そうでなくてはならない。)
前世療法の「前世」をクリアにイメージさせるというのが2044年のテクノロジーなのだろう。
グリーンスクリーンはその暗示。
最後にイメージが、ぶれ、巻き戻しになるのはそういうことだ。
この映画のテーマは「苦しみを取り除く」ということの胡散臭さを突くことにあるように思える。
「DNAに刻まれた前世の不都合な記憶を浄化する。」
なんという陳腐な言い草であろうか。
コントロール出来ない「ケモノ」こそが人間の証ではないかと。
しかし、そのテクノロジーに抵抗できるのはたった0.6パーセントなのだ。
肝心の現在のルイは浄化されてしまう。
最後のガブリエルの叫びは0.6パーセントの絶望に聞こえた。
アンドロイドの黒人のお姉さんは優しくガブリエルを慰めるが、結局、「ケモノ」を処理することは出来ない。
当然だろう。
人形とは?
ダンスとは?
ナイフとは?
ケモノとは?
未来を語る占い師とは?
襲いかかる聖なる鳩?
潰れた血まみれの鳩(キリスト?)
心理療法のオンパレードだ。
追記
ルイはどこかで見た役者だと思ったらfemmeのプレイストンだ!
ジョーシ・マッケイ、大した役者だと思った。