劇場公開日 2025年4月25日

「畏怖による破壊」けものがいる 悠さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0畏怖による破壊

2025年5月18日
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鑑賞方法:映画館

SF映画だが、SF的な小道具や舞台を用意せずに、近未来を表現する作品が大好きだ。そういう映画は現実とファンタジーの境が溶け合い、真に心を打つ。そんな傑作がこの映画だ。
これは純愛映画だ。愛に対する我々の畏怖が世界を破壊した。普遍的だった。
この普遍的なテーマを描くのに、この映画はかなり珍しい手法をとった。冒頭のイタリアで会っていた2人は『去年マリエンバートで』のオマージュだし、その他『ラ・ジュテ』『アルファヴィル』といった優れたフレンチSFからの影響も強く感じた。反復的なカット編集が繰り返される人の業を思い起こさせた。前世という概念自体が仏教的な側面もある。
昔から007でレア・セドゥのことは大好きだったが、今作の彼女はいつにも増して完璧だった。素晴らしかった。完璧な彼女を観るためだけに映画館に足を運んでもいい。

悠