「手塚治虫の「シュマリ」を想起した」愛を耕すひと 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
手塚治虫の「シュマリ」を想起した
18世紀半ばのデンマーク、
ユトランド半島北部の広大な荒れ地。
この数十年、誰がどうやっても開拓できなかった不毛の地。
原題bastardはデンマーク語で「混血/雑種/庶子」
enがつくと複数。
主人公のルドヴィは、某貴族の虐げられた庶子で、
ドイツ軍で下級将校にはなったが退役して貧乏暮らし。
一念発起して
王領であるこの地を開拓すべく
財務省に申請するが、
土地が痩せていて自然環境が厳しいのはもちろんのこと、
もっと大きな障害になったのは、
人間たち。
面倒だから妨げようとする官僚貴族、
権力と私利私欲のために潰そうとする地主貴族、
他者から奪うしか能のない山賊たちが、
立ちはだかる。
純朴な司祭と
逃亡小作人夫婦
(と、かげで支える痔持ちのおぢさん)
しか味方はいない。
ーーその小作人とて、
とくに妻は、誰も信じちゃいない。
そして、
売られて山賊に買われた
タタール人の小さい娘。
ひょんなことから面倒を見ることになるが、
「黒い人間は不吉だ」
という流言飛語を浴びる。
その闘い、と愛、
をみっちり描いて、
濃密なドラマ。
見応えあり。
最後、切ない、
と思っていたら、
ちょっと救われ、
でもやっぱり切ない、
と思ったら、
もういっぺん救われた。
よかった。
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