「愛ありてこそ・・・荒地にて(18世紀デンマーク)」愛を耕すひと 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
愛ありてこそ・・・荒地にて(18世紀デンマーク)
1人の退役軍人(マッツ・ミケルセン)のヒース(荒れ地)開墾史
デンマークの至宝・マッツ・ミケルセンあってこその説得力でした。
重厚でドラマティックな歴史叙事詩。
何よりマッツ・ミケルセンの哀愁に満ちた暗い瞳が多くを語ります。
デンマークの18世紀、国土の3分2は石ころだらけの荒れ地(ヒース)でした。
1755年。
退役した大尉ルドヴィ・ケーレン(マッツ)は、荒れた国有地を
豊かな農地に開拓しようと入植する・・・それもたった1人と馬1匹で。
その土地には地主としてデ・クレールという名の悪徳領主が君臨していた。
ケーレンはデ・シンケルに目の敵にされ開拓を妨害され、
やっと雇った農夫(クレールから逃げた男)は、
見せしめに目の前で煮え湯をかけられて殺されます。
それでもケーレンはおしゃまな小娘でタタール人(スラブ系正教徒)の
アンマイ・ムスを教えて手伝わせたり、殺された農夫の妻アン・バーバラと
共にヒースにジャガイモを植えます。
翌年にはジャガイモを収穫します。
そのことが余計にデ・シンケルを刺激します。
チカラをつけるケーレンを畏れたのです。
妨害はエスカレートして、手伝いに来たドイツ人入植者を殺して、
家畜も殺します。
怒ったケーレンはデ・シンケルの手下を皆殺しに、してしまいます。
しかしケーレンはは領主デ・シンケルに捉えられてリンチを
受けることに。
そこで夫を殺されたアン・バーバラはリキュールに薬を混ぜて領主を
ナイフで惨殺してしまいます。
釈放されたケーレンですが、ドイツ人は逃げてもういません。
アン・バーバラも牢獄の中。
思いあまったケーレンは修道院に預けたアンマイ・ムスを迎えに行きます。
開墾も続いて、ジャガイモ畑は豊かに実っています。
しかし成人したアンマスの元へタタール人の放浪の民が、
小さな仕事をもらいに来ます。
アンマイは青年に恋をしてタタール人人と、旅立って行ってしまうのです。
ケーレンの瞳に滲む涙。
国王はケーレンに男爵位と毎月の賃金を渡すと言いケーレンの苦労は
報われるのです。
しかしケーレンの心を占めるのは喜びや達成感より、
アンマイもアン・バーバラも失った喪失感でした。
1755年に入植して8年。
1763年ケーレンは開拓した土地を捨てて、
何処かへともなく消えてしまいます。
幻影かもしれませんが、アン・バーバラを馬の背に乗せて、
2人で海の見える丘を走る一頭の馬。
これが願望ではなく、本当に実現していたら、
どんなにいいでしょう。
荒れ地を耕す原動力は、
愛する人と共にあればこそ。
愛ありてこそ、ですね。