「マッツ・ミケルセンの男っぷり」愛を耕すひと かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
マッツ・ミケルセンの男っぷり
18世紀デンマーク。
開拓不可能と言われた広大な荒れ地を、苦労の末に開拓しながら、足元を掬われる。
開拓させて成功したら取り上げて自分たちの手柄にしようと目論む政府高官がいたら、いったいどうすればよいのか。
王の権威は地方まで行き届いていないのは明らか、王の土地であるにも関わらず、地方有力者のしたい放題。
特に力あるデ・シンケルは、法などあって無きもの、数々の非道な行いにも関わらず、ひとつの報いも受けないどころか、ますます肥え太って大きくなる。
熱湯刑がひどすぎて思わず声が出てしまった。
デ・シンケルの、腹を刺しモノをちょん切ったアン・バーバラに拍手喝采。
不条理な世界をぐっと我慢して見られるのは、信念を持って黙々とすべきことをする、ケーレン元・大佐の男っぷりと、雄大で厳しく美しい風景、弱い者同士が肩寄せ合って小さい幸せを分かち合う温かさがあるから。
春が来て、蒔いた種芋から新芽が出たところは感動的。大事に見守る3人に、こちらも胸が温かくなった。
アンマイ・ムスは、赤毛のアンに似ている。人生が過酷すぎて、想像力を発揮して夢の世界で生きているよう、おしゃべりなのも似ている。愛に飢えていて、優しくしてくれるアン・バーバラとケーレンに全力で懐いているのが泣ける。そして、なんともかわいい。
彼女が成長して、自分の「一家」を見つけて去って行くのを見送るケーレン、可愛い娘の巣立ちは喜ばしいと思いつつ、自身の孤独には耐えかねたのだろう。
幸せってなんだろう、と彼は考えつくしたと思う。
地位も名誉も富もいらない。すべてを捨てても、力づくでアン・バーバラを取り戻したケーレン、彼女が住みたいと言っていた海の近くに馬を進めるふたりが、幸せを掴めたら良いなと思った。