「音楽が壊れた親子を再生していく」フローラとマックス 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
音楽が壊れた親子を再生していく
『シング・ストリート 未来へのうた」(16)以来7年目のジョン・カーニー監督作と聞けば、映画ファンとして見ないわけにはいかない。カーニーの最新作は過去作と同じく、音楽が壊れかけた人間関係を繋いでいく。その手法は今回もかなり直球だ。ダブリンに住むダメママのフローラが、自分のせいで問題児になってしまった息子、マックスが音楽マニアなのを知り、マックスが密かに憧れる女子の興味を引くために息子のPVを作る、L.A.に住むギター・コーチにオンラインでギターの弾き方を学ぶ、そこに別居中の夫も巻き込んでファミリー・ユニットを組む。
結果は問題ではない。何とかして自分を変えたいと真剣に願うフローラが、微かな望みを音楽に託し、物語が心地よく、ユーモラスに展開すれば気持ちは徐々に温まっていく。甘いと言われればそれまでなのだが、漂う優しさとユーモアは他ではなかなか体験できない、カーニー作品ならではのもの。7年のインターバルがもどかしく感じる。 フローラを演じるイブ・ヒューソンの愛すべきダメっぷりが心に焼きつく。聞けば彼女、U2のボノの娘だとか。稀代のロッカーはこんなにも魅力的な後継者を設けていたのだ。Apple TV +で配信がスタートしたばかり。早めにご視聴を。
コメントする