オッペンハイマーのレビュー・感想・評価
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目と耳に、そして脳内、想像に訴える
観終わりました、3時間が1時間にしか感じない。
超一流のドラマにして、
見応えたっぷりの大衆娯楽映画のバランス。
ノーラン監督はますますレベルアップしてます!
今年いちばん見るべき作品。
広島長崎を想像させるあたりが、恐ろしくて闇が深い。
キャスティングの豪華さでちゃんとサービスしてますから、安心して楽しめる作品です。
みなさん、テーマのことばかり言及されてる人がたくさんで、映画自体のすばらしさを語らない。
そりゃ専門用語や情報量は一度ではわからないことばかりですが、それよりも、主人公の一挙一動についていけば、しっかり理解できると。
君たちはどう生きるかは、眞人について行けばいい。
眞人の感知した世界を味わう。
オッペンハイマーは、オッペンハイマーが、どう生きたかを掴むこと。
ラストエンペラーやケンラッセルが描いたマーラーを思い出しました。
映像をしっかりみて、音を聴いて、感じること。
自滅へのカウントダウン
ノーラン作品はインターステラーが好きで、他はそれほど・・といった感じ。本作、アカデミー賞を受賞し、かねてよりヒートアップしていた「ノーランやべぇ」「やっぱりノーランだよね」という世間的ノーラン熱が最高潮に達しているので、IMAXで鑑賞してきました。
セリフの応酬ばかりなのでかなり体力要りますが、アメリカのノー天気さというか、人類の愚かさみたいなものを感じましたね。追いつけ追い越せの独善的な思惑で、人類史上最も忌むべき兵器を生み出してしまった。そして今、AIがものすごいスピードで我々の生活領域に入ってきている。AIについてはもちろん恩恵も大いにあるけど、個人的にはターミネーターやマトリックスのような暗い未来しか浮かばない。物凄い発明なんだけど、世界的な影響や人類の存続に関わるリスクを採ってまで、何だか人類が自分たちの首を自ら絞めているような、自滅への道を歩み続けているような、そんな恐怖をこの作品を観て改めて抱きました。
そして原爆の恐ろしさは描いて欲しかったですね。オッペンハイマーの視点で描かれてるとか、セリフなどで言及してるとか、そういったことは分かった上でなお、やはりその思いは消えなかった。有名なフィルムメーカーが製作し、色んな人が観に来るであろう話題作だからこそ、その訴求力を以て少しでも観る人に原爆の恐ろしさを知ってもらえたのではと思ってしまいました。
あと、ノーラン作品て作りに関心することはすごくあるんですが、心から感動したっていうのは少ないです。単に相性だと思うんですが、どこか醒めた目で語っているというか、理詰めの人なのかなと。例えば、この作品オリバー・ストーンに撮らせてたらどうなったか。オールスターキャスト、政府の陰謀の犠牲者、何となくJFKに通じるところがあった気がします。彼の場合はもっと政府批判を強めて、思いを主要な登場人物に熱く語らせると勝手に思ってるのですが、ノーランにはそれがない。それが良いとか悪いとかではなく、ノーランの作家性みたいなのが改めて自分の中で腹落ちした、そんな鑑賞体験でもありました。ロバート・ダウニー・Jrは流石の演技でした。ゲイリー・オールドマン、チャーチルがトルーマンて・・こちらもカメレオン俳優の面目躍如ですね!
日本人を守る為に原爆を使った?
第一次世界大戦が終わって、外国で物理の勉強をするオッペンハイマー、林檎に青酸カリを入れて、先生を殺そうと?あれ?辞めた。何で?
じゃ、この先、人殺しでもやるのかなと想像。
でもオッピーさん、とてもいい人でしたね。
この映画、登場人物がめっちゃ多くて、会議ばかりしてました。話しながら過去と現在、カラーとモノクロが行ったり来たり。もし自分がアメリカ人だったら、知ってる名前、もっとあったかもなぁ。
第二次世界大戦中に核開発のリーダーに任命されて、研究用の街を作る。えっ!そんな凄い事してたんだ。
1番驚いたのは、オッピーとアインシュタインに接点があった事。それ本当?
戦争中でチョコチョコ軍服は出てきたんだけど、具体的な戦闘の話は一切なくて、戦時中って感じゼロだった。それ、本土を攻められていないほぼ勝ってるアメリカだからなのかな。
原爆はとてもやばい兵器と分かっていながらアメリカが開発をやめなかった理由に納得。このままでは日本は降伏しないから、戦争を早く終わらせる為に凄い爆弾を中くらいの街に2回使い、被害を及ぼし、降伏を促す。確かに正しい選択だっかも。ただ予想より被害がでかかった。それでオッピーは、水爆の開発にますます反対する。その後、ソ連のスパイ容疑を受けるんだけどね。
最後の方で、やっと日本の名前が出るようになって、ワクワクが止まらなかったです。
ずっと会議だったけど結構楽しめました。続編として、はだしのゲンが観たくなっちゃった。
American Prometheus
原作を読んだ上で鑑賞。登場人物も用語も多い為、ある程度把握しないとしんどいですかね。アインシュタインぐらいは分かりますが。容姿も寄せてある。似てる!ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr)もかなり寄せてる。トルーマンに至っては…
原作にかなり忠実であり、あの感じで3時間ダレずに観れるのはさすが。ただ、トリニティ実験の成功で頂点を迎えて以降の流れはやや失速感があります。オッペンハイマー自身の伝記ですからこの流れで正解ではあるが、映像で見るような展開ではありません。文字で見た方が引き込まれました。
産み出したオッペンハイマーや、それを実際に使ってしまったトルーマン。個人的には憎悪の対象でしかありません。しかし、単純にこいつらだけが悪魔だとは言えない複雑な…いや、案外複雑でもない…背景があります。こいつらがやってなくても、どうせ誰かがやったんだよ。人間だもの。
日本人にはちょっと理解に苦しむってか・・・
クリストファー・ノーラン監督で去年全米で公開された「オッペンハイマー」がやっとの日本公開で、大変に楽しみにしていました。本作品の題材となるオッペンハイマーが、原爆の父と言うわれた人物の内容なので、日本公開には、色々と格闘もあったみたいですが、しかし、真実を公開すると言う部分では、やはり公開するべきだと私自身は思いました。
また、クリストファー・ノーラン監督作品って、私自身、いいか、悪いかなので、ちょっと恐る恐る映画館に足を運んだ気持ちもあるんですが・・・・
で、まずですが、本作品、IMAXでの鑑賞を推奨されていたので、IMAXで鑑賞しましたが・・・・IMAXで鑑賞する程のモノではありません。(あくまもでも、IMAXで見るべき効果のお話です)
通常スクリーンでいいかな・・・・
で、肝心な内容ですが、まず淡々と内容が進む感じで、お話に山もなければ、谷もないと言った感じ、オリヴァー・ストーン監督の「JFK」を思い出したかな・・・・あの作品も、私にとって淡々とした作品でした・・・
正直、本作品ですが、予習して見た方がいいかな・・・正直、当時のアメリカ国内や、第二次世界大戦やソ連などの絡みがあり、当時の情勢を知っている人には、分かりやすくても、あまり向こうに事情を知らない日本人には、お話の意図とする部分が分かりずらいかな・・・・
原爆を作り上げたオッペンハイマーと言う人の苦悩や格闘などは分かりますが・・・・・
しかし、本来は、ドイツ向けに作られたものだったんですね。あと、数ヶ月早く完成していたら、日本ではなく、ドイツにおちていたのかもしれない事は、初めて知ったな・・・
また、あの時代、ソビエトと攻撃の連携をとっていて、ソビエトが、「日本に原爆を落とせ」と煽ったのも初めて知った・・・
ま、戦争って、結局、誰も幸せしないんだろうね・・・・
原爆を発明した事で、地球人は、自ら自殺する素手を作ったんだろう・・・・
ま、やはり、本作品、長くて、淡々として、内容が分かり難いかな・・・・・
体感時間は短め、難易度は高め
歴史や時代背景にうとい自分には、登場人物の多さもあって難易度高めでした。
それでも実験成功後の後半はテンポも良く引き込まれました。
特にラストのあの人との会話の伏線回収部分は、過去の自身の経験とも重なって、じわーっとしみるものがありました。
もう一度観ます。
原爆実験映像が何か違う
CG使わなかったからなのか、子供の頃から何十回、何百回とみた原爆と違い違和感があった。 そこ以外はオッペンハイマー伝記映画として良かったかと。
オッペンハイマーの伝記映画なので音と映像は重視しなくて良いだろうとIMAXで観なかったのは後悔、ノーラン映画なので、これから観に行く方はIMAXのがオススメです。
あと日本人視点で、原爆投下を熱気を持って喜びを表すアメリカ国民は不快。
3時間あっという間でした
アカデミー作品賞受賞作品ということもあり話題になっていたので観に行きました。
映画初心者で、初めてクリストファーノーラン作品を見ました。
まずはストーリー感想ではなく、作品全体の感想として作品の壮大さに打たれました。
アメリカの広大な土地を利用した撮影、映画の宣伝にも使われてる光が強く放たれているシーン、そして振動も感じるほどの音響。TCXで鑑賞してよかったです。
原爆を扱う作品ということで日本の描き方に注目するようなネット記事もありますが、日本を大きく取り上げるシーンはないものの、原爆を作ったことに対する科学者の苦悩はちゃんと描かれていたように思います。
オッペンハイマーは仲間の科学者から「君は一番原爆について知っている」と言われるシーンがあり、一番知っているからこそ、それがどういった影響を世界に与えるかということを正面から考え、苦悩したようでした。それが最後のアインシュタインのシーンで強く感じられました。オッペンハイマーは、その凄さを一番理解しているからこそ、原爆が生まれた後の世界、この武器を各国が持つ状況の恐怖に対して、後悔もあったのだと思います。
日本人としてなのかどうかわからないですが、悲しみが込み上げてくるシーンもありました。原爆を作る国家プロジェクトに関わった科学者たちは、理論の研究とその成功を純粋に追い求めています。そこに日本を倒そうとか、憎いとかいう感情はないように描かれていて、実際にそれが事実だったと思います。
単純にこの作品を見ていると科学者視点が続くので、その実験の成功に歓喜する気持ちがわかる一方、この純粋さから生まれた武器が政治的に使われ、悲惨な歴史につながったと思うと、なぜか悲しくて泣けました。
純粋だからこそ研究している過程、作っている過程では、政治側、軍側の思惑とかなり切り離されていて、実験を成功させることが目的になり、どれだけ恐ろしいものを作っているかということに気づかないこと、それを利用する政治の怖さを感じました。
見てよかったのですが、世界史をちょっと復習してから行けばよかったです。
おおよその構図はわかっても、当時のアメリカを取り巻く主義の対立、同じ同盟国でも対立があること、そういった背景を理解してからもう一度見たいなと思いました。
素人ながらに色々考える作品でした。
そして巨匠と呼ばれる人の作品ってこんなに壮大なのかと感じることができました。
日本人にはだからなに?って言いたくなる
オッピーの視点で描きたかったのはわかるが…ノーラン甘すぎる。
日本人は核の怖さは子供の頃から学んでいるし身近に感じているからこそ実際に使ってはいけないと強く思えるところがある。
まず肝心のこの映画の映像的一番の見せ場とも言える原爆の実験映像…どうなるかどんな映像が映し出されるのか誰もが期待したであろう。この映像で原爆がどれほど恐ろしいものか伝えられる映像でもある。
その映像が…ショボ!燃えてるだけ…肩透かしの映像を見せられ心底IMAXで見にいった事を後悔。
こんな描き方では恐怖は感じない。
我々日本人は原爆の悲惨さを良く知っている。だから脳内で忖度して恐怖を補完してしまうが、こんな映像で何を伝えたいのだろうか。
そして最大の失敗は、
広島や長崎の投下後の現状を見せてその破壊力や悲惨さ非情さをはっきり映像にして見せるべきだった。
オッペンハイマーの視点で描き、本人が目を背けたとしても、同じように視聴者に目を背けるような映像を見せて、目を背けたい人は見なければ良い、真実を見たい人は悲惨さを受け止めれば良いのだ。
この映画はそうした映像での真実を見せないで、目を瞑り、偽善者ぶってるように見える。
ちゃんと真実を直視しろといいたい。
日本人だからだとは思うがこれがアカデミー賞かととても残念だった。
ただ一つ関心したのは、物語を語る上で、現在と過去、そして未来をオッペンハイマーの目を通して語ったこと。
過去の過ち(取り返しができない事)が現在に影響していて、自分の行いが未来の世界を破壊出来るくらいの脅威を与えてしまったと語ったことで、見ている観客に過去の出来事を今の自分事に置き換えて考えられるように描いたのは良かった。
最後にも書きますが、この映画で核爆弾の怖さは伝わらないと思った。ノーラン監督が今の若い人に関心を持ってもらいたいと語っていましたが、本来の伝えるという目的はこの映画では果たせていないと感じました。
娯楽としての映画ではなかった
オッペンハイマーの伝記的な映画なのだろうとは思っていましたが、娯楽性の少ない映画を延々3時間も観続けるのは正直しんどかったです。映画の中に出てくる共産主義云々の話も複雑で、アメリカ人にはピンとくる話かもしれませんが、私にはついていくのに精いっぱいでまるで勉強でもしているような感覚でした。途中退席も考えましたが、さすがに原爆投下の話の前に出るのもどうかと思い最後まで我慢して観ました。観賞後も満足感はなく、疲労感だけが残りました。
伝えるべき事と見応えのバランス
先ず、日本人だからなのかもですが、伝えるべき事象と映画としての見応え、演出のバランスが悪いと感じました。原爆の恐ろしさを伝える映画ではなく、オッペンハイマーという人間を描きたかったのだろうが、そこは一体の話だし、日本人だし割り切れない感情がありました。
非常にデリケートな問題を映画にしたのは評価したいし、あの作り方なので映画としての見応えが増したと思うのですが、、それだけにちょっと残念です。
個人の感想として!!
映画見て思ったこと!
原爆が作られなかったとしても、他の誰かが原爆規模の物を作ったであろうと思いました!
原爆が賛成などとは全く思っていません!!
しかし、原爆の規模を世界が認知した事によって世界が気づいたことがあると思います!
原爆規模の戦争を続ければ、地球は無くなってしまう!!!!
全部焼け野原になって何も残らなくなる!!
日本は大きな代償や、遺恨を残す事になったと思います!
肯定する気持ちさらさらありません原爆を!
しかし
この映画を通して、感じたことや、もしこの原爆がなかったとしたら、オッペンハイマーがこれを作らなかったとしたらと考えさせられました!
個人の感想なので、賛否あると思いますが
僕はこのように感じました!
人それぞれの感じ方でいいと思います!
0.1点の方もいるでしょうし
5.0点の人もいると思います!
どちらも正解なんじゃないでしょうか?
それを問う、どう感じるかの作品なのではないでしょうか?
オッペンハイマーの内面に同期
「疲れた〜」というのが正直な気持ちです。しかしそれは妙にザラザラした、何と表現したものか分からない感動を伴う疲れ。
難解な映画です。時間軸がコロコロ変わり、台詞も多く物理学の単語も含まれる。普段使わない脳みそをフル回転する3時間。事前に少しは勉強して臨んだが全然足りなかった。
では何に感動したのだろうか。
この映画に反核や反戦といった主張は見えない。広島の惨状もない。
ただ一人の稀有な科学者オッペンハイマーの内面に、カメラはぐいぐいと容赦なく入りこんでいく。観客とオッペンハイマーの内面を同期させるがごとく。そのための3時間だったのか。
人類がパンドラの箱を開けてしまう現場に立ち会ったような、或いはその一端を担ってしまったような感覚が残る。
【テッペン映画】
伝記映画として歴代のテッペンを獲った超話題作。“原爆の父”の苦悩と葛藤は、日本人こそ強く感じるカタルシス。ノーラン監督ならではの神演出も堪能しつつ、名実共に今年度のテッペンを獲った“テッペンハイマー”をとくとご覧あれ。
◆概要
第96回アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィ)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の計7部門受賞作品。
【原作】
カイ・バード&マーティン・J・シャーウィン「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」(2006年ピュリッツァー賞を受賞)
【監督】
「インターステラー」クリストファー・ノーラン
【出演】
「クワイエット・プレイス」キリアン・マーフィ
「メリー・ポピンズ リターンズ」エミリー・ブラント
「アイアンマン」ロバート・ダウニー・Jr.
「グッド・ウィル・ハンティング」マット・デイモン
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ケイシー・アフレック
「ボヘミアン・ラプソディー」ラミ・マレック
「ミッドサマー」フローレンス・ピュー
「オリエント急行殺人事件」ケネス・ブラナー
「レオン」ゲイリー・オールドマン
ジャック・クエイド(デニス・クエイドとメグ・ライアンの息子)
【撮影】
ホイテ・バン・ホイテマ(「インターステラー」以降のノーラン作品を手がけている)
【製作費】$100,000,000(約150億円)
【公開】2024年3月29日
【上映時間】180分
◆歴史背景
1930年代:オッペンハイマーが共産党と深い繋がりを持つ
1945年:アメリカが原爆実験成功
1947年:ストローズがオッペンハイマーをAEC顧問に任命
1949年:ロシアが原爆実験成功、アメリカは水爆開発へ
1954年:裁判①=オッペンハイマーがスパイ容疑で公職追放
1959年:裁判②=ストローズが商務長官に落選
1963年:オッペンハイマーが名誉回復
◆ストーリー
第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。
◆
◆以下ネタバレ
◆
◆苦悩
プロメテウスの神話が明示される冒頭。天界の火を人類に与えた事でゼウスの怒りを買い、永遠の拷問に処せられたプロメテウスのように、この世に核をもたらした男の、永遠の拷問にも思える苦悩が本作で描かれる事がここに記される。それが示す通り、本作の軸は一貫してオッペンハイマーの苦悩と葛藤。原爆に対する自責の念、スパイ容疑、なんなら不倫相手の自殺まで、彼が背負うものは膨らんでいく。彼のジレンマに引き込むために、監督は一人称で脚本したそうで、その苦悩一つ一つに、見ているこちらも感情移入して見入っていく。全体的に表情のアップも多く、サブリミナルで差し込まれる原子力のカットもその意味で効果的。一番印象的だったのは、原爆の成功をスピーチする場面。民衆の歓声が無音になり、女性の顔が焼けただれ、焼けこげた人形(のようなもの)を踏む。科学者としての正義を全うするも、その代償の巨大さを音と映像で破滅的に訴えており、オッペンハイマーの苦悩が痛いほど伝わってくる。彼の正義と栄光が苦悩に変わっていく本作の大きな転換点であり、1番の山場のシーンだった。
◆日本
本作には切っても切れない日本の要素。対ナチス、対ソビエトとして開発を始めた原爆は、始めは科学者の正義のように見えながら、日本に落とす事を言及し始めるあたりから、日本人の自分には見方が変わってくる。オッペンハイマーの原爆投下後の苦悩の描写にどこか覚えるカタルシスは、日本人なら誰もがなおさら強く感じるものだと思う。これがもし、史実として日本に投下されていなかったら、自分が日本人でなかったら、つまりある種の“他人事”であれば、おそらく感じ方が全く変わる。話題になった、バービーの頭にキノコ雲を合成した画像が記憶に新しい“バーベンハイマー”は、原爆をめぐる意識の乖離が露呈したまさにその例。本作を日本人として主観と客観で見るときに、その意識の乖離の根本を感じ取るような不思議な感覚だった。
◆ラスト
名誉を傷つけられただけの事で、アメリカ全体を巻き込んで大規模な復讐劇を繰り広げたストローズ(ストローズ目線のシーンはモノクロで差別化する、なんとも発想力の豊かな演出!)。そのきっかけとなったロバートとアインシュタインの会話は、ストローズの単なる被害妄想だと明かされるラスト(2人の会話越しに遠くから歩み寄るストローズが小さく、つまりいかにちっぽけだとする細かい映画表現も)。時間軸を操るノーラン作品で幾度も引用されたアインシュタインがついに登場し、その意味で本作はノーラン監督の集大成。そのアインシュタインが語る科学者の苦悩に、共感したロバートは“私は破壊したのです”と彼の苦悩をついに吐露する。挟み込まれる地球の画が、まさにその“破壊された”地球に住む我々が今後どう進むべきかを重々しく問いかけるよう。3時間の重量で紡ぎ続けた苦悩、その目を閉じるラストカットが、その後の世界への彼の祈りを表しているように思えた。
◆関連作品
○「TENET テネット」('20)
ノーラン監督の前作。本作製作のきっかけになった作品で、劇中にはオッペンハイマーに言及する場面も。プライムビデオ配信中。
〇「インターステラー」('14)
ノーラン監督の代表作。第87回アカデミー賞視覚効果賞受賞。高次元の映像美が素晴らしい。プライムビデオ配信中。
○「インセプション」('10)
ノーラン監督、キリアン・マーフィー出演作品。第83回アカデミー賞視覚効果賞含む4部門受賞。今見ても十分不思議な映像美。プライムビデオ配信中。
◆評価(2024年3月29日時点)
Filmarks:★×4.0
Yahoo!検索:★×3.4
映画.com:★×3.7
2024 29本目(劇場 8作目)
アメリカ公開時からしいて言うならノーランの次回作が決まった時から期待していた作品。
アメリカでも大ヒットしアカデミーも取りいざ公開。面白くないわけないでしょ、、、
個人的感想ですがほぼ全てのノーラン作品を観てきたが、一番つまらなかったです、、
豪華な俳優の素晴らしい演技、音楽、安定の良さもあるが、原爆の父の半生だけを見せられてもなぁと。
途中退席する人や、随所にため息が聞こえるなど久しぶりにみました笑笑
次作に期待しています
時間軸が前後するのが難しい
クリストファーノーラン監督の手腕はいつもながらすごいと思う。アカデミー賞を取ったのも納得。ただ、日本人としては、原爆成功後の熱狂シーンなどは心穏やかには見れない。ただ、現実にはこんな感じだったんだろうな、と思わざるを得ない。
映画の作りとしては、時間軸が前後するので、見ていて理解するのが難しく感じた。アインシュタインなんか、いつ出てきても同じ外観なので、いつの話なのかすっと頭に入らなかった。あと、量子力学の最初の授業で一人だけの生徒が、「基礎だけはやりました」と言ったのに対して、「そりゃ間違っている(ちゃんと教えれるのは俺ぐらい)」の反応は笑えた。
今迄で一番考えさせられた映画(良くも悪くも)
登場人物が多い事や共産主義活動(本人は関わっていない)や主人公に恨みを持つ者の政治的策略の赤狩り聴聞会等があるので事前学習必須です。また当監督特有の時間軸の違いがあるので途中で追いつかなくなります。また多数の皆さんが言う通り広島長崎の描写は一切出てきません。なぜなら主人公の主観で描かれているから。
実際に本人がこの映画を観たらどう感じるかどうしても聞いてみたい所です。トルーマン大統領の捨て台詞の言う意味も理解出来ます。自分達(ロスアラモスチーム)で作っておいて主人公が大統領に嘆く姿は母親に慰めて欲しい子供の姿そのものだから…結果は本人が一番分かっていた事なので。日本人の我々からすると偽善者に見えてしまう。
【追記】2024.4.2
タイトルにも記した予習ですが、雑誌スクリーン5月号のオッペンハイマー特集を読めば大体理解出来るようにはなると思いますが、いかんせん登場人物がおおいので内容をもっと理解したい方は吹替版をみるのもいいかも知れません。【【すみません。吹替版はありませんでした。申し訳ありません。】】わたくし自身ももう一度吹替版で観ようかと考えましたが…やめました。何故なら本映画が原爆の破壊力の凄さや主人公の懺悔を表現して無いからです。(少しはその描写はありますよ しかし我々から見れば全然足りないです)あくまで内容は赤狩りの方(ストローズの策略)に重点が傾いているからです。
わたくしの40代半ばの広島出身の友人は今でも映画「この世界の片隅に」を観る事は出来ないと言います。オッペンハイマーは日本に来日した際、広島長崎には行って無い。では本作を作成したノーランはどうなのでしょう⁇資料館迄入ったのでしょうか⁈知ってらっしゃる方が居たら教えて下さい。
ある意味この映画は西側(米国)から観た社会そのものかも知れません…日本人のわたしからするとこんな映画でノーランがアカデミー賞を獲りに行って欲しくなかったです…
【追記の追記】2024.5.15
レビュアーMさんへのコメントでも記載しましたが、私はこの映画を観てずっとずっと考えています。今も考え続けています。よく言われますが、「たら/れば」は無い。しかしもしこの映画の主人公であるオッペンハイマーが来日した際に広島長崎へ行って居ればその映像は出たのでしょうか?ノーランも視察したのでしょうか?そうなればこの映画はもっと違うものになっていたのではないかとも考えています。。
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