「原爆の父の苦悩とスパイ疑義…」オッペンハイマー KEIさんの映画レビュー(感想・評価)
原爆の父の苦悩とスパイ疑義…
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オッペンハイマーの人物像、史実を知らなかったので、ノーラン監督のいつもながらの時系列の交錯や、登場人物の多さ、早口の会話の応酬、緊張感を煽るような大音量と不気味な音に狼狽えながら、何となく理解はできた。アメリカ側の視点で描かれた映画なので当然日本人が見たら賛否はあるだろう。原爆を開発してから、その後苦悩に至るまでの原爆の悲惨さ、惨状の描写が圧倒的に少ないので、苦悩を描くという点と水爆反対に至るまで、その深さだったり、時間だったりが足りていないと思う。敢えて描かずとも、その惨状は知っているだろうと、それは前提、当然だと言われている気もするが。オッペンハイマーが原爆を作ったことで世界の破壊者という言い方ができるかも知れないが、作らずともソ連の科学者が作ったかもしれない。新たな水爆を作るより、地球滅亡には十分な威力のある原爆を管理する体制を作る彼の理想は形は違えど、冷戦を経て、抑止の為に核保有国が増えたが、結果的には地球滅亡を意味する核戦争には至っていない。しかし、結局戦争や紛争は無くなってない。映画でもあるように兵器を作るのは科学者でも、それを実行するのは政治家であり、いつ何時、その政治家が判断を下すのか分からない危険性が常にある。ノーラン監督が伝えたかったのは分断化が進むことで危険性が更に増す現代への警鐘なのかもしれない。
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