「凝ったつくり」オッペンハイマー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
凝ったつくり
日本人の私からしてみれば原爆を作ったオッペンハイマーの伝記など観たくもないのだが人間の心の闇を描き続けるノーラン監督だし、アカデミー賞でも話題になったので気にはなっていました。アマゾンで配信当初は字幕なしだったのが字幕がついたので観てみました。
オッペンハイマーはユダヤ人だし同じユダヤ人のアインシュタインとの交流シーンは見もの、原爆開発の動機がナチスに先を越される恐怖からというのも分かる気がします、日本は被爆国ではありますが日本軍も秘かに原爆開発を進めていたことは史実、終戦間際には朝鮮での核実験に成功していたそうですからひょっとしたら全く逆の加害者にもなっていたかもしれないので、米国を一方的に責める資格はないのかもと複雑な思いはあります。
以前、NHKで原爆開発のドキュメンタリーを観ていましたのでオッペンハイマーが戦後、水爆開発に反対し公職追放されたことなどは知っていました、本作も史実に基づいているのだろうと思いますが妻も不倫相手で更に結婚してからも不倫など私生活の裏面迄踏み込んでいるのは映画らしいですがB級映画のごとく必然性のないヌードやベッドシーンまでたっぷり入れているのにはどうなんでしょう、ノーラン監督ってそんな面があったのか意外でした。
映画は3つの時系列、2つの視点と凝ったつくり。意味不明な毒リンゴが出てくる奇妙な学生時代から原爆開発過程(~1945年)、スパイ容疑を受けた聴聞会(1954年)、アメリカ原子力委員会委員長ルイス・ストローズの公聴会(1959年)という3つの時系列が交錯するかたちで展開しますのでちょっとわかりづらいしオッペンハイマーの一人称で書かれた場面はカラーで、オッペンハイマーの“宿敵”ストローズの視点を描いた場面はモノクロで描かれていました。単なる伝記的再現ドラマを嫌ったノーラン監督らしい手法でしたが、3時間近い長尺が必要だったのかはちょっとわかりかねます・・。