「善でも悪でもない…人」オッペンハイマー ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
善でも悪でもない…人
クリックして本文を読む
緊張感あふれる映画だった。
安っぽく善人ぶったり悪人ぶったりする演出をせず真っ直ぐに人間オッペンハイマーを描いていたのが素晴らしい。
●殺人兵器が生み出されるのに高揚感を感じた。人々の歓喜に心が高鳴る。
その描写から逃げなかったノーランは素晴らしい。
●背景をよほど勉強していないと理解できない内容。なのに引き込まれる。まさに映画の妙だ。内容自体を観客に見せることをしなかった。この映画が見せたいのは人間の熱量だ。PVのようにそこに特化している。ノーランの英断と思う。
●PVを見ているようだった。早いカットバックは最早、セリフの内容を観客が追うことを想定していない。感情だけがほとばしる。
●成功の時のオッペンハイマーの演説シーンはものすごい演出だ。歓喜の涙が絶望に見える。すごい。
●常に音楽が鳴っている。その戦略もいい。
原爆投下は許されることではない。何を言われても言い訳にしか聞こえない。
原爆はレンジでチンされて殺されるようなもの。平和のためと言われても、誰の平和だと言いたい。
しかしこの映画の凄まじいところは、自分がアメリカ人でその当時に生きていたら、原爆誕生に歓喜していたと思わせるところにある。
ただ単にオッペンハイマーという一人の科学者を描いているのではない。人間が業を背負った存在であることを描いている。
コメントする
Mさんのコメント
2024年4月24日
「その当時に生きていたら、原爆誕生に歓喜していたと思わせる」確かにそんな映画でしたね。
「業を背負った存在」である人間が、今後、正しい判断ができる存在でもあることを示してほしい(示したい)ですよね。