「原爆開発の最も近くにいて真実を知り得た者」オッペンハイマー アボカドかゆうまさんの映画レビュー(感想・評価)
原爆開発の最も近くにいて真実を知り得た者
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作中のオッペンハイマーは一貫して、凡人のように流され、目をそらし、悩みながら生きているように見えた。軍人よりも政治家よりも、それを使うと何が起こるか最も知り得た者の、説明責任の重圧と名声欲、逃避の弱い心が映像と音響によってぐるぐると迫ってくる。大統領に「原爆を落とされた相手が恨むのは科学者ではなく落とした私だ。」退出時には「あんな泣き虫はもう呼ぶな」と聞こえよがしに言われたあとのオッペンハイマーは、どこか、”権力者に翻弄された被害者側”になれる自分に安堵した表情に見えた。
原爆被害の表現に関しては、乾いてさらさらとした印象を受けた。
あえての表現かも知れないが、日本人的にはもっとウェットな、いつまでも治らない膿んだ傷のようなイメージがあったので、少し軽い表現に感じてしまった。
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