「オッペンハイマーは現在の黙示録か」オッペンハイマー カンパク薬局さんの映画レビュー(感想・評価)
オッペンハイマーは現在の黙示録か
先週は出張で見そびれた3時間の大作「オッペンハイマー」を鑑賞しました。
※後「デューン砂の惑星part2(これも3時間)」を立て続けに見てちょっと疲れてしもた(笑)
オッペンハイマーは「インターステラー」「TENET テネット」などの超難解作品を送り出してきたクリスㇳファー・ノーラン監督が、原子爆弾の開発者、オッペンハイマーを題材にした映画です。
※以下ネタバレあり。
クリストファー・ノーラン監督の作品を観る時はそれなりに覚悟して来たのですが今回はいつもよりよっぽどわかり易くて
①オッペンハイマーが物理学者の仲間を集めて原子爆弾を開発するプロジェクトX的な話。
②戦後オッペンハイマーがいわれの無いソ連のスパイ嫌疑をかけられて社会的に葬られる話
③さらに時が経ちオッペンハイマーの嫌疑が晴れていくプロセスと映画の冒頭でオッペンハイマーとアインシュタインが交わした会話が開かされオッペンハイマーが①の成功から②受難③復活の意義が明らかになると言うストーリーです。
とは言え、①②③はランダムに展開されて解りにくくこの辺はクリストファー・ノーラン監督らしいのですが。
オッペンハイマーは①において開発した原子爆弾が広島、長崎で実際に使われるに至り激しく苛責の念に捕らわれ②のプロセスでもむしろ本人は嫌疑に積極的に戦うとせず「殉教者気取りか!」等と責められるのですが、元々オッペンハイマーが大量殺人兵器を開発した罪で裁かれるならまだしもスパイ疑惑なので、赤狩りの事を知っているアメリカ人にはともかく、私にはすごく違和感があり③で種明かしをしてもらっても何だかなぁ~と言うモヤモヤが残りました。
一方でそのモヤモヤ感と同様に何だかこのストーリーとよく似た話を知ってるぞと思ったところ、
気が付きました。
※以下は超個人の見解です。
これは新約聖書のイエス・キリストの生涯を表した黙示録に似ていると思ったのです。
めちゃめちゃ異教徒の解釈で恐縮ですが、すなわち①はイエスが仲間を集めて布教を行った流れと②イエスが捕まり殉教する③イエスが復活し①〜③が人を赦すためのプロセスだったと明らかにする一連の話しが映画のストーリーと似ているのです。
そう思えば冒頭のオッペンハイマーとアインシュタインの会話はイエスと預言者ヨハネの出合いになぞる事が出来るしユダやマグダラのマリアをイメージ出来る人物も登場します。
クリストファー・ノーラン監督が黙示録を意識したかどうかはわかりませんが①から③の流れは割とキリスト教徒である欧米人に体内化されたストーリーなのでは無いでしょうか。
そう思えばこの映画が今年のアカデミー賞を多数受賞した事も頷けます。
最後になりますが今回、「ゴジラ −1.0」がアカデミー賞を取ったのは喜ばしい事ですが、アカデミーはこの映画をオッペンハイマーに対する一つのアンサーとして選んだのでは無いかと言う気もします。外国映画賞がナチスのユダヤ人虐殺をテーマにした「関心領域」であったことを考え合わせると今年のアカデミーにおける一つの見識が働いたと言うのは考えすぎか。