劇場公開日 2024年3月29日

「罪深い人類の物語」オッペンハイマー そうたんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0罪深い人類の物語

2024年4月11日
iPhoneアプリから投稿

オッペンハイマーをプロメテウスに例えるというより、これはプロメテウスが火を与えた人類の物語の続きで、プロメテウスは今もなお責苦を追い続けているんだろうな。

と思ったわけで、テーマ性として、善悪とは、科学と政治とは、作ると使うとは、みたいな論点もあれば、イスラエル/パレスチナ問題に通じるユダヤ人の論点もあれば、原爆を日本に落とさなければ戦争は終わらなかったのか、また落とさないで終わりを迎えたとしたら世界の形はどうなっていたのかというif的な論点もある。

いろんな論点を問い続け、人類の罪に対して罰を受け続ければならない、この悲しい人類の物語について、じっくり考えるための作品。オッペンハイマーの功罪とか、彼が個人として負い続けなければならない永遠の責苦について考えさせられるのではなく、自分自身が負っている責苦をよく考えなければならない。

そして、彼が実際に責められたのは赤狩りを背景としたものなので、共産主義を改めどう捉えるか。また、現在の原子力政策をどう捉えるか、気候変動問題をどう捉えるか、いろいろ考えないといけない問題が沢山あるので、我々人類に思考停止に陥っている暇はそれほど残されてはいない。

そうたん