「時代と立場を超えて考えたい映画」オッペンハイマー ぽてちさんの映画レビュー(感想・評価)
時代と立場を超えて考えたい映画
本年度アカデミー賞で7部門を獲得したクリストファー・ノーラン監督の話題作だ。
アメリカ公開から8ヶ月も遅れて公開されたのには訳がある。単に原爆開発者を取り上げた映画だからというだけの理由ではないようだ。
映画はオッペンハイマーの視点(主観?)がカラーで、ストローズの視点(客観?)がモノクロで描かれる。ノーラン監督お得意の演出で時間軸は入り乱れているし特に説明もされないが、冷静に観ていればついていけるレベルだと思う。
原作であるノンフィクションは未読なのでなんとも言えないが、オッペンハイマーは“偉人”として描かれていない。どころか、欠点ばかりの人間のように思える。もちろん頭はとてつもなくいいのだけれど。
そんな彼が“神の力”を手にし、それが実際に戦争で使われてしまう。効果は絶大で、彼は一躍英雄に祭り上げられる。そして、失脚──。千々に乱れる彼の心の様を、キリアン・マーフィーが見事に演じている。
原爆投下のシーンがないことに批判の声が上がっているようだが、ぼくは不要だと思う。監督の視線はそこにないし、なによりオッペンハイマー自身が蚊帳の外に置かれていたことは間違いないのだから。
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