劇場公開日 2024年3月29日

「"三位一体"スゴかった…自分の発明にどこまで責任持てるか?結果についてのサイエンス・リアリティ」オッペンハイマー とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0"三位一体"スゴかった…自分の発明にどこまで責任持てるか?結果についてのサイエンス・リアリティ

2024年3月29日
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鑑賞方法:映画館

これは"結果"についての映画だ。パンドラの箱を開けてしまった"米国のプロメテウス"の苦悩と葛藤、そして…心理ホラーに夫婦愛、自らの創造物の望まざる結果とどこまで向き合うか、自分のそれら言動に対する誠実さをそれでも最後まで失わずにいられるのか?オッペンハイマーとノーランに共通するまるで新たな世界を生み出すような革新への妥協なき挑戦。
従来のノーラン映画より顔アップによる会話シーンの多さも顕著な気がするが、退屈するようなことはなく、むしろグイグイと引き込まれていく自分がいた。専門的な会話や、登場人物の数が多い分そこまでまだ顔と名前の一致しておらず馴染みのない人名飛び交う赤狩りなど当時の様子と少し難しさもあるが、上手く時間軸を解体して再構築する(流石は"時間"を扱ってきたノーランここでも!)ことで非常に力強いクローズアップによるファーストシーンとラストシーンはじめ、作中のセリフ一つ取っても効果的な差異を伴う反復が、作中至るところに仕掛けられていて演出意図も伝わるし、また考えさせられる。これはハッとさせられるし、やられた。
そう、慰めみたいな晩年のセレモニー・褒賞は、自分のためではなく、皆のため。自分が許されたのではなく、あくまで周囲・世間が納得するための免罪符みたいなものに過ぎないのだと。ノーランもそう思っているのかな(アカデミー賞獲ってあんなにちゃんと嬉しそうにしていたけど)?…などと要らぬ心配。この作品のコアアイデアとしてやっぱり、"自分の発明(作品)にどこまで責任持てる(持たないといけない)か?"みたいな部分はあると思うけど、映画も一度公開してしまえば、自分の手を離れて観客のものになるから。

ノーラン✕マーフィ=盟友コンビ新境地的要素も見出だせるけど間違いなく一つの集大成!! 映画としてのスペクタクルや求める意義、考えさせられるメッセージ性など詰まっていて本当にダメなところなど"ほぼゼロ"?画・音・演技あるいは撮影も編集も音楽も素晴らしく、これぞ"三位一体(トリニティ)"映画が総合芸術である所以にふさわしいサイエンス・ノンフィクション(リアリティ)。
"原爆の父" 彼が永遠に世界を変えてしまった…初期からノーラン作品常連として欠かせない存在であったキリアン・マーフィ待望の主演。そして、それに応えるような圧倒的熱演(オランダ語!大減量!!)で、初ノミネートに受賞も大納得。『ピーキー・ブラインダーズ』に負けず劣らずのイケメンっぷり(あの服装似合いすぎ!)だし、彼のこと好きな人間としては嬉しかった。"世界の警察"アメリカが舞台だからといってもちろん正義の話などではなく(原作未読だが原作も絶対そうだろう)て、もっと結果に伴う人間の内部を掘り下げた複雑な内容だが、監督主演ともに非米国人なわけだし、やはり外部の視点が持ち込まれたことで、そうした部分はより強固になった部分は意図した部分以外でもあると思う。にしても、もしかすると有名なエピソードだったりするのかもしれないけど、知らない身としては毒を盛るようないきなり主人公の闇描写が出てきて少し驚いた。しかもリンゴという"禁断の果実"なのが示唆的・象徴的。その瞬間、彼は"落ちた"のだ。神の仕業か悪魔の所業か?
功罪は表裏一体、ならば汚い手より真っ当に生きて責を負うべき!途中までオッペンハイマーとストローズは表裏の似た("ほぼ"同じ)立場として描かれるわけだが、それが徐々に乖離を見せ、最期決定的になる。何が2人を隔てたのか?それはやはり"誠実さ"。"権力とは(表に出ることなく)暗躍するものである"という考えを体現して、裏で糸を操ったストローズは敗北する…。そんなもう一人のメインキャラクターとして、"オッピー"と対立する執念深い役を演じたロバート・ダウニー・Jrも圧巻(『アイアンマン』のプロモーションで来日したときにヒドい目に遭ったかららしいけど本当に日本嫌いならこの役演じているのを見るのは日本人として複雑)!目力とその態度!!
フローレンス・ピューはやっぱりどの作品で見ても食う勢いで凄い存在感を放っている!ベニー・サフディは監督としてももちろん良いけど、役者としてもなんだか魅力あって好き(『テネット』にも出ているパティンソン主演『グッド・タイム』等)。ジョシュ・ハートネット最近ガイ・リッチー作品やシャマラン次回作控えているなどメインに復活してきて、『ラッキーナンバー7』の頃から見ていた身として嬉しい。はい、エミリー・ブラントはみんな好き。他にも想像を更に超えてくる超豪華キャスト。ざっと数えてもアカデミー主演男優賞受賞者が3名、それもそこまで大きくない役柄で。皆役の大きさ大小に関係なく出たかったのだろうな。実際それだけの価値のある素晴らしい作品だ。

ほぼゼロ
裁判じゃない
砂漠は知っている「地球を壊すな」
シーツを取り込め
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とぽとぽ