「ノーラン版「シンドラーのリスト」か?核は世界を崩壊する」オッペンハイマー ねじまき鳥さんの映画レビュー(感想・評価)
ノーラン版「シンドラーのリスト」か?核は世界を崩壊する
原爆を作った科学者の栄光と挫折を描いた作品です。
前半は栄光パート。マンハッタン計画の責任者に抜擢され、核実験成功、原爆投下で「戦争を終わらした」「アメリカ兵を救った」として一躍時の人に。
後半は挫折パート。ある筋の企てによりヒーローが一転、赤狩りの対象に。数奇な運命に翻弄される苦悩の表情は必見です。
とにかく最初は登場人物が多く絡んできて、かつ物理の専門用語も出てくるので、なかなか入り込めません。
やはり、日本人だからか、「広島」「長崎」という言葉が出てくる後半からやっと入り込めた感じでした。
アメリカ側の原爆投下の論理が明かされ、複雑な感情になったのは私だけではないのかと思います。
主人公のアップが印象的ですが、なるべく感情は抑えて、より科学者らしく理知的に演じてました。
また、戦争中にも関わらずその描写や風景が一切出てこない演出もすごいなと感じました。
ノーラン監督が好むのは「科学」「時間」。インターステラーから、サイエンスに傾倒している作品が多いですね。
スピルバーグが「シンドラーのリスト」でアカデミー賞を狙って取ったみたいに、まさしくこの作品はノーラン版「シンドラーリスト」と言ったところでしょうか。核が世界を崩壊させる、という意味において。監督として「幅」があることを内外に見せつけ、悲願のオスカー獲得です。
正直、どんな感想が相応しいのかなかなか思いつかない作品でしたが、過去、そして、今行われている戦争、未来にも起こりうるだろう戦争も想像しながら、今一度このテーマについて考えるきっかけにはなると思います。私ももう一度観て理解を深めたいと思います。
これから観る人へ
内容は難しいため、当時の世界情勢や科学の動向などを予習することをオススメします。
トミーさんのご指摘通り、戦争を主導するのはテクノクラート層であることが淡々と描かれてますよね。それがかえって恐怖を感じました。
そこにスポットライトを当てたのが、この作品の要なんでしょうね。
先日、「最新鋭」の戦闘機の紹介を見ました。
その戦闘機は、母船として、かつての空母が担ったような役割をもつもので、軍用ドローンの基地かつ指令船となるような存在でした。
戦争のための機械は、どんどん進化を重ねています。