劇場公開日 2024年3月29日

「深呼吸してこの評価を下す」オッペンハイマー 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0深呼吸してこの評価を下す

2024年3月29日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

日本人なら、この映画を見て原爆を作り、それを投下した米国人の考えを知っておくべきだ。そして、今も戦火が絶えない地球上の平和のためにも、80年という時間を超えて理解し合い、戦争と平和の意味を考えるためにも重要、見るべき作品だ――。
そういう言い方で評価しておいたほうが無難かな、と思った。でも止めておく。

米国の近現代史の知識がないと非常に分かりにくい。
先に「落下の解剖学」のレビューでも、書いたが僕は法廷劇が苦手だ。
本作も、法廷ではないが、赤狩りに巻き込まれたオッペンハイマーを追及する場面が全体の中で半分くらいはあり、まさに法廷劇の体である。

東京大空襲で10万人が、広島・長崎で20万を超える人びとが死んだ――と登場人物に語らせているし、原爆の熱戦で人が焼かれる幻影を主人公が原爆成功の称賛の熱狂の中で見るといった場面がある。
これからすれば、本作が反核、反戦をテーマにしているのは明らかである。その点は評価する。
しかし、ノーラン監督の「テネット」「ダンケルク」を映画館で見ているが、あれらと同様とにかく持って回った描写が多く、ひとりよがりなのである。
本作も、説明が圧倒的に不足している。それでも引き付けるだけの「物語」があればよいが、それは極めて希薄だと思う。
そして、3時間という尺は長い。頻尿にはつらいよ。

アインシュタインを演じているのが、なんとトム・コンティであった。「戦場のメリークリスマス」以外で彼を見るのはおそらく初めて。まだ生きていたのか、と思った。
鑑賞後、パンフレット(1200円)を購入したが、キャスト紹介の中でコンティの出演作に戦メリが入っておらず、これまたびっくり。宣伝マンは何を考えてるの?
日本の映画ファンには戦メリは欠かせないだろう。リアルタイムで見ていたら50歳は過ぎてるから、若い人は知らないか。

見た後、分かりづらく、もやもやした気分だったが、YouTube「映画の秘密マーク2」というサイトが全米公開後、今から7カ月も前に解説しており、それを見てこの映画についての評価が定まった。関心あれば、チェックしてほしい。事前に情報を入れると興ざめするけどね。
下町のシネコン、封切り初日のファーストショー、午前9時前に入った。客席には半分近くが入り、関心の高さは伺えた。

町谷東光
大吉さんのコメント
2024年3月30日

トム・コンティ懐かしかったですね。

大吉